>>31さん、まだいる?
俺は全部、原書で読んだけど、『エデンの東』は、
作者の志の高さと野心と、この作品を書くための準備、勉強、努力が
推し量れるが、小説としての完成度は、
他の2作におよばない。

『エデンの東』は、「作者の言いたいこと」が、物語からやや遊離しており、
作中人物のセリフのみからそれが表現され、物語の進展にあまり寄与していない。
発表後、60年ちかく経つのに、日本のメジャーな出版社から、
文庫本や「世界(アメリカ)文学全集」の収録作品としていまだ発売されていないのは、
おそらくはその辺の事情から。

あれなら、あえて「小説」という形式でなくても、D.H.ロレンスの『アポカリプス論』や、
K,G.チェスタートンの『正等とはなにか』のように、論文やエッセイのかたちで
表現したほうがよかったようにも思う。

だけど、もしあなたが映画版の『エデンの東』を観たならば、
それとはちがった発見やキャラの描かれ方が読み取れるはずなので、
すこし長いけど、翻訳版でいいから読んでおくべき。

スタインベック自身は、『エデンの東』が自身のライフワークであると
とらえているみたいだし……。