0148吾輩は名無しである
2012/05/11(金) 21:24:39.60ぼくらの仕事は 視ている
ただ じっと 視ていることでしょう?
晩年の金子光晴がぽつりと言った
まだ若かったわたしの胸に それはしっくり落ちなかった
視ている ただ視ているだけ?
なにひとつ動かないで? ひそかに呟いた
今頃になって沁みてくる その深い意味が
視ている人は必要だ ただじっと視ている人
数はすくなくとも そんな瞳(め)が
あちらこちらでキラッと光っていなかったらこの世は漆黒の闇
でも なんて難しいのだろう 自分の眼で
ただじっと視ているということでさえ
茨木のり子『女がひとり頬杖をついて』