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もとより、詩は読者がいない、いないと詩人は嘆くが、むしろ読者がいたほうが困るのではないか。
自分の詩が、読者のきびしい視線にさらされ、正確に読みとられてしまうと(理想の実現)、それほどのものは書いていないことや、凡庸な人間であることがばれてしまうのだ。
だから奇妙な言い方になるが、読者がいないことで詩人の作品は救われているのである。また、彼らも救われてきたのである。

いずれにせよ現世では詩人の活きる道などない、と思ったほうがいいのであるが、「理想の世界」は、ある人々にはいまも光り輝くものであるらしい。
詩人としての余力を残しながら、中年になって、詩が書けなくなり小説に転じる人たちが多いのだ。
いったい彼らの詩は何だったのだろう。つまり彼らの小説とは何なのだろう、ということだ。
(荒川洋治「夢を叶えた詩人たち」)