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第一行をどう書くか ユリイカ詩と批評

「私の部屋には机がない」 石原吉郎
私にとって〈第一行〉とは、つねに〈訪れるもの〉である。
訪れは、私の側の用意のあるなしにかかわらない。
それはしばしば、完結した断定としてやってくる。

「霊感(ひらめき)について」 三好豊一郎
霊感―大仰すぎるならヒラメキでいい―は無為にいて、ふらっと宿るものではない。
霊感は、霊感を強く求める意志によってのみとらえられる。

「冒頭の一行にもどる瞬間」 田村隆一
最初の一行は神が書き、二行目からは詩人が書く―
こういう意味のことを、フランスの詩人が云っていたのを、
僕は少年の時、どこかで読んだ記憶がある。
 (中略) むしろ、ぼくの場合は、ひたすら、
最初の一行を発見するために、詩を書くと云っても、けっして過言ではない。
一遍の詩を読みおわって、冒頭の一行にもどる瞬間、
その詩行が屹立し、全体の意味が鮮烈に問いなおされるような場合、
ぼくはためらうことなく、それを「詩的経験」と呼ぶ。