「流血」   秋谷豊

今日の太陽は 昼の中から
ぼくの傷口を照らす
午後の寝台に 汗は乾き
石を抱いてぼくは睡る
漆黒の日射に
腕を溶かしてしまつた
トルソのように睡る

今は昼 積乱雲は間近に燃え
ぼくは悪夢の記憶に
血を流させることもできるのだ
銃をかかえて黄いろい菜の花の中から
見もしらぬ兵士が
ゆつくりと歩いてくる
かれの眼の激烈な照準のなかに
はりつけられた一羽の鳥

白い空にはぢける思想の花火が
重たい金属の音を立てて
とつぜん ぼくの腕を払う
倒れている 頭の方
ふるえる憂愁の花片や
焦げる文明の化石を
むなしく破裂させながら
鳥は墜ちる!

(続く)