埴谷は生前自身の本の文庫化を断固として拒否していた。
軽薄短小化の象徴ともいえる文庫本(商品)に自作が成り下がることに我慢ならなかった。
埴谷の死後、その相続人(姉の子息?)がすぐ文庫化を承諾して、その印税を手に入れた。
わたしは埴谷の意向を尊重し、文庫には見向きもせず、箱入り3巻本の『死霊』を愛読している。