The Complete Shorter Fiction of Virginia Woolf
http://www.amazon.co.jp/Complete-Shorter-Fiction-Virginia-Woolf/dp/0156212501/ref=sr_1_1?ie=UTF8&;amp;qid=1357776734&sr=8-1

こういう本を手に取って拾い読みしている。Virginia Woolf の書いた46本の短編を
すべて集めたものだ。注釈や付録もたくさんついていて、それぞれの短編が書かれた背景や、その短編に関連した彼女の日記の一節などが紹介されている。長編よりも短編の方が
楽に読めそうだし、拾い読みもできるし、長編小説を理解するためのヒントが短編小説の
中に隠れているかもしれないと思って、何となく拾い読みしてみた。

"The Lady in the Looking-Glass: A Reflection" という短編小説の題名が気になった。
というのも、鏡というものは人の心の中を映し出すものだ、というような観点から
書かれた物語かもしれない、と思ったからだ。とはいえ、短編には長編ほどの面白さは
期待しないで、軽い気持ちで読んでいた。

でも、この短編にはびっくりした。日本語訳を文庫本にすると、おそらくは10ページ
くらいの、とても短いものだ。それなのに、たくさんのことが詰め込んである。Woolf
特有の、例の静謐かつ透明な、きわめて繊細な文体。そして、最後の数行で、一種の
どんでん返しがある。なお、僕がこれから書くことを先に読んでしまうと、自分でこの
物語を読むときに白けてしまう、と思う人は、読まないでほしい。

この短編は、ネット上でも無料で読める。
http://gutenberg.net.au/ebooks02/0200781.txt

冒頭。
People should not leave looking-glasses hanging in their rooms any more
than they should leave open cheque books or letters confessing some
hideous crime.

この冒頭を読んで、笑ってしまった。鏡をあまり使わない男性でもこういうことは
よく感じるだろうが、鏡をひっきりなしに使う女性は、特にこの気持がわかるだろう。
いや、鏡などはただの比喩であって、本当は鏡そのもののことを言っているのではない。
人間の本性、ひいては自分自身の本性から目を背けたがる人間のさがを見事に描いている。
(その2に続く)