吉田氏の多彩な活動の中で翻訳は重要な地位を占めたり。
小説の翻訳では、イヴリン・ウォーの『ブライヅヘッドふたたび』は名訳の誉れ高し。
余も吉田氏の翻訳、紹介によりてウォーを知り、『ブライヅヘッド』を読みき。
本は、筑摩の世界文学大系の「ウォー/グリーン集」なり。今は、岩波文庫が
得やすかるらんが、題名が『回想のブライヅヘッド』と痛く散文的にて甚だ興ざめなり。
ウォーは他に、『ピンフォールド氏の試練』(集英社)『黒いいたずら』(白水社)を訳したまひぬ。
『黒いいたずら』はグロテスクな小説なり。
以上のやうなことは、吉田ファンには周知のことどもにて改めて記すまでもなきやうなれど、
吉田文學ファンになられて日も浅くご存じなき方もおはすらんと思ひ、老婆心で筆をとりつ。