早速購入した「囚われの女」の冒頭の文章を引用しよう。

「朝、顔はいまだ壁のほうへ向けたまま、窓にかかる大きなカーテンの上方に射す
日の光の筋がどんな色合いであるかを見届ける前から、私にはすでに空模様がわかっていた。」
吉川一義訳

「朝になると、顔をまだ壁に向けたままで、窓の厚いカーテンの上部にさしこむそとの光線の
明暗を見とどけない先から、もう私はその日の天候がどんなであるかを知っていた。」
井上究一郎訳