ひねくれるつもりはないが、わたしはどうして現在のこの事態まで来てしまったのか、正直、よくわからないのだ。
若年時を思い出してみるかぎり、わたしがこんな秘密の行路をえらんだのは、それが祖国のゴールにいちばんまっすぐ、いちばん間近に迫るように思えたからだ。
あのころ敵といえば、はっきりとそれと指摘でき、新聞で読むことのできる相手だった。
いまのわたしにわかっているのは、自分が世の中すべてを陰謀という見地から解釈することを覚えたということだけだ。
それはわたしがきょうまで生きるに用いた剣であり、いま周囲を見まわすとき、いずれわたしの命を奪う剣でもあることがわかるのだ。
わたしは彼らがこわい。だが、わたしもまた彼らのひとりなのだ。
もしも彼らがわたしを背後から刺したなら、すくなくともそれは〈自分の同輩による裁き〉であると思う。