>>497
 たとえばハイデガーを読んでいれば、彼が人間の精神の歴史にたいし
疑問符を投げ、どこでどういう欠損を歪み生じたのか、知の歴史を一個一個
掘り崩していく手法がある。彼が哲学史家でもあり遡行するのは有の意味
が消えていく中で客観性信仰が台頭し、同時に主体性の根本が見失われていっ
た。有の意味は主体に収斂されていった過程を示したかったからだ。
 彼の『有と時』ってそういう書物だよあれは。
 そこで人間の精神・知の歴史全体を問い直す視線が生まれてくる。

 吉本の心的現象論を紐解けば、人間の内部に人間以外の植物や魚類、
鳥類、爬虫類の精神が宿っていることが解剖学を引用し謂われている。
同時にここには人間を理性や合理性に同値する思想への反命題がある。

 人類史を相対化する視線が上の両者にはある。