『BLEACH』千年血戦篇と天皇制、名付
けることについて
kqck
2022年10月18日
BLEACH千年血戦篇で描かれる霊王護神大戦とは、ようは天皇(制)を維持
するか撤廃するか、というイデオロギー闘争である。天皇(制)=霊王(シ
ステム)

ここで主人公の黒崎一護や護廷十三隊の死神たちは体制の保守(右派)陣営
で、ユーハバッハ(滅却師)側は制度(および「世界」)自体を無に帰すこ
とを目論むラディカルな改革(左派)陣営である。 ただし、単純に右派が左
派に勝利してハッピーエンド!!な話ではないのが肝心だ。

『BLEACH』世界において「死神」とはようするに秩序維持が仕事の"公務
員"であり、『BLEACH』は(最終話で主人公に子供が出来て第一話を再演す
ることからも明らかな通り)基本的に保守主義(血統主義・家父長制)を礼
賛している作品である。さすが少年ジャンプの元看板漫画といったところ
か。しかし、こうして霊王(=天皇)を空虚で残酷なシステムの犠牲者とし
て描くあたり、右派一辺倒ではないというか、独特のねじれがあるのも間違
いない。

また、ネタバレになるが、最終章の後半で、「霊王」の前に立った黒崎一護
は、”血”の運命に導かれてそれを「殺して」しまう。

右派陣営の「息子」が血に導かれて、右派の護るべき「神」を殺めてしまう
──この筋書きには、どうしても最近この国で起きた事件を重ねずにはいら
れない。

最終的に、一護が殺した霊王の代わりに、「大戦」で戦った敵のボス=ユー
ハバッハ自身が、あらたに「護るべき神」という生贄の座に設られて、ほと
んどの死神はそれを知らずに平和を享受している、という結末もものすごく
皮肉である。