良心の呵責とその赦しを最も感じたセリフ
ドストエフスキーの内的な心理での赦しをここまで明確になっているパラフレーズはないのではないだろうか
決して行為の赦しではなくて、心情の赦しになる
そもそも「赦し」とは心理的な感情なんだろうとも思える

「じゃ、だれだ、だれなんだ?」もはやほとんど凶暴にイワンが叫んだ。それまでの自制がすべて、一挙に消え去った。
「僕が知っているのは一つだけです」なおもほとんどささやくように、アリョーシャは言った。「お父さんを殺したのは『あなたじゃ』ありません」
「〈あなたじゃない〉! あなたじゃないとは、どういうことだ?」イワンは愕然とした。
「あなたがお父さんを殺したんじゃない、あなたじゃありません!」アリョーシャが、しっかりした口調でくりかえした。
三十秒ほど沈黙がつづいた。
「俺じゃないことくらい、自分でも知っているさ。うわごとでも言ってるのか?」青ざめた、ゆがんだ笑いを浮かべて、イワンが言い放った。