『人殺し』 だの『 人でなし』 といった 言葉 が アリョーシャ の 胸 に 痛く ひびい た。
「お前 は まだ それ を 知っ て い ない ん だ。 あの 女 は ある 書類 を にぎっ て いる ん だ よ、
兄貴 が 自分 で 書い た もの で、 親父 を 殺し た のは 兄貴 だ という こと を 数学 的 に はっきり と 証拠立て て いる 書類 を」
「そんな もの が ある はず は ない!」 と アリョーシャ は 叫ん だ。
「どうして ある はず が ない ん だ?   僕 は この 目 で 読ん だ ん だ ぜ」
「そんな 書き もの なんて ある はず は ない さ!」 と アリョーシャ は のぼせ た よう に なっ て くり返し た。
「 ある はず は ない よ、 だって 犯人 は 兄さん じゃ ない ん だ もの。 おとうさん を 殺し た のは 兄さん じゃ ない もの、
兄さん じゃ ない もの!」
  イワン は 急 に 足 を とめ て、 「じゃ、 お前 の 考え じゃ、 犯人 は だれ な ん だ?」 と、 見 た ところ 妙 に ひ やや かな 調子
で 聞い た が、 その 問い の 調子 には なにやら 見下し た よう な 響き さえ こめ られ て い た。
「だれ か って こと は 自分 で 知っ て いる くせ に」 と アリョーシャ は おだやか な、 胸 に しみ入る よう な 調子 で 言っ た。
「だれ な ん だ?   あの 癲癇 もち の 気 ちがい の ばか が やっ た という 例 の 寝 空言 か?   あの スメルジャコーフ が
やっ た という?」   アリョーシャ は ふと、 自分 が ぶるぶる ふるえ て いる のに 気がつい た。
「だれ か って こと は 自分 でも 知っ て いる くせ に」 という 言葉 が 力 なく 彼 の 口 から 洩れ た。
彼 は 息づかい が 荒く なっ て き て い た。
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「じゃ、だれだ、だれなんだ?」もはやほとんど凶暴にイワンが叫んだ。(以下略)
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