私は、本屋の番頭をしている関係上、学者というものの生態をよく感じておりますから、学者と聞けば教養ある人と思う様な感傷的な見解は持っておりませぬ。
ノーベル賞をとる事が、何が人間としての価値と関係がありましょうか。
私は、決して馬鹿ではないのに人生に迷って途方にくれている人の方が好きですし、教養ある人とも思われます。
現代の教養人は、私の言う事を逆説だなどと片附けようとするでしょう。それも見解の相違で致し方のないことでしょう。

小林秀雄