>>613
>アグラーヤが環境的習慣によってつくれた自己の内面性に縛られて、そこから外に出ることのできないでいる絶望ははかりしれない

アグラーヤ(偉大、名誉、輝き、美)
アデライーダ(高貴)
アレクサンドラ(防御、男性名アレクサンドルの女性形)

であり、長姉アレクサンドラが末妹アグラーヤを守るために
楯となって婚期を逸している理由でもある
次姉アデライーダも似たような覚悟ではあるが
エパンチン家の流儀として上流階級への仲間入りを望み
実際、Ш(シチャー)公爵という婚約者がいる

こういう鉄壁の中で箱入り娘として人工的に培養された
アグラーヤの対極にいるのが
地主貴族の娘でありながら幼くして両親と兄弟を無くし
亡父の友人から慰み者として扶養・造形された
ナスターシヤ(復活)フィリッポヴナ(愛・馬)バラシコーワ(子羊)ですね
愛馬(すなわち乗り物)であり子羊といった玩弄物から
これまた勝手な趣味性に基づく教養教育によって「人間」として蘇生した「女」である
「地獄からよみがえった」とも「磨かれざるダイヤ」ともいわれるのはそのため

ロシア名門貴族の末裔でありながら天涯孤独の身の上で
おまけに重度の癲癇から成人になって奇跡的に蘇生したムイシュキン公は
無垢の人という意味ではアグラーヤに
腐敗したロシア社会や現実社会の彼岸から蘇生したという意味では
ナスターシャに近い
それゆえムイシュキン公をめぐるナスターシャとアグラーヤの対決は凄まじく
二つに共通項によってムイシュキンの心は引き裂かれていく