一廉ひとかどの事を知っていると云う自惚うぬぼれもなく、
人間を改良するように、済度するように、
教えることが出来ようと云う自惚もない。
それに己は金も品物も持っていず、
世間の栄華や名聞も持っていない。

この上こうしていろと云ったら、狗いぬもかぶりを振るだろう。
それで霊れいの威力や啓示で、
いくらか秘密が己に分かろうかと思って、
己は魔法に這入った。
その秘密が分かったら、辛酸の汗を流して、

うぬが知らぬ事を人に言わいでも済もうと思ったのだ。
一体この世界を奥の奥で統すべているのは何か。
それが知りたい。そこで働いている一切の力、一切の種子しゅしは何か。
それが見たい。それを知って、それを見たら、
無用の舌を弄せないでも済もうと思ったのだ。