芥川は明晰な頭脳、華麗な技巧で鮮烈に、刹那的に文学史に残る作家であるが、文豪のイメージがあんまり湧かない。嫌いでは無い。むしろ全盛期は冷徹に斬れる鋭利な日本刀みたいな格好良さ。
ただ短編しか書けなかったのもあるし、宇治拾遺物語などの日本や中国の古典を生かすアレンジの天才であり、病的で息切れの多い、精神が繊細薄弱な面が、いわゆる文豪像とは結び付かない。
文豪は人生の終わり方はともかく、泰然自若に、自身の哲学に蟠踞していて欲しい。
漱石、鴎外、露伴、川端、三島の様な作家が印象に適う。
激動の時代の中、最後まで飄々と生き抜き、創作意欲旺盛で「刺青」から「細雪」の様な長短、多彩な作品を書いた谷崎も然り。
しかも駆使できる日本語文章の変幻自在さも怪物。
ちなみに三島の芥川評は「ブッキッシュな作家」