>>805
> 天上のものと地上のものが混じり合って人間の魂の雰囲気が出来上がっている。

この地上においては、多くのものが人間から隠されているが、そのかわりわれわれは他の世
界、――より高い世界と生ける連結関係を有しているという、神秘な貴い感覚を与えられて
いる。それにわれわれの思想感情の根元はこの地になくして、他の世界に存するのである。
哲学者が事物の本質をこの世まで理解することは不可能だというのは、これがためである。
神は種子を他界より取ってこの地上に撒き、己れの園を作り上げられたのである。こうして
成長すべきものは成長し、成長したものは現に生活している。しかし、それは神秘なる他界
との接触感のみによって生活しているのである。もし人間の内部にあるこの感情が衰えるか、
それとも全然滅びるかしたならば、その人の内部に成長したものも死滅する。その時は人生
に対して冷淡な心持ちになり、果ては人生を憎むようにさえなる。私はこのように考えてい
る。
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てもとに在る、19歳時購入の河出書房・カラー版世界文学全集より引用。
(米川正夫は昭和40年に没して、息子の米川和夫が、昭和43年改版の際に編集。旧かな旧字
体の訂正、句読点を変更して読みやすくしたもの。)
http://www.geocities.jp/lsxravine/dost/sakuhin.html
この本はボロボロになり50ページほど失われている。
ぼくは16歳のとき図書館の暗い書架ではじめて手にした世界文学がこれで、同じものを19歳
のとき買いました。ひらがなが異常なまでに多い、こちらこそがぼくにとっては『米川』で
あり、岩波の米川訳には抵抗があり、手入力で修正してます。