勝敗を決するのは戦場での小競り合いではなく
それを差配する幕舎である、ということで
要するに末端の兵士は駒に過ぎないという考え方

「戦争と平和」におけるトルストイの考え方は
こういう貴族主義的考え方とは正反対なんだね
むしろ西欧文化に毒された貴族たちではなく
ロシアの大地に根差した農民たちの無私の働きが故国を救うといった
ドストエフスキー流の大地主義の立場に与する

アイザイア・バーリンがメストルを引用して
「戦争と平和」の哲学を剔出する際には
「意志」というものにスポットを当てるのだけど
亡命貴族であるメストルはもちろん貴族主義者なので
「火薬を発明する」側の意志を重視する
しかしメストルに対して批判的なトルストイは
土俗的民衆の無私の奉仕こそ国家の屋台骨を支えるものと考える