>>835
>大江もそうした流れに乗って書いたんだが、読者が付いてこられなかった

刊行時の加賀乙彦との対談によると
元は6つのそれぞれ異なる構造体によって構成される
さらに長大な小説をめざしたそうだが
この構想を断念して分量も草稿の段階からかなり削り込んだそうだ
それは何よりも読者への配慮があったのだろう

異なる構造体の複合物という試みは
その後の短編連作である『「雨の木」を聴く女たち』
などでいちおう形になったのだろう
もっとも、80年代の小説は
『同時代ゲーム』同様かさらに評判が良くないわけだけど

職業作家としての生活もかかっているわけだから
そんなに野心的な冒険はできないはずなのに
そこをあえてやってしまうのもすごいことなのだが
同時代の古井由吉もそうだけど
あんな小説を書いていてよく食えたものだと感心してしまう
出版社はもちろん読者の方も根気強かったのだとおもう
良い時代でもあったのだろう