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幻想に生える新芽
0001吾輩は名無しである
垢版 |
2024/05/11(土) 00:45:23.42ID:+fpNIigL
異常気象が発生してからどれくらいの時間が経過したかもう定かではない。
いつの日か言った「年始で氷点下下回っちゃったら、年末には−50度とかになっちゃうんじゃないの?」とかいうつまらない冗談が現実となってしまった。
ここには冬以外の季節はない、その長すぎる冬と積もりに積もった雪は、母なる自然の大地と人類の叡智によって作り出された時間という概念すらも覆い被した。
シェルターの外は一面の雪、生命を持つものはほとんどその姿を消した。
時間はかかったものの、政府はなんとか最低限度の生活は過ごせるインフラを整え、国民に生活必需品を支給するルートを確保した。
生物の三大欲求を満たす為の物資は確かに必要不可欠であるが、そんな中でもテレビは私にとってそれらと同等に欠かせない存在へとなっていった。

満開の桜、青々と茂った草木、散りゆく紅葉、その全てが海馬の片隅で霞かかっている今。
テレビをつければスクリーン越しではあるものの四季を擬似的に体感することができる。
その中でも私は春の雰囲気に浸っている時が一番心地が良く感じる。
冬の終わりを示す春の訪れが、私の気持ちを一番癒してくれる。
春さえくれば、春さえくれば季節は元あったサイクルに戻り、また生命力にあふれた世界へ戻るのだと信じている。
四季が戻った後の冬にさえ期待を膨らませているているほどには、春の息吹がこの厚く積もった雪を溶かすのを心待ちにしている。

時々、私は時間を忘れテレビにのめり込み、その中に生きている幻想さえ抱く。
テレビの中に生きる生命力が無機質なスクリーンを超え私の体内に入り込んでいった気すらした。
その偽りの生命力に感染した私は、いつの日か心の中に春の新芽を生やした。

だが、少し考えた私は、その心の中に芽生えかかった新芽と「邪念」からそっと目を逸らし、顔を顰めながらも脳内からかき消した。
冬に一番近い存在であったはずの春、今ではすでに冬から一番遠い存在となっていると言っても過言ではない。
いつ春が来るかわからないような過酷な環境に新芽の成長を期待するほど私は身勝手ではない、と自分に言い聞かせた。
0002吾輩は名無しである
垢版 |
2024/05/11(土) 00:56:41.01ID:+fpNIigL
辛口評価お願いします🤲
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