俺の世界には冒険者なんて職業は存在しない。

 まぁ、俺もある意味では人生の冒険者だった。
 アルバイトをしてお金を稼ぎ、稼いだお金の大半はボクシングジムの会費と家賃に消えた。
 残ったお金は体を作るためのビタミン剤やプロテインに使う。

 だが、異世界の冒険者もフリーターも、ほとんど生き方は変わらないような気がする。

「冒険者ではなかったけど、仕事はあまりしていなかったよ。仕事をするより運動をする方が好きなんだ」
「だからレオはそんなに強いのね!」

 正直、アルバイトをしている時間が勿体なかった。
 家賃のため、生きるためにお金を稼ぐだけの人生にはしたくなかった。
 俺は25歳になってもプロのボクサーになる夢は諦められなかった。

「まぁ、色々な生き方を諦めて、戦う事だけに集中していたからね」
「レオは自分の力で私とティアナの命を救ってくれた。あなたはやっぱり勇者なのよ」
「そうよ、レオ、自信を持って!」