たかしはその阿鼻叫喚の光景を見て吐き気をもよおした。
「やべえ。あそこを通り抜ける勇気が、オレには無え」
 膀胱が限界をむかえようとしているというのに、胃袋まで締め付けられてきて、たかしは二重苦を味わっていた。泣いた顔を、ハチに刺されたような気分だった。
 この学校で、ゲロとおしっこを同時に出せるという前衛的な芸術作品のようなトイレを、たかしは見たことがない。
 仕方なくたかしは、その場で軍人よろしく、綺麗な回れ右をして走りだした。
 だが、それを邪魔するかのように、マヨネーズにまみれたたかしの親友が、尻に喰らいついてきた。
「たかし、タオルくれ。頼む、親友だろぉ」
「うわっ、くす玉の中にマヨネーズを詰めちまうような親友、持った覚えねーよ!」
 たかしは親友を捨て駆けた。この瞬間を切り取って短距離走の場に貼り付ければ、世界新記録をだせただろうなと、たかしは本気で思った。
 しかし、運命の女神はたかしに微笑まなかった。逃げ込むべき便所に行列ができていたのだ。


書き手の個性にもよるけど、無駄に実名とか出さないほうがいいんじゃないかねえ。
女神がDDT食らわせたって意味わからんし。