>>849

文章技術的には、平均以上の腕をお持ちの上、おそらく描写すべきものが極めて少ないため、問題点は少ないようです(気になる癖があり後述)。
しかし主人公が思っているか、過去のことを語っているか、推測を語っているかといった、動かないシーンでほぼ埋まっています。
目を引かれるとか、思わず注意を向けてしまうようなものが一切といっていいほど、出て来ません。
しかも、お説教系の語りが非常に多い(作者の価値観を説明するためにキャラの台詞や一人称の地の文が存在してしまっている)。
それ以外の部分は動作や思考をいちいち説明している印象があります。物語に不必要な情報が多すぎる状況です。

冒頭からしばらく読んで、「これは読み進めるための興味を持つのが難しい」と思い、最後のほうを読んでみました。
ラストで「ああ、こういう理由が背後にあったという理由で、ラスト近くで全編の印象をぱっと変える意図かな」と察しました。
それなら途中も知っておかないと思ったのですが、いくら読み進んでもこれといったシーンが出てこない。

延々と普通の出来事が連なっているだけです。いやそれだけならまだしも、上述のようにお説教系です。
最後まで読んでも、退屈なだけでなく、聞きたくもないことを聞かされている感じになってしまっています。
それが文字数にして9万4千字ほどある(原稿用紙換算で236枚)。7割が地の文になっています。7割以上、主人公の独白といってもいい感じです。

作者さんはキャラ設定してから書きますね。だから、のっけから主人公が心情を独白しても面白く思えます。もう愛着があるからです。
読者は逆です。読み進めて、キャラを次第に知るわけです。主人公といえど、最初は見ず知らずの赤の他人です。
興味を掻き立ててくれなければ読めないのです。読者が見ず知らずの赤の他人に興味を起こすのはどうするかを考えるべきです。
だから、コツとしてよく言われるのが、冒頭でツカミを入れろ、ですね。興味を持ったら知りたくなります。
よく分かったから興味を起こすのではないのです。その順序が逆なのが御作です。

内容的には掌編向きのアイデアだと思います。せいぜい原稿用紙10枚まで、できれば5枚以下ですぱっとオチを示したほうが効果的でしょう。
(現状だと、延々と読まされた読者がラストを見て怒り出しかねないか、と不安になる印象です。)
書き癖で気になるのは、叩きつけるかのように繰り返すことがあります。冒頭から少し引用します。

>  クッキーが動いている。
>  クッキーが手を振っている。
>  クッキーが歩いている。
>  クッキーが話しをしている。
>  クッキーが話しかけてくる。

冒頭ですから、読者はまだ一人称の地の文の語り手(夢の主)を知りません。どんな人が大喜びしているか知らないのです。
クッキーにどんな思い入れがあるかも知りません。だから状況を実感や感情を伴って理解することができません。
感情移入が発生する前に、上記のように似たような文をコンボで叩きこむのは損です。かなりの確率で引かれます。
上記のような手法はもっと後で、必要性と必然性を見極めて使うべきです。ラスト近くであれば使えそうな気がします。