>>33
私はマグマの上を、1歩踏み出した。
靴が煙をあげる。
踵に焼きごてのような、熱。
男は高らかに笑う。
「灼熱に焼かれて死ぬがいい! 愚かなる裏切り物め!」
芝居がかっている、と思いながら、私はさらに1歩を踏み出す。
ふくらはぎまで、焼けただれた。
踵全体が炭化して、黒く焦げ付いている。
痛みを超えた痛み。
歩く毎に、皮膚は焼け、肉は崩壊し、マグマに落下し、消滅していく。
それでも、私は歩みを止めない。

……10歩、進んだ。
すでに、全神が炭化している。
私を構成するのは、白い骨格と、骨盤にぶら下がる大腸と子宮、後は、心臓と眼球位だ。
 内臓は全て焼けただれて、煙をあげている。
 それが、男の虹彩に映る、私だ。