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ワイが文章をちょっと詳しく評価する[78] [無断転載禁止]©2ch.net

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0001ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2017/09/03(日) 20:33:09.93ID:lsHsDNAV
オリジナルの文章を随時募集中!

点数の意味
10点〜39点 日本語に難がある!
40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
満点は創作者が思い描く美しい夢!

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前スレ
ワイが文章をちょっと詳しく評価する![77]
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0763この名無しがすごい!
垢版 |
2017/09/24(日) 15:49:10.61ID:wtDU5zc7
 白を基調とした殺風景な部屋。何の飾り気もない、そんな変わり映えのしない景色が私の世界の全て。
中央の同じく白いベッドの上に放り出された私の体。私の意思で自由にできるのは首から上だけ。
 私はここから外へと歩いていくことができない。だからこそ、この殺風景な病室が私の世界の全てなわけだ。

 事故に遭ったのは、今から一ヶ月前。
 私には何ら非はなかった。青信号の横断歩道を当たり前のように歩いていただけ。それだけなのに――
 突っ込んできたのは、赤信号を無視して暴走する乗用車。一瞬の出来事で、それから身を守ることなど出来る筈もなく……。

 その後のことは何も覚えていない。気付けば、この病室で寝かされていたわけだ。
 そして、この病室が私の世界の全てになった。

 脊髄損傷による首から下の全身麻痺状態。それが医師の診断だ。回復する見込みは、限りなくゼロに等しいらしい。

 私は一ヶ月もの間、ただただ無為に時間を過ごした。当たり前だ。指一本動かせない私に、一体何ができるというのか?
 入院当初は訪れてきた学友たちの見舞いも、今は無い。それどころか、最近では両親ですらこの病室に足遠くなってきた。一人娘のこんな姿を見るのが、どうも精神的な苦痛になっているようだった。

 体の動かない私に許されたのは、ただ膨大な時間の中で思索することだけ。

 窓の外から射し込む陽の光。それを全身で感じられたらどんなに気持ちの良いことだろうか?
 今は四月だ。校門の傍らにある桜の木は、もう薄桃色の花弁を咲かせたのだろうか?

 外へ出たい。外へ出たい。外へ出ていきたい。
 私は奇跡を望む。何かの奇跡で、この体が回復してくれたなら……!
 ――どうか、どうか、神様! どうか私の身体を、どうか!
 そんな奇跡を望む気持ちが、とめどなく溢れ出す。

 もしも、体が回復したのなら……。自分の足で外へと駆け出そう。今まで感じていた当たり前のこと全てに感謝しよう。勿論、神様への感謝も忘れない。

 外へ出られたなら、意義のある生き方をしよう。人生を大いに謳歌する。他人にもっと優しい人間になろう。困った人がいたら助けてあげるのだ。私の出来る、全てを為そう。
 ――だから、だから、神様。どうか奇跡を……。
0764この名無しがすごい!
垢版 |
2017/09/24(日) 15:49:35.19ID:wtDU5zc7
 事故に遭ってから、一年の時が経った。
 まだ私の身に奇跡は起こらない。一年もの間、精神を黒く塗りつぶす様な乾いた時間だけが過ぎ去った。

 窓を見る。あの窓の外には、当たり前のように自由に動き回れる人々が暮らしているのだ。その有難みを実感せずに。そのささやかな幸福に感謝すらせずに。
 ――ああ、なんて妬ましい。なんて、憎らしい。
 そこまで無意識に思考し、ハッとさせられる。駄目だ、駄目だ。こんな醜い考えをするから、この身に奇跡は起こらないのだ。
 
 ただただ無為な時間が流れるほどに、精神が黒く汚れていくのを実感する。だけど、それでは駄目なのだ。
 ――ごめんなさい、神様。私は改心します。もし奇跡が起きたなら、多くの人の為に生きると誓います。だから、だから、どうか奇跡を……。


 ある日、母が私の病室を訪ねてきた。珍しい。母がこの病室に来るのはいつ以来だろうか?
 いや、そんなことはどうでもよい。私は呆然と、母の膨らんだお腹を凝視した。
 母も私の視線に気付いたのだろう。気まずげに横を向きながらボソボソと呟いた。『あなたに妹が生まれるのよ』――と。

 ああ、ああ、ああああああ!!!!
 どうして!? 何で!? もう三十も半ばを越して、じき四十になるのに今更子供!? 私の、私の代わりなのか!? 母にとって、私はもう……!
 動いて! 動いてよ、この体! 動け! この体が動いたなら、目の前の女を殺せるのに!
 ああああああああああ!!!!


 事故に遭ってから、どれほどの時間が過ぎ去っただろう?
 私は未だこの病室の中。
 ――ああ、私以外の全てが妬ましい。憎らしい。
 もし、思い一つで人を殺せたなら、どれほど良かったろう。可能なら、外界の全てを呪ってやったのに。

 ああ、どうしてこの体は動かないのだろう? 決まっている。この世界に奇跡などありはしないのだ。
 それでも、神がもし何かの気まぐれでこの体を治したなら……。そうなれば、私は病室の外へと駆け出して、外界の全てを破壊しにいけるのに。
 ――動け、動け、動けこの体……。


 ただ、ただ、砂のように無味乾燥した、余りに膨大な時間が流れた。
 今、私の傍らで心電図の音が煩わしく鳴り響いている。本当に煩わしい。ただ幸いなことに、その音は徐々に、徐々に遠ざかっていく。
 どうやら、私に終わりの時が訪れようとしているらしい。

 やっとか。心中でそう呟く。ようやく私の下に、安息の時がやってくる。
 心底ホッとする。ただ、世界に対する憎悪だけは薄れない。薄れることはない。
 遠ざかる意識の中、最期に一言、頭の中で呟く。
 ――世界に呪いあれ。
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