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[俺は覇王、今から世界を統一するが文句はないな?]感想

古代〜中世ヨーロッパ風のワンパンマンといったところでしょうか。目新しさはそれほどながら、主人公の目的を含め、分かりやすい設定ですね。
読みやすそうと、最初は感じました。でも、以下で説明を試みますが、長所を打ち消す要素が多すぎる印象です。

(人称・カメラ視点)
最後まで目を通しましたが、状況が読み取りにくかったです。人称のせいです。ころころと、一人称視点キャラが変わる、三人称に変わる。
作者さんは迷わずに書けたはずです。イメージから文章を起こすわけですから。読者は逆の作業になります。文章からイメージを起こします。
その文章が、誰が喋っているか、誰がどこから見ているかが分からなくなるわけです。
読み進めてから、「さっきのはこういうことか?」と、いちいち後戻りして考えることになります。
娯楽で読むのではなく、読み解く作業をしている気持ちになります。楽しむどころではありません。
各文の描写は、かなり分かりやすいものがあります。しかし、上記の弊害により、分かりやすさは台無しになっています。

各章を飛ばし飛ばしで、ちょっとずつ見てみます。

(龍皇結界に飛ばされた子)
(ツカミ)主人公がどうなるか、と気になるようなイベントがありません。
→ツカミは大事です。予め面白いと分かっていない場合(普通はそう)、地味に始まると、ずっと地味だと予想しがちです。
→ツカミらしきツカミが出かかるのが4章なんですが、後述。

(回想)よほどのことがない限り、避けるべきかと思います。緊張感を下げてしまうのです。
→最後のほうの「――俺はまだ知らない。」以降、かなり先から振り返っての記述になっています。
→ということは、かなり先まで主人公が無事だと示してしまっているわけです。ピンチがあっても切り抜けたことが保証されてしまう。
→この後、無敵無双の主人公になることが明かされるものの、安全を保証してしまっては、緊張感を出すのは難しくなると思います。

(”絶対龍皇”インペリアル)ようやくツカミらしいツカミが来たか?
→この章のラストで、無双主人公と無敵ラスボスの対決か、となります。ようやく期待できそうなバトルです(そこまでは消化試合の感じだった)。

(覇王の凱旋)しかし違った。期待を裏切られた。
→1行目が「俺はさらに三年の時を、龍皇結界で過ごした。」で、バトルどうなったと思いました。
→無事を保証する効果を持つ回想で語るのかな、と思ったら、それもない。がっかりしました。3年過ごした間の別のバトルもない。
→がっかりは、ここだけの問題ではありません。後で主人公にインペリアルに対する強い尊敬があることが示されています(15章:レグノム王とのやり取り等)。
→この章でも、主人公が本気のインペリアルを倒したいと思う動機の問題がありますね。
→その主人公の心情を描写すべきは、この章でのインペリアルとのバトル以外になさそうです(この後はインペリアルが直接登場しなくなるので)。
→ここできちんとバトルを入れ、第1章にしたら、この後どうなるんだろうと思えたかもしれません。物凄く惜しい章です。
(続く)