私は不思議な夢を見た。
 摩訶不思議な夢であったので、其の事を書いていこうと思う。
 それは三日前の事だった。
 前日の夜、九時に寝たが、十一時に目を覚まし、オウルドパァを一杯飲んで再び床に就いて寝た。
 次の日は日曜だと思って、ダラダラと寝ていたら、私を起す者が居た。
「誰だ、私を起すのは」
 眠い目を開くと見知らぬ少年が私の顔をジッと見ていた。
 ハッキリと見える。
 どうやら眼鏡を掛けたまま寝てしまったようだ。
「お爺さん誰?」
 と私の事を尋ねてきた。
 その瞬間、私に怒りの感情が沸いたが、それを抑えつけて、
「誰と尋ねる前に、貴君が自分から名乗るのが常識というものではないかね」
 穏やかに少年に語り掛けた。
「失礼しました、僕は吉田光太郎と申します」
 言えば分かるものだ。
 私が抱いていた怒りの感情は何処かに消え去った。
「貴君も吉田というのか! 私も吉田だよ、吉田十軒というんだ」
「へぇ、お爺さんは吉田十軒というお名前ですか、どこかで聞いたことがあります」
「ひょっとして、親類なのかも知れんね」
 周りを良く見れば、知らない部屋だ。
 どうやら洋館の一室らしい。
 窓硝子を覆うカァテンの隙間から、眩しい光が漏れ木製の床を照らしている。
 私は敷布団ではなく、ベッドで寝ている。
 フカフカで大変、寝心地が宜しい。
「ちょっと待ってて貰っていいですか」
「構わんよ」
 少年は部屋を出て行った。