ワイが文章をちょっと詳しく評価する![83]
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点数の意味
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40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
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ここまでの最高得点は75点!(`・ω・´) ――暗い場所。どこからともなく、疲れ切った男の声が響く。
『ウチはアットホームな会社だから。そこが売りなんだ!』
『ウチはやればやっただけ出すから! こんな会社ないで! ガンガン稼いでや!』
『ウチは若い社員の多い会社だよ! その分活気があるし、そう年も変わらないから気を遣う必要も少なくて楽だよ!』
なるほど。中小企業でよく聞かされる謳い文句だ。就活生たちよ、気を付けたまえ。斯様な言葉に惑わされれば、君は日本社会の暗黒面に堕ちることになる。
君たちは余りに社会を知らない。だから、まずは自分たちでも知っている大手企業に挑戦したことだろう。
だが残念ながら、それらの会社から篩い落とされて、止む無く中小企業に就職活動をしている。そうして先の発言を聞かされるわけだ。
聞こえの良い謳い文句に思われるかもしれない。でも、ちょっと待ってほしい。それは君を黒い底なし沼へと沈めんとする甘言なのだ。
アットホームな会社。まあ、嘘ではあるまい。
君が知っているかどうかは定かでないが、中小企業にはすこぶるオーナー企業が多い。そしてそれらの会社は往々にして身内びいきだ。
社長にその妻や息子、親類筋が何人も勤める。また、彼らオーナー一族と親交のある者が採用されたりする。それらの人は、準身内といった所か。
言うまでもないことだが、君のような入社前にオーナ一族と何ら縁故のなかった社員は最底辺におかれる。
その上、オーナー一族は仕事(会社)とプライベートの垣根が曖昧だったりもする。
君は、アットホームな会社の社員という名の、オーナー一族の体の良い召使になりかねない。
うむ。なるほど、アットホームなことだ。大昔の名家の邸の中を見ているかのような気分にさせられる。
やればやっただけ、ウチは(給料を)出すから!
……君は期待に胸をふくらませるかもしれない。
バリバリ働いて大活躍すれば、大手の社員にはなれなかったけれど、大手のエリートたちと変わらぬ高給を得るのも夢ではないかも、と。
だが、キツイことを言えば、そんな夢想を抱けるのは君たち就活生や新社会人くらいのものだ。
我々のような先達からすれば、何とも空虚な言葉に聞こえる。
やればやっただけ、と言うが、では明確な基準はどこにある。営業部に配属されたとしよう。具体的に売上をいくら上げれば、いくらの報酬を得られるのか?
一度尋ねてみればよいだろう。きっと明確な答えは返ってこない。何せ、基準なんて何もないからだ。ようは社長の胸先三寸である。
勿論、完全出来高制の会社であれば事情は異なる。まあ、それはそれで恐ろしい制度ではあるが。
ウチは若い社員ばかりの活気ある会社なんだ!
ほう、若い社員ばかり? 異なことを仰る。
人は誰であれ年を取る。近年できたばかりのベンチャー企業ならいざ知らず、起業して十年二十年にもなるのに若い社員ばかり?
先輩社員の勤続年数を聞いてみればいい。一年? 二年? 三年? 多分五年以上と答える人は少ない。まあ、軒並み短い年数が返ってくることだろう。
翻ってベテランと呼ばれるような社員が少ない。少ないどころか、下手をすれば社長、専務、部長など、相当上役にしかベテランがいない恐れすらある。
つまり人が居つかない会社。すぐに人が辞める(逃げていく)会社だということだ。 では、どんな会社を選べばホワイトな中小企業に巡り合えるのか? 君は聞きたいことだろう。だが、私はそれに対する答えを持ち合わせてはいない。
何故なら、中小の多くが濃淡の違いこそあれ、黒いか、あるいは、灰色をしているからだ。
そうとも! 全く問題を抱えていない中小なぞあるものか! ……すまない少し取り乱した。
それに、ないと断言するのは早計であった。どこかにはあるのだろう。しかしそれは絶滅危惧種か、天然記念物並にレアな会社だ。
例えるなら、北海道でイリオモテヤマネコを見つけるくらい難しい。
君が北海道でもイリオモテヤマネコを見つけられるというのなら、探してみるといい。おススメはしないが。
では、どうすればよいのか? ……次善策しかあるまい。
何処もかしこも、何かしら問題を抱えている。ならば、問題の多い会社を、問題の根深い会社を避ける。出来る限り、白に近い灰色の会社を探すのだ。
それならばまあ、出会える可能性もあるだろう。
例えるなら、夜の田舎道を車で走っていて、飛び出してきた鹿にぶつかってしまう。それくらいの確率はあるだろう。あるといいなあ。
……何? 君は奈良県民なのか? ならば、熊とぶつかると置き換えてくれたまえ。
ん? あなたは巡り合えたのか? ……愚問だな。巡り合えたのなら、私は君の前で話しているさ。
こうして、どこからともなく声だけで囁きかけるのは、私が光も飲み込む、黒い黒い闇の奥底に身を沈めているからだ。
君は、こちらには来るなよ。どうか、光差す、世界、で、君が生き、ていくこと祈って……。
――暗がりからの囁きは途絶えた。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています