ワイが文章をちょっと詳しく評価する![83]
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ここまでの最高得点は75点!(`・ω・´) たかもりです。またお題スレに書きました
今回はちょっと真面目に書いたので転載してみます。ワイさんお宜しく願いします
お題は「ロマンチック」
「ふう、そろそろ寝るか」
颯太は、軽く息を吐きながら鉛筆を置いた。
時計は午前0時を回ったところ。まだそれほど眠いわけでもないが、受験直前のこの時期になったらもう無理は禁物だ。
高梨颯太(たかなしそうた)は、中学3年生。成績はまあまあ上の方だ。志望校も公立とはいえ県内では有数の進学校で、余程の大失敗さえなければ合格は間違いないだろうと担任にも太鼓判を押されている。
となれば、今は何を置いても健康第一。体力を落としてインフルエンザになど罹ってしまったら目も当てられない。
颯太は部屋の電気を消し、ベッドに入った。その時。
学習机の上に置いたスマーとフォンが光を放ち、同時に聞きなれたメロディーを奏で始めた。
「んだよ、もう」
颯太は舌打ちしながらスマホを手に取ると、画面に示された発信人の名前を見て首を傾げた。
「ん?」
クラスメイトの、鈴木奏(すずきかなで)からだった。
奏は颯太とは成績も同じくらいでそこそこ気も合う、クラスの中では同じグループに属していると言っていい間柄だ。
別に付き合っている訳ではなく、二人きりで遊んだという記憶もないが、だからといって異性として意識してないかというと、そんなことは全くない。
それどころか、卒業までに少しでも進展することはできないものかと毎日悶々とし続けているというのが本音だ。
だからこそ、突然かかってきた電話に戸惑ってしまうのだった。
「もしもし…」
何なんだ、この緊張感は。
「あ、高梨くん? こんばんわ…」
耳元で奏でられる鈴の音のような声に、心臓が高鳴るのを感じる。奏でと奏…、ってアホか俺は。
「どうした? こんな遅くに」
「ごめんね。寝てた?」
「いや、起きてたよ。そろそろ寝ようと思ってたとこ」
努めて平静を装う。
「そう」
「何かあったの?」
「ううん、何もないよ。なんか眠れなくて。ちょっと声を聞きたくなっちゃって…」
俺の声を聞きたくなった? いや待て待て、過度の期待は身を滅ぼす元だ。
ひそかに深呼吸をし、心を落ち着かせようとする。
でも、そうだな。試験も近いし、こいつだって夜中に不安になったりすることはあるよな。
そう考えると、ほんの少しではあるが本気で落ち着きを取り戻すことができた。
「そっか」
「うん…」
「……」
「……」
うんと言ったきり、奏は黙り込んでしまう。
颯太の方も何を言えばいいのか分からず、困った挙句に奏に向かって文句を言った。
「なんだよ」
「え?」
「何かしゃべれよ」
奏は颯太のぶっきら棒な物言いに暫し絶句した後、同じように文句を返してきた。
「高梨くんこそ、何かしゃべってよ」
「何かって、なんだよ」
「なんでもいいから」
なんで俺がそんなことしなきゃならないんだよ。
教室の中でいつもやっている言い合いのような。本気ではないが少しはカチンと来る。
「何もないなら切るぞ」
「えー、意地悪ぅ」
突然発せられた甘え声に、今度は颯太の方が絶句する。
「っ! な、何が意地悪だよ。ったく、しょうがねえなー…」 「あっ、ねえ。外見れる?」
は?
「外?」
「うん。星がとってもキレイだよ」
「何なんだよいきなり。んーと…。うわっ寒っ!」
「えっ、窓開けたの?」
「あたりまえだろ、ガラス曇ってて見えねーもん。て、うわあホントだ。すっげー」
窓の外は、満点の星空だった。
「ちょっと待ってて、私も開けるから。あはっ、ホントだ寒ーい。うっわあスゴーい! 空が全部お星さまだー!」
「おいコラ、なんでお前の方が驚いてるんだよ」
「えー、だって私はガラス越しに見てただけだもん。それでもキレイだったんだよ。けど、窓開けるとホントにすごいねー」
正に星降る夜。窓から身を乗り出すと、頭上に見覚えのある形を発見した。
「あ、オリオン座みっけ」
「えっ、どこどこ?」
「頭の上の、ちょい南西のあたり」
「あっホントだ。おっきーい! あー三ツ星だー。小三ツ星もあるー」
奏が子供のようなはしゃぎ声を上げる。
「小三ツ星なんてよく知ってるな」
「小学校で習ったもん、それくらい知ってるよー」
「んじゃあさ、小三ツ星の真ん中の奴って何だか知ってる?」
「何って、星じゃないの?」
「よく見てみ? ちょっとボヤけてない?」
「うん…」
「あれがかの有名なオリオン大星雲だよ」
「えっ、あれがそうなの!」
「知らなかっただろ?」
「うんうん! 星雲なんて望遠鏡でしか見えないと思ってた! えーっ、すごーい!」
「それと、オリオン座の少し右上の方にもっと大きな塊りみたいなのが見えない?」
「うん、あるある。ぼんやりって言うか、キラキラしてる」
「それが昴、プレアデス星団だ」
「えっ、あれが? すごーい、あんなにはっきり見えるんだー。うわー、こんなにちゃんと星を見たの初めてだよー」
「うん、俺もだ」
二人は寒さも忘れて、天上の景色に暫し目を奪われた。
「ねえ、なんだか不思議だね」
奏が、ポツリと呟く。
「何が?」
「だって、私達こんなに離れているのに、同じ星を見てるんだよ」
「そうだな」
「声だってすぐ傍に聞こえるし…。高梨くんが隣にいるみたい」
「…うん」
本当にその通りだ。
「……」
「……」
「はくちゅっ!」
突然耳元で炸裂する、可愛らしい破裂音。
「あっ、大丈夫か?」
「うん。あはは、ごめん。冷えてきちゃった」
「もう窓閉めよう。俺も寒くなってきた」
「うん。そろそろ電話も切るね。ありがとう、楽しかった。また明日学校でね」
「ああ、また明日」
名残惜しくないと言えば嘘になる。でもまあ、明日になれば会えるんだし。
と、窓を閉めようとした、その時だった。 「あっ!」
「あっ!!」
二人は、ほぼ同時に声を上げた。
「鈴木っ、今の見たか!」
「うん見た見た! 流れ星!」
「だよな! 流れ星だったよな!」
二人が目にしたのは、天空を流れる一筋の光だったのだ。
「うんうん! 絶対そうだよ!」
「すげー、初めて見たー。明日みんなに自慢してやろうぜー」
「えっ?」
興奮しまくりの颯太の言葉に対し、奏は言葉を詰まらせた。
えっ、て…。
「なんで?」
「だって…。私と電話で話してたって……、みんなに言っちゃうの?」
あっ!
「そっか、そうだな…」
深夜に二人っきりでおしゃべりしてましただなんて、恥ずかしくて言えるわけがない。
それを考えると、颯太も顔を赤くして黙り込んでしまうのだった。
「あのさ…」
再び、奏が口を開く。
「ん?」
「これ…、私達だけの秘密にしない?」
「秘密?」
「うん…。誰にも内緒……」
「いいけど」
すっげえ嬉しいけど。
「じゃあ、約束ね」
「うん…わかった」
「ふふっ。じゃあもう切るね、楽しかったよ」
「ああ。こんどは眠れそうか?」
「うん、いい夢が見られそう」
こっちもだよ。
「じゃあまた明日な」
「うん、また明日」
そう言って電話を切ろうとし、二人ともそのまま沈黙してしまう。
もう一度。
「おやすみ…」
「おやすみなさい…」
そして再びの長い沈黙。
その挙句に…。
「なあ、なんで切らないんだよ」
「だって、高梨くんこそ…」
囁くように文句を言い合う二人の声は、だがどこか嬉しそうであり、甘えているようでもあった。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています