安価・お題で短編小説を書こう!3
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安価お題で短編を書くスレです。
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■前スレ
安価・お題で短編小説を書こう!
http://mevius.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1508249417/
安価・お題で短編小説を書こう!2
http://mevius.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1511408862/ >>429
感想を何時も有難うございます
少し説教っぽく成っちゃったかな? とはおもったのですが、そのまま通しましたw
この手の小咄風短編を書くときは何時もですが、今回も大量に削っています
>>430
有難うございます >>411
面白い。ただ、感動しないし腹を抱えて笑えることもない。
普通の作品としては良くできている。
野暮なことを言うが、日本語のミスや鼻に付く表現が一つもないこと、自然なことに驚いた。
ここでは考えられないことなのだが、おそらく本職だろう。中々のものだ。 もし俺を疑うなら、ちゃんとした作家に「私の文章を読んで正しい日本語だと思うか、率直に感想をお願いします!」
って必死で土下座して頼めよ。
それで太鼓判を押してもらったやつは問題ない。
でもお前ら土下座する位なら死ぬとか、変なプライド持ってるだろ。
言われたら反論するかもしれんしな。ダメだそれじゃ。
それが面倒なら、俺がダメ出ししたら認めろ。自分が失格してるって。
褒められたらそりゃ勿論喜べるが、褒めあって何もしないなら意味がないどころか、
正しい行動をする機会を失ってるわけだから褒めること自体が有害だといえる。
お前らがやってるのは何の意味もない戯れだし、これをやってて成長するなんてことはおそらくない。
わかったか。馬鹿。
というよりもな、お前ら、結局俺が何を言っても荒らしだと言って、受け付けないだろ。
その精神性も、精神のみならず、行動も、ダメだ。
わかってるよな、自分達の至らなさを。直すべきところがあるということを。
それなら、言われたら改善しようと取り組めよ。
そういう発想があれば、書くなんてことは自分にはまだ早いって発想になる筈なのに
何考えてるのか、全然わからねえ。アホなのか、それも才能なのか。
直せ。今日から改善しろ。反省して、自分がつまらないものを書いてると思って
それでも書き続けるか、まずは基礎練として、本を読むか、どっちかだろ。
何やってるんだお前らは。不甲斐ないぞ。 >>432
感想有難うございます
短い文で感動させる事の難しさは実感しています
ただもう、それに関しては習練あるのみなので、今後も精進します >>425 うーん、いまいちキレが悪い・・・
使用したお題:『音楽』『悪魔』『同性愛』
【悪魔の音楽会】
悪魔は問うた。
「お前の願いをなんでも一つ叶えてやろう。ただし、その対価としてお前の魂をもらう」
女は答えた。
「私は感動する音楽を奏でたい。ピアノの技術だけはあるが、私の音楽には心が欠けている」
悪魔は応えた。
「その願い、叶えよう」
こうして女のピアノは数多の人々に感動を生み出した。
細い指先から奏でる音楽に、聴衆のすべてが魅了された。誰もが彼女を最高の演奏家だと称えた。
女はそれに深く、深く満足した。だから悪魔に声をかけた。
「ありがとう、おかげで私は満ち足りた。魂を持っていってちょうだい」
「……一つ聞いていいか?」
悪魔は戸惑っていた。
過去、悪魔と取引を願った者は数多いるが、大抵、嫌だ嫌だと喚き散らすか、生き汚く悪魔払いを試みるか、契約の不備を訴えようとするのが常だった。
こうも嬉しそうに自らの魂を差し出す者はいなかった。
悪魔がそう説明すると、女は小さく笑いながら答えた。
「私はピアノが大嫌いだった。親に押し付けられて、無理やりやらせられて、常に苦痛だった。ただ適正だけはあったのか、練習すればするほど上手になった。それが余計に嫌だった。
大嫌いなのに上手だと褒められ、苦痛なのに正確な演奏を強いられ、不愉快なのにたくさんの賞をもらった。ただ楽譜通りに正確に鍵盤を叩いているだけなのに。
でもある時、小さな女の子のピアノを聞いた。初歩の初歩の楽曲で、練習が足りないのか音が全く足らず、ただ乱雑に音が鳴っているだけの音楽だった。でも私はそれを聞いて、感動した」
「なぜだ?」
「すごく楽しそうだったから。すごく嬉しそうだったから。その少女の音楽はへたくそだったけど、とても色鮮やかに思えたから。
だから私はその音楽を聞いて初めて真似したいと思った。初めて自分で楽しい音楽を引いてみたいと思った。でもできなかった。
正確な演奏をするように何度も練習してしまった私は、楽譜をなぞることばかり意識がいって、楽しく心のままに演奏するということができなくなっていたから」
「だから私に願ったのか?」
「そう。あなたのおかげで私は人を感動させる音楽を奏でることができた。自分が満足するくらい楽しいピアノを弾けた。だからもう満足。私の魂は、あなたに差し上げます」
女は覚悟を決めた、というには柔らかい表情を浮かべて、悪魔にその魂を捧げようとした。悪魔は女の説明に納得し、理解し、そして何より戸惑った。
不愉快極まりない、というしかめっ面をして悪魔はこう答えた。
「契約はまだ為しえていない。感動する音楽を奏でたいというお前の契約だったが、肝心の私が感動していない。だから悪魔の私が感動するまで、お前の魂はまだもらえない」
「悪魔のあなたが感動することってあるの?」
「それは知らない。だが、感動する音楽を奏でたいというお前なら、そのうちできるんじゃないか?」
「なんでそんな提案をするの? 何も言わずにさっさと奪っちゃえばよかったんじゃない?」
「私だってそう思う。だが、なんとなくもう少しお前の音楽を聞いてみたいと思っただけだ。勘違いするなよ?」
「もしかして、私に惚れた?」
「女同士なのにか? ばかばかしい」
そんなやりとりを経て、二人はしばらく一緒に暮らし続けた。
女はその後、悪魔に取りつかれた天使の音楽家と呼ばれるようになったそうな。 悪魔と二人三脚と言うところですか
純粋な願いが悪魔を変節させたのでしょうね
素敵なお話だと思いました >>436
『音楽』『悪魔』『同性愛』消化を宣言〜、カモン、デビルズ・ディール!
感動する『音楽』を奏でたい〜、そのピアニストの切望は、色鮮やかなる演奏、オンリー!
欠けたピースを埋めてやろうと『悪魔』の提示する取引は、古今東西、魂との交換だ〜、思ったとおりに聴衆魅了し、ピアニストが満足げに死を申し出る〜
しかし彼女の境遇にほだされた悪魔が、ムリある言い訳でこれを拒否〜、なんだ惚れたか、いや『同性愛』じゃねーしと返す悪魔に、おまえ地味に女だったんかオチw 難度が高いお題消化〜
悪魔が見届けたくなったのは、ピアニストの演奏か、それともその喜び溢れる人生か〜! 取引、それすなわち交換、人の魂の充実が乾いた悪魔の魂をも浸し、訳も分からず取引成立w 奪うつもりが与えられ、笑い溢れるwin-win、二人暮らしENDだァ! >>437 >>438
いつも感想ありがとね。優しい感想さんと競馬実況さんと進行さんはスレの大黒柱です
>>439
しょうもないのでもええんやで。というかしょうもないの禁止にしたら、今まであげた自分の奴が大半ダメになっちゃうorz >>442
あ、ごめん打ち間違えです無視してください… >>425 使用お題:『逆上がり』『同性愛』『女装』
【メイドリフレ『とろい』】(1/3)
健司は重い上体を持ち上げて眠りから覚めた。いつの間にか机に突っ伏して寝ていたらしい。
時計を見ると時刻は午後3時を回っている。昼食を摂った後に寝たとすると2時間以上も昼寝をしていた事になる。
ずっと曲げられていた腰を伸ばすとポキポキと音を立てて痛み出した。
ケータイがバイブレーションで机をたたきながら鳴っている。
セットしていたアラームが鳴っているだけだと思った健司だったが、着信時のメロディだと気づくや否や
急いでケータイをひったくり、いつもの決まり文句を口にした。
「お電話ありがとうございます。メイドリフレ『とろい』でございます」
東京都内を中心にひっそりと営業している派遣型メイドリフレ、それが『とろい』である。
お客様、もといご主人様から電話を受ければすぐさまご希望のメイドを派遣してマッサージやお部屋の片づけ、
料理や耳かきなどをするのが主な業務内容である。愛想の良いメイドたちの丁寧な仕事ぶりのおかげで競争激しいこの業界を生き残り、
ついに来年で設立10周年を迎えることになっている。
健司は『とろい』のそんな実績に惹かれた。長く働き続けることが出来、かつ綺麗な女性に囲まれた職場を探して就活をしていた時だった。
『とろい』はまさにうってつけに思われた。しかし働き始めてからすぐに『とろい』の抱える大きな問題にぶつかった。
健司が入社したときに簡素な入社式が行われた。しかしいくら待てども期待していた綺麗な女性は姿を現すことが無く、
結局最後までオーナーと二人っきりで行われた。不思議に思った健司がオーナーに聞くと、従業員は健司一人しかいないと言われた。
去年まで働いていたメイドたちは結婚や引っ越しで辞めて行き、運転手をしていたアルバイトも就職を機に辞めて行ったそうなのだ。
人材不足というレベルではない。すぐさま辞めてしまおうと思った健司だったが、
「逃げたら殺すぞ」
とヤクザ顔のオーナーに脅されて辞めることが出来なかった。本当に殺されそうな気迫だった。
仕方なく嫌々働くことに決めた健司は、手始めにまずメイドの募集をかけてみた。とにもかくにもメイドがいないとお話にならない。
ネットの掲示板に書き込んだりビラを作って配ってみたり、ナンパのごとく直接声をかけてみたりもした。
しかし薄給でイロモノの求人に一体だれが飛びつくだろうか、若い女性は誰一人やってこなかった。
何一つ仕事が出来ぬまま一月が経った。
健司は悩んだ。このままではノルマが達成できずにオーナーに殺されてしまう、しかし肝心のメイドすら集まらない。
この状況を打破するためにはどうすればよいか。悩んで悩んで悩み抜いた末に、ようやく一つの決断をした。
自分がメイドになればいい。 【メイドリフレ『とろい』】(2/3)
コインパーキングに車を止めた。スマホを見ると時刻は午後4時55分、そして地図アプリを見ると待ち合わせ場所まで歩いて5分。
時間ぴったりだ。健司はルームミラーで軽く身だしなみをチェックして車を降りた。
約束の公園に着いたものの人影はなかった。場所を間違えたかなと健司がもう一度依頼内容を確認しようとした時、
ベンチで頭を抱えている男がいることに気が付いた。半袖長ズボンのガタイのいい体、電話口の野太い声から想像された印象通りの男である。
健司はこの男こそ今回のお客さんに違いないと決めて声をかけた。
男が顔を上げた。健司は何度も練習した自己紹介文を口にした。
「お待たせいたしました。『とろい』から参りました『さくら』と申します。本日はよろしくお願いしますね、ご主人様」
「おお、これはこれはご丁寧に。こちらこそ、今日はよろしくお願いする」
男はベンチから立ち上がり丁寧に頭を下げた。そして視線を上に下に動かして健司の姿を眺めまわした。
『さくら』というのは『とろい』でも1、2を争う人気メイドだ。ストレートな黒髪で落ち着いた雰囲気を醸しながらも
スカート丈の短いメイド服で大胆な一面も併せ持つ。仕事も丁寧で性格も優しいと数々のご主人様からお褒めの言葉をいただいている。
健司が女装しているという汚点に目をつぶれば完璧なメイドだ、じろじろと見てしまうのも無理もない。
「ではご主人様、本日は何をいたしましょうか? 何なりと、このさくらにお申し付けくださいませ」
必死で練習したソプラノボイスで健司は言った。男は「うむ」と偉そうに答えるとつかつかと歩いた。歩いた先にあったのは鉄棒だった。
「さくらちゃんには、逆上がりをやってもらう」
男は言った。
健司は悟った。この男、スカートの中を見るに違いないと。『とろい』は風俗店ではないから体の接触やあからさまなエロ目的のご命令はお断りしている。
しかし中には高い所の物を取らせたり風が強い日に外を歩かせたりしてエロを求める客が後を絶たない。
「心配するな、パンツを見たりはしない。むしろ逆だ」
健司の心の中を見透かしたように男が言うと、逆上がりをさせる理由を語りだした。
男は高校で体育の教師をしているという。普段は男子の相手をしているのだが、どうしても他の教師の都合が合わなくて
来週の1時間だけ女子の体育を受け持つことになってしまった。その時に教えることになっているのが鉄棒なのだ。
「最近の女子たちの発育は大変にけしからん。いや、健康であるのは良い事なのだが何分目のやり場に困る。
万が一その体に欲情してイチモツが反応してみろ、学校中の笑いものになってしまう」
「なるほど、欲情せずに授業をするための予行演習がしたいという事ですね? 分かりました。このさくら、一生懸命お付き合いいたします」
「俺の教員人生がかかっているのだ。改めてよろしく頼む」
こうして『さくら』こと健司によるご奉仕の時間が始まった。
健司は鉄棒をつかんだ。状態を前後に揺らしタイミングを計る。心の準備が整った瞬間、意を決して走り出すように足を前へ繰り出した。
腕で鉄棒を胸に引き寄せるようにし、そして強く地面を蹴った。
産毛一本無いほどに手入れされた健司の綺麗な両脚が空に向かって高く上がった。短いスカートがふわりと翻った。
くるりと回って健司は地面に降り立った。文句無しの逆上がりだった。
しかし男は不満げな顔をしていた。
「なんだぁ、さくらちゃんは元々逆上がりが出来るのか。これでは教える練習が出来ないじゃないか」
男はため息をついた。
「申し訳ございません、私こう見えて運動は得意なんです。しかしながらご主人様、そちらの訓練ならば出来るかと」
さくらは男の体を指さした。男の股間がもっこりと膨らんでいた。
「あぁ、いつの間に! これは失敬、すぐに落ち着けるからちょっと待っててくれぃ!」
男は急いで背中を向けると、何やら必死に手を動かし始めた。
コイツまさかこんなところで慰めているのか、健司は頭によぎったおぞましい考えをなんとか振りはらおうとした。
「しかしまずいな。一度見ただけでここまで反応してしまうとは。やはり女子の体育は自習にでもしたほうが良いのだろうか」
手を動かしながら男は言った。行動とは裏腹に言葉のトーンは沈んでいる。
時間も場所もわきまえずに本能のまま反応してしまう体、その厄介さは健司も男だからよく分かった。それに真面目な男の事だ、
きっとメイドリフレに電話するのも勇気を要したことだろう。そう思うと健司は背を向けてシコる男が不憫に思えてきた。
健司は一考した。 【メイドリフレ『とろい』】(3/3)
「ご主人様、こちらをご覧くださいませ」
健司の声に男は気落ちした顔を向けた。
健司はスカートの中に手を入れた。そして下着を足下までするりと一気に下ろし、足から引き抜いた。
放り投げられたピンクのパンティーは風を受けてベンチに届かずにひらひらと地面に舞い降りた。
「な、何をしているのかね、さくらちゃん!」
立ち上がった男の股間は再び勃ち上がっていた。
「よろしいですか、ご主人様。私は今からこの状態で逆上がりをいたします。どうかその時の光景を目に焼き付けてくださいませ」
「馬鹿な! そんなことをしては、君の大切な場所があらわになってしまう! 私の暴れん棒はさらに元気になってしまうぞ!」
「女子高生の肢体よりも過激な光景を目にすればきっと耐性がつくはずです。そうなれば本番では冷静でいられるでしょう」
男は腕を組んで考えだした。股間のせいで珍妙に見える。
「荒療治だな。だがそうでもしなければ治まりそうにないのも確かだ」
「心の準備が出来ましたら、どうぞ私の前へ」
男は大きく深呼吸した。恭しく健司の目の前へ行き仁王立ちした。
その顔は険しく、大きく開かれた目は健司をにらみ殺さんとするほどの気迫を発している。イチモツの方は言うまでもない。
そして男は合図を送った。
「では、参ります」
健司は鉄棒を握る手に力を込めて、勢いよく地面を蹴った。再び脚が高く上がった。スカートも大きく翻った。
その時、男の眼前にいかなる過激な光景が広がったのか、回る健司は知る由もない。
しかし再び地面に降り立った時に見た男の驚愕の顔とすっかり縮こまった股間を見れば、どういう結果に終わったかは想像に難くなかった。
これで授業はちゃんと出来そうかと健司は聞いたが男は口をパクパクさせるばかりで何も答えず、
同様隠し切れぬままに時間分のお金を払って去って行った。
こうしてご奉仕の時間は終わりを告げた。
3日後。事務所にて退屈しのぎにパソコンをいじっていた健司は、『とろい』のホームページに書き込みがある事に気が付いた。
『さくらちゃんのおかげで無事に仕事をこなすことが出来ました。本当にありがとう。またお願いします』
匿名希望からの書き込みだった。しかしわざわざお礼メールを書き込むあたり、十中八九あの真面目な男だろう。
女子高生が逆上がりをするたびに目に焼き付けたち〇こが思い出されて元気を無くしたのだろうなと考えると少し可愛そうだったが、
無事に済んだのならば結構なことである。健司は簡単に返事を書いた。
嫌々やらされることになったこの仕事だったが、健司はすでに3か月近く続けている。単にオーナーが怖いからというだけではこうはいくまい。
たまに訪れる人の役に立てる喜び、ご主人様たちの感謝。健司は徐々にこの仕事の楽しみを見つけ出しつつあった。
しかし男の書き込みで一つ気になる点があった。リピートするような男ではないと考えたのであのような愚行に及んだと言うのに
『またお願いします』とは一体どういうことだろう。ひょっとして彼を同性愛者へと導いてしまったのかと考えると背筋に寒気を覚えた。
やっぱりこの仕事は早く辞めたほうが良い、健司は改めてそう思い直した。
ケータイが鳴った。バイブレーションで机をけたたましく机をたたいている。健司は急いでケータイをとり電話に出た。
果たして次のご主人さまは一体どんなメイドをご所望なのか。ドキドキしながら、健司はいつもの決まり文句を口にした。
「お電話ありがとうございます。メイドリフレ『とろい』でございます」(おわり) 体を張った御奉仕
一生懸命な行動が実を結んだ結果が、感謝の言葉に成る
素晴らしいですね
でも、それ故に新たな懸念事項がw 使用お題:『逆上がり』『悪魔』『同性愛』
放課後、校庭の片隅にある鉄棒の傍へと、女の子は歩み寄る。そこに同級生の姿を見つけたからだ。
「ばったん、ばったんと新手のエクササイズ?」
「違うわ! さか、あが、りー! ああ……!」
声を掛けられた女の子は、助走をつけ逆上がりを敢行するも、勢い空しく、半ばほどで失速してまたもやばたんと足を地面につく。
「何でまた放課後自主練なんて……。いいじゃん、逆上がりなんてできなくても」
「……体育の授業で華麗に逆上がりを決めたあんたが言っても、嫌味にしか聞こえないんだけど」
「あらそう。でも、ま、本当にできてもできなくても一緒だと思うけど」
「プライドの問題! ライバルのあんたにできて、私にできない道理はない!」
「……ライバル? 椎名と私が? なにそれ初耳。てか、現にできてないし」
尤もな言葉に、鉄棒と格闘している女の子――椎名朱里はむっと眉を顰めて渋い顔つきになる。
「鉄棒の悪魔よ、鉄棒の悪魔が私の邪魔をしているのよ」
「鉄棒の悪魔? ピンポイントかつしょうもない悪魔がいるなあ。……むしろ、妖怪の方が合ってそう。妖怪、逆上がり阻止」
「ああー、枕返しとか、しょうもない妖怪多いもんね。まあ、悪魔でも妖怪でも、それを私にけしかけたのは榊に違いないけどね」
「なんでさ」
とんでもない濡れ衣に、榊ひなたは、呆れたような声を上げる。
「ふっ、隠しても無駄よ。ライバルの私の評判を落そうとしているのは分かっているわ。――『あの子、来年には中学生になるのに逆上がりもできないのよ、ぷー、くすくす』って、言って回るんでしょ」
「ひどい奴だな、私。というか、私と椎名は何のライバルなのよ?」
「決まっているわ! 男子の人気を二分する、鳴北小アイドルライバルよ!」
そんな朱里の言葉に、ひなたは恥ずかしげに頬を掻く。
「いやいや、アイドルって……。私、そんなモテナイし。男子に告られたこともないし」
「はいはい、そんなのいいから。『えー、私、モテナイですよー』的なアイドル発言いらないから。それに告られないのは当然よ。だって、あんたに告白しそうな男子は、全員私が潰して回っているから」
「椎名は本当にひどい奴だな!? ……っと」
学校の敷地内全域に下校を促すアナウンスが流れる。
「ほら、もう下校時間じゃん。帰ろ」
「い、やー! 逆上がりができるまで、か、え、ら、な、いー!」
「いや、それ多分今日中に帰れないやつだから。ほら、帰るよ!」
ひなたは無造作に朱里の腕を掴むと、ぐっと引いた。
おやっと、ひなたは意外に思う。思いの外、朱里は抵抗なく腕を引かれるままに鉄棒から離れたからだ。
二歩、三歩、四歩と鉄棒から離れてから、ひなたは朱里の顔を見る。
「……どうして顔真っ赤なの?」
「な、な、何でもないわ! 逆上がりのしすぎかしらね!? ちょっと頑張りすぎたみたい!」
「なら、やっぱり止めて正解じゃん。帰ろっか」
ひなたは先にすたすたと歩き出す。しかし、朱里は立ち止まったまま。その場で囁くように呟く。
「どうしよう? ひなたちゃんにぎゅって腕を握ってもらっちゃった。……今日は洗わないでおこうかしら?」
「んー? 何か言った?」
「な、何でもない!」
朱里は慌てたように、ひなたとの開いた距離を早足で詰めていった。 久しぶりに遊びに来ました
進行さんが変わったり、細かいルールが変わってるんですね
もし、どこかスレルールに違反してたら指摘して下さい >>448
ツンデレ少女w
意地悪するのはその独占欲のせいでしょうか?
いつか素直な気持ちを見せられると良いですね >>425 これ書いててふと気づいた。自分ってたぶんすごいバカだ
【都市伝説「雨女」】(1/2)
『雨の降っている夜の公園に行くと、髪の短い女がびしょ濡れで笑いながら遊んでいるらしい。
その雨女に見つかってはいけない。見つかると狂気に染まった視線を受け、呪いを受けてしまうそうだ。
雨女を捕まえれば呪いを解くことができるが、その雨女は呪いをかけたあとものすごい素早さで逃げてしまうので捕まえることは困難だろう。だから夜の雨の公園には決して近づいてはならない』 使用したお題:『逆上がり』『雨』『女装』
【都市伝説「雨女」】(2/2)
僕はパンチラが好きだ。
……うん、わかるよ。エロい意味に思っちゃうよね。うわ、こいつ変態だって。
そう考えるのが普通だし、僕もそういう下心が全くないってわけじゃないから否定はしないけど、ちょっと違うんだ。話を聞いてもらえればわかる。
パンチラ、所謂パンティチラリズムというものに興奮するんだ、僕は。
下着のうち特にパンツは他人に見えちゃいけない、でもデザインは本人の好みが反映されていて、でも本来は恋人や親しい人にしか見せないはずのものだ。
それがチラりと見えたり、または見えずとも、見えそうで見えないギリギリのラインを描き出すその芸術性に惚れているんだ。決してエロい意味ではない……まあ変態な趣味だといわれたらその通りだと思うけど。
だから僕は男のパンチラでも喜ぶよ? もちろん女性のパンチラがいいとは思うけど、その相手が色気のない妹やおばさんド直球の母親のものでも嬉しい。
だけどさ、パンチラってそうそう拝めないじゃないか。
男のパンチラはズボンを履いてる人がほとんどだから無理。女性ならスカートを履いている人が多いから、路上でのパンチラはワンチャンあるけれど、相手だって見られたくないから当然ガードが固くなる。
短いスカート履いてるくせにパンツを見せたくないなんて変な話だよな。そう思わない?
まあ、そんなわけでパンチラはなかなか滅多に見られない貴重なイベントシーンなんだ。だからこそ、どうしても見たくて見たくて……。
それで我慢できなくなって、とうとう自分のパンツをパンチラすることにしたんだ。思いついたときは画期的な名案だと自画自賛したね!
だから僕はごくまれに女装をしてパンチラの機会をうかがっている。
とはいえ僕だってバカじゃない。いい年こいた男がスカートなんて履いてたらご近所の笑いものだ。下手するとネットで拡散されて人生終わるかもしれない。だから見つからないように工夫を凝らした。
スカートの入手は簡単だった。母親のお古のスカートが処分される際にこっそり盗んだ。別に定期的に履くわけじゃないしデザインも気にしないから1着あれば十分だ。
妹のスカートには手を出さなかった。サイズが間違いなく合わないだろうし、殺されたくないしね。
次に手段。どうやって自分のパンチラを見るかだった。
鏡を使う案やカメラで録画する案もあったが、どれもしっくりこない。鏡だといい角度に調整できず、カメラだと生で見られないためよろしくない。これだったらエロ本の露骨なパンチラの方がマシだ。
うんうんうなって考えているうちにようやっと思いついたのが、逆上がりだった。近くの公園の鉄棒で逆上がりすると、たった一瞬だけど実にちょうどいい感じにパンチラが拝めるのだ。
これに気付いたときは小学生以来やったことない逆上がりを、これでもか、というくらいグルングルン周りまくったね。
そして最後は隠ぺい工作。これは覚悟さえすれば割と簡単だった。
さすがにスカート履いた男が逆上がりなんてしてたら通報モノだろうよ。でもね、あの公園は雨が降ると誰も寄り付かなくなることを僕は知ってたんだ。
だからずぶ濡れになる覚悟さえ決めれば、いくらでも回り放題だった。それに濡れて足にへばりつくスカートが実に良い感じのアングルを作ってくれたので結果は上々といえよう。
……その際、自分のすね毛が濡れて足にへばりついてる絵面が実に気持ち悪かったので、すね毛処理もするようになった。他人には見せられないな、これは……。
閑話休題。まあこんな感じで、僕は自分の趣味を十全に全うすることができるようになったんだ。マジ最高の気分。
ただ、この前知らない人に見つかりかけたから焦ったけどね。暗いから顔は見られなかったと思うけど、今度からよーく気を付けて公園に行かなきゃまずいね。
それに、なんか変なお化けが出るって噂まで最近聞いてるじゃん? もう嫌だなぁ、僕お化けとか苦手なのに……。
どうか、僕が逆上がりしているときは現れないでくださいね? >>444
444氏が『逆上がり』『同性愛』『女装』を選択したぜ、ボーイミーツボーイ!
さあ、何の因果かヤクザの手先、この頃ハヤリの『女装』っ子、健司さんこと、さくらのお仕事ぶりを見ていくぞ〜
公園で頭を抱える男が言う、「さくらちゃんには『逆上がり』をやってもらう」、な、なるほど、世の中にはディープなご趣味がありますね、と思ってたら、
逆上がったメイドを見て、元気になったこの人、いやコイツ、まさかこんなところで、オイ何してるww そんでさくらは下着を外してって、オイw
物語は、まさかの『同性愛』に導いてしまったんじゃあるまいなオチでお題を消化ァ、そんなこともあるけれど、今日もお仕事〜、落ち込んだりもしたけれど、私元気です・ENDォ〜
>>448
ひさびさ登場448氏、使用お題は『逆上がり』『悪魔』『同性愛』、鉄棒の悪魔と秘めし恋〜
うん、この風景はどこか懐かしい、『逆上がり』と格闘する少女・椎名さんがライバルと張り合っている〜
鉄棒の『悪魔』が私を邪魔する、そんなニッチな悪魔がいるか、って感じで、漫才トークは快調に飛ばすぞ〜
さあ下校時間だ、腕を掴まれ抵抗しない椎名さんが、手を洗わないでおこうなどと、グヘヘ顔
寄り付く男を潰して回るってのは、あながちネタでもなかったのかw 448氏が『同性愛』発覚オチでお題をクリア、冗談の中にホンネを隠す、ほのかに切ないグヘヘENDに仕上げてくれたァ! >>451
なんか変態作品の競争みたいになって来たな! 『逆上がり』『雨』『女装』に挑戦、見てはいけない都市伝説〜、
『雨』降る夜の公園で、びしょ濡れに笑う女が居たのなら、決して彼女に見られてはならぬ〜
さあ、タガの外れた主人公が、パンチラへの憧憬を熱っぽく綴っていく〜「僕は男のパンチラでも喜ぶよ?」←どういうことだクソッ、頭がおかしくなりそうだぜ
『女装』してパンチラの機会を窺う(なんだよコレ…)彼が思いついたのは自身を被写体にした『逆上がり』、マジでどういう発想ww
物語は、君が都市伝説だったのかオチ、いやでも都市伝説より君の方が怖いからね、って感じでお題を消化〜、淡々とした独白が都市伝説の恐怖を易々超える、恐怖をどけたら狂気が顔出す・マッドネスENDだぜ! >>447、>>453
感想ありがとうございます。
いくつか誤字ってましたが中々楽しくかけました。
また書いた際にはよろしくおねがいします。 >>453
変わらず軽快でコミカルな批評をありがとうございます
ぐへへENDですかw >>451
『幽霊の正体見たり枯れ尾花』と、言う事だでしょうか?
もっとも、その正体自体が知らなければ良かった類いの物ですがw みんな感想凄いなー
俺は「いいね」しか出てこない… >>458
すごくわかる。自分もライバル心は刺激されるせいか、皮肉げな感想か「面白いです」の一言になってしまう。
特に競馬風実況感想さんの手腕が凄いから見ることオススメ >>425 割とシンプルな内容かも
使用したお題:『逆上がり』『悪魔』『女装』
【キックオーバー】
怖い、嫌だ、逃げたい、誰か、助けて。
自分は心の中で叫び続けた。しかし声をあげることはできない。そんなことをして周囲から注意を買ってしまうのは絶対に避けなければならない。
なぜなら、そう、ここは地獄だからだ。
まず味方がいない。周囲は敵だらけだった。そしてわずかなイケニエが次は自分の番か、と涙しながら人ごみに隠れ潜んでいる。自分もまた哀れなイケニエの子羊だった。
そして周囲の悪魔どもは容赦がない。その飢えた目は常にイケニエを求め続け、彼らの末路を見ては嘲笑っている。悪魔の親分でさえ、その視線は優しくない。
しかし悪魔のくせに、妙に女子供には寛大なところもある。
いっそ自分も女だったらよかったのにと思わなくもないが、女装したところですぐにバレておしまいだろう。
より深い地獄にたたき落とされるのが関の山だ。
悪魔の親分の声。どうやら自分のことを探しているらしい。嫌だ、見つかりたくない!
体を小さくするも無駄だった。その鋭い視線がすでに自分の方を向いている。もうダメだ、おしまいだ!
自分は心の中で絶叫しつつ、せめてもの情けをかけてほしいとばかりに片手をあげて返事をした。
「おい、清水。次だぞ。早く前に出なさい」
「……はい」
「おーい、清水? お前逆上がりできるのか? 女みてぇにできないんじゃないだろうな?」
「小4にもなって逆上がりできないってマジありえなくね? まあ遠藤もできてなかったけどさー」
「クスクス」
「ううう、だってできないんだから仕方ないじゃないか……」 >>425 今日はなんかいろいろ思いつくなぁ……酷いのが
使用したお題:『雨』『同性愛』『ガソリンスタンド』
【雨の日の出会い】
『ふぅ、ちょっと濡れちゃったな。急に降ってくるんだもの……。少しここで雨宿りさせてもらおう』
『……おう、お前。見ない顔だな。ここは初めてか?』
『あ、はい。すみません。少し場所をお借りしてもいいですか? この雨なんで……』
『いいぜ、ゆっくりしていきな。それにしても、大丈夫か? すごく硬い顔してるぜ? 疲れてるのか?』
『あ、顔は元々こんな感じの四角四面ですから、気にしないでください。まあ疲れてるのは事実ですけどね。
ちょっと小腹も空いてるし、屋根を借りたついでに補給なんてしてもいいかもですね。ハハハ』
『そうかい、じゃあ……後ろを開けな』
『え?』
『後ろの穴を開けろって言ってんだよ。ほら、早くしな』
『え、ちょ、ちょっと待ってくださいよ! い、いきなり。あ、そ、そこはお尻はダメ! 恥ずかしいところが見えちゃう!!』
『おお、いい穴してんじゃねぇか。ここにオレの自慢のホースを、な……』
『あ、やめて。そ、そんな太いのはいらな……はぅっ!!』
『おら、これがいいんだろ? たーっぷり注いでやるぜぇ?』
『あ、ダメ。お腹が、お腹がいっぱいになっちゃうぅぅ!!』
『……そんな泣くなよ。いきなりで悪かったよ。ほら、涙拭きな』
「はい、レギュラー満タン入りましたー。2400円になりまーす」
「はい、ありがとうございました。よし、満タンっと。
あーあ、せっかく拭いてもらったけどまだ雨やんでないし、仕方ないか」 >>460
6個消化に挑む460氏が前半お題×3を選択、『逆上がり』『悪魔』『女装』! もっと、キックオーバー!
さあ、舞台は地獄、『悪魔』どもの眼光を前に、響くのは主人公くんの心の悲鳴、周囲は邪悪な敵だらけ、主人公くんはイケニエだ〜
女にゃ手を抜く悪魔ども、しかし『女装』はさすがに通じない〜、名を呼ばれた主人公くん、気分は絶望、おしまいだ〜
ラスト、主人公くんの視界は嘲笑される学校風景に戻り、『逆上がり』出来ない小学生オチw 分かるぞ、グルッと回るあの非日常の回転は、体竦ませ持ち上がらんよね
でも大丈夫だぜ、重心移動さえ掴んでしまえば一発だァ〜、心ない言葉を背に受けて、何度でも鉄棒に駆け出せ少年、地面を強く、もっと、もっと強く、そうだ蹴り出せ、いったか・小さきファイターEND〜
>>461
続いて残存お題×3の消化宣言だ、『雨』『同性愛』『ガソリンスタンド』で461氏が変態最前線に躍り出る、とある雨の房事〜
さあ、唐突な『雨』に降られた主人公が、四角い顔して軒下借りる〜
しかし、そこに居合わせた先住者、ナニか取り出し後方より接近!? 「俺の自慢のホースをな」←こいつ最低だなアッーって感じで『ガソリンスタンド』でしたオチw
『同性愛』まで通して攻略完了! 461氏が記念すべき全クリアをばっちり変態ポーズで決めたァ
迂闊な雨宿りの代償は、忘れられない初体験〜、幸福なドライブ、運転手の笑顔、全てが真っ白に消え失せ、掘られた側は暗黒微笑w 物語は、地味に使いにくい『ガソリンスタンド』をやっつけて黒光り・フルクリアEND・乙乙だ!! >>460
心象風景と言う事でしょうか?
誰も彼もが敵と言う状況は、正に針の莚田と言うところでしょうね
でも、一歩踏み出してしまえば、案外簡単に先に進めるかもしれません
>>461
擬人化は日本のお家芸
主軸の会話とオチのギャップに、クスリとしましたw >>425
使用お題:『逆上がり』『音楽』『同性愛』
【ゆうやけこやけ】(1/2)
小此木公園は、神社の有る山の中腹辺りにある小さな公園で、真由と奏江にとっては、幼い頃から遊んでいたなじみ深い場所でもあった。
マウスピースから口を離し口元を拭う。
小さな痺れがその薄桃色の唇に走っている事を感じ、大江 由真はこのまま続けて練習するより、一休みを入れる事を選択した。
「奏江ちゃん、ちょっとお休み入れよう?」
「ん? ん〜〜……まだ続けるつもり?」
隣で同じ様に練習をしていた颯浪 奏江は、トランペットを持ったまま背伸びをして、そう訊ねる。
首を傾げた由真だったが、辺りが薄暗くなっている事に気が付き、練習を始めてから1時間近くが立って居る事を悟った。
「え、えっと、まだ、ちょっと自信が無いから、もうちょっとだけ、もうちょっとだけ付き合って?」
「……う〜ん、良いけどぉ……」
少し不満げにそう言う奏江に、真由の心が微かに痛む。
2人が所属している吹奏楽部は部員数70名強を有する一大規模の部活であり、そのレギュラー争いが苛烈な事でも知られている。
それ故に部活後の自主練習は必須で、2人もこうして、音を出しても周囲に迷惑の掛からないであろう小此木公園までやって来たのだ。
実際、真由が自身が無いのは本当である。だが……
奏江が帰りたがってる“ある理由”を由真は知っているが為に、その時間を引き延ばそうとしている自分自身を彼女は浅ましく思う。
『行き合えよって、言われたんだぁ』
困った様な嬉しい様な、そんな表情の奏江に話を聞いた時、由真の心はヤスリを掛けた様にざらついた。
戸田 雅樹と言う少年の事は、由真は正直苦手だった。奏江と同じ様に幼馴染と言う立場ではあったが、ガキ大将的な雅樹の、乱暴そうな雰囲気が好きではなかったし、中学に入ってから身長が伸びた為、覆い被さって来るような威圧感があって怖かったからだ。 お題7個の方がいいのかな?
なんか7個中3個だと、お題が被りやすい奴と被らない奴が多くてなんかいまいち。5個中3個だと必ず1個被るから面白い気がするんだけど・・・ 【ゆうやけこやけ】(2/2)
その戸田 雅樹が奏江に告白したのだ。
『まだそう言うの、分からないよ』
奏江はそう返事をしたと言う。
だが、その日から2人はラインのやり取りが多くなったらしい。
奏江との普段の会話で、彼の話が出る事が多くなった。
元々、活動的な奏江が吹奏楽部に入ったのは、由真が躊躇していたからだ。吹奏楽に……と言うか音楽活動と言う物に憧れを抱いていた由真だったが、人見知りの為、中々、吹奏楽部の部室に近づけなかった事も有って、奏江が背を押してくれたのだ。
だが吹奏楽部は、“文科系運動部”とも言われる程ハードな部活であり、奏江も「わりと自分向きだったね」と言ってくれてはいた。
力の入っていた肩をほぐす為か、奏江がグルグルと肩を回す。近くにあった鉄棒にぶら下がると、ついでとばかりに軽い感じで逆上がりをした。
制服のままだった事でスカートが翻り、そのやや日に焼けた腿が露わになる。
由真は、自身の心に情欲が混じるのを感じ目を伏せた。
(最低だ、わたし)
嫌悪感で胃の辺りが重く感じる。
「……やっぱり、もう終わりにしようか」
「え? 良いの?」
「うん……」
楽器を片付け、ふたり並んで家路へと歩みを進める。茜色に照らされ、楽しそうに話をする奏江を横目で見ながら、由真は溢れ出しそうになる想いをただただ飲み込むしか無かった。
この感情が、夕焼け空の想い出へと変わるまで…… >>425
使用お題:『雨』『悪魔』『ガソリンスタンド1』
【デビランドトゥギャザー】(1/2)
ガソリンのメーターに目をやれば、エンプティ―ギリギリでメーターの針がダンスしていた。中川 翔は溜息交じりに紫煙を吐き出すと、街道沿いにガソリンスタンドを探す。
アメリカの片田舎は、本当に街道以外の物が目に入らない。このままだと、車を押して進まなければならないだろう。
翔は舌打ちをしたくなった。
だが幸いにして、無人のガソリンスタンドを見つけ、車を滑り込ませる。
休憩所と給油機しかない寂れたガソリンスタンドだった。
「……」
『結界を張られたなブラザー』
翔は顰めっ面で煙草をもみ消した。
命のやり取りは日常茶飯事だが、こうも一方的に狙われ続けるのは翔の主義に合わない。元凶でもあるコルトピースメーカーを腰に差すと車から降りる。
『さぁ、ご機嫌なダンスの始まりだ!!』
「黙れ」
呪われた道具……そう呼ばれるものはいくらでもある。徳川家に仇を成す村正しかり、持ち主に不幸を呼ぶホープダイヤしかり。
コルト・シングル・アクション・アーミー……悪魔に憑かれた呪われし銃。
“平和の創り手”等と名付けられて居ながら、この銃程血を吸った拳銃は他に無いだろう。幾人もの命を啜り、足りなければ持ち主の命すら奪って来たそれは、いつしか、“悪魔憑きの妖銃”と言われ怖れられて来た。
しかし、怖れは畏れへと変わり、その抗い難き魅力と共に信仰となる。
翔は煙草を咥えるとガソリンスタンドの中央へと歩みを進めた。
タ―――ンッ。
乾いた音と共に、翔の上半身がグラリと揺れる。
ドサリ……と灰色の人影が屋根から落ちた。
「まずは一人……」
いつの間にか抜き撃ちの体勢に成っていた翔の口からそんな言葉が零れた。
ターン! ターン! ターン!
続けざまに銃声が響き、しかし翔はクルクルと踊る様に立ち位置を移動し、その度に銃跡がコンクリートの地面に穿たれる。
一発一殺。
攻撃位置を見定め、的確な反撃で確実に命を奪う。襲撃者達の動揺が、手に取る様に翔には読み取れた。
『ご機嫌んな御馳走だぁ!! もっと、もっと寄越せよぉ!!』
「黙れ」
憮然としたまま、翔が弾を入れ替える。
埒が明かないと思ったのか、チャンスだと思ったのか、襲撃者達が姿を現した。その全員が灰色の迷彩を施したマスクと上着、ズボンとブーツ姿で、手にはピースメーカーを握っていた。 【デビランドトゥギャザー】(2/2)
『クカッ、クカッ、クカカカカカッ!! 複製品でも、これだけ集まると壮観だぁ!!』
「黙れ」
翔の持つ銃こそがオリジナルの“妖銃”。コルト・シングル・アクション・アーミー“ピースメーカー”。
それ故に彼は狙われる。
正義や道徳の為では無い。翔も、結局はこの妖銃に魅入られた一人でしかないのだから……
タン!
スウェイバックで銃弾を避ける。火の点いた煙草から紫煙が流れた。
タタタタタタタタタタ!
一斉に狙われた翔は横っ飛びでその場から逃げると、給油機の陰に飛び込み、反撃を試みる。
シリンダーが回転する度、命が一つ失われる。
動揺も広がるが、それ以上に狂信者はピースメ−カーの性能に歓喜し、あたかも殉教者の如く命を差し出す。
身を伏せて走りながら排莢し、弾を詰め直しては反撃をする。
ひりつく感情が頭の中を支配し、翔は意図せずに笑みを浮かべていた。
その姿は、あたかも銃の悪魔が彼に乗り移っているかの様だった。
******
最後の死体をガソリンスタンドに放り込み、ガソリンを辺りにぶちまける。
愛車のキーを回すと、アクセルを吹かし、窓から煙草を弾いた。
爆炎を背にしながらそこから飛び出した翔愛車は、炎に煽られチリチリと音を発していた。
ふと、フロントガラスに雨粒が落ちる。
目の前には黒々とした雨雲が横たわっていた。 >>425
使用お題:『逆上がり』『女装』『悪魔』
【因果応報】(1/2)
「さぁ、三千四百円! 三千四百円より上は居ない?」
女生徒の声に一同が顔を見合わせる。ザワザワと言うざわめきこそあれ、それ以上をコールする者は誰もいなかった。
「よし! じゃあ、生徒会長、泉堂 美和子の私服写真はあんたの物だ!!」
「よっしゃあぁ!!」
告げられた男子が、ガッツポーズを作る。
だが次の瞬間、それが落胆へと変わり、その逆にギャラリーからは、歓声が上がった。
「じゃぁ次は、同じく泉堂 美和子の逆上がりシーンの写真だ!!」
資金を使い果たし、絶望する男子生徒を見下ろしながら、女生徒……美濃 永夏は悪魔の笑みを浮かべた。
******
学園裏オークションは、何時もの如くの大盛況をおさめていた。
特に目玉商品だった生徒会長の逆上がり写真は、一万二百円と言う高値が付き、永夏としてもホクホク顔であった。
「しっかし、馬鹿よねぇ。こんな写真に大枚叩くなんて」
ピラピラと、プリントアウトされた写真を弄ぶ。逆上がりシーンとは言え、この学校の体操着は普通の化繊素材であり、特に透けると言う訳でも無ければ、膝丈のハーフパンツの為、永夏から見ても色気のある格好とは思えない。
強いて言えば伸縮する素材の為、普段よりスタイルが多少強調される位か。
「馬鹿ばっかりよね」
写真の会長と自身の小学生にしか見えない身体を見比べて、若干、平淡な声でそう呟いた。
写真部の部室に戻り、PCを立ち上げる。
「おっ、来てる来てる! 飯の種が!!」
永夏の見ているのは写真のリクエストメール。このメールのリクエスト上位の人間を(無許可で)撮影しておけば、オークションで高値が付く写真撮れると言う寸法な訳だ。
「……会長が一番人気は変わらずか……ん?」
メールを開き、集計をしてゆく。その中で、一つ引っ掛かる注文があった。
「放課後の美少女……ね」
毎回必ず1通は来る注文メール。放課後に現れる謎の美少女。
この学校の制服を着ていて、時には同校の生徒と会話している所を目撃されている事も有り、学校関係者である事は間違いないらしい。
だが、放課後以外でその目撃情報は皆無と言う謎の美少女だった。
リクエストの数こそ多くは無い事も有って後回しにはして来たが、永夏自身、そう言った謎は大好物でもある為、いつかは調べようと思っていた相手である。
「良し!! ちょっと調べてみますか!!」 【因果応報】(2/2)
******
「くっ、悪魔め!!」
「いえいえ、わたしは真実の探求者ってだけですよ? でもなぁ、他の人がこの写真を見た時どう思うかはねぇ……」
永夏がピラピラと写真を弄ぶ。今、永夏の目の前に居るのは、謎の美少女と会話をしていたと言う目撃情報にあった女生徒だった。
目の端に涙を浮かべながら悔しそうに彼女を睨んでいる。
だが、女生徒に交渉の余地など無い。すでに陥落寸前と言った彼女の様子に、永夏はニヤリと悪魔の笑みを浮かべた。
******
カラカラと一人の生徒が今は使われていない教室の扉を開ける。
「いないんですか?」
そう声を出した瞬間、パシャリとシャッター音が鳴った。
「!!」
「おー!! 半信半疑だったけど、彼女の話は本当だったんだ!! えっと、1−D、西王子 武流くん?」
目の前の女子生徒の格好をした男の子を見ながら、永夏はパチパチと手を叩いた。
そう言われた男子生徒……武流は何の表情も見せず、永夏をじっと見つめる。
「流石に着慣れてるって所かな? 女装趣味って言うの? わたしには分からないけど、確かに言われなきゃ、男子生徒だって気が付かないかな?」
件の女生徒から手に入れた情報、それは、今年入ったある生徒の話だった。元々その女生徒は武流の姉と友達であり、彼との面識も有った。
だからこそ、姉の制服を着てウイッグを被り化粧をした彼の事にも気が付いたのであるが、しかし、どうしてもと頼み込まれ、駅前の喫茶店のパンケーキで、黙っている事にしたらしい。
普段、武流は空手部に所属しており、新人の中でも期待の星と呼ばれる実力者でもあった。
そんな彼の秘密の趣味が女装して放課後の学校をうろつき回る事だと知られれば、彼の学校生活は滅茶苦茶になってしまうだろう。
(クククッ、良い弱みが握れたわ!! これを盾にすれば、ちょっと過激目の写真だって撮れるかも知れない!!)
その写真がオークションでどれだけの高値が付くか……そんな皮算用をして永夏が厭らしい笑みを浮かべる。
「なに、別に君を取って食おうって訳じゃないわ? ちょっとお願いを聞いてくれれば、悪い様には……」
「ぐへっ」
「え?」
いつの間にか俯いていた武流が後ろ手に何かをしている。
カチャリ……
「ちょ、あんた何を……」
「やっと来てくれましたね」
「は?」
「こうやって、僕の秘密を見せれば、必ず食いついて来ると思ったんです」
その言葉に永夏の背筋に悪寒が奔った。
「毎回、リクエストメールを送っていた甲斐がありました!!」
「!!」
「さぁ!! 僕の愛を受け取ってください!!」
「二ギャ―――――!!!!」
******
その後、半裸の小学生が転がる様に校内を逃げ回っていたと言う目撃情報が有ったとか無かったとか。 >>464
見よ、短編スレが燃えている〜、460氏の一日・全お題チャレンジング記録に464氏が続くぞ、お題クルージングツアー前半に、『逆上がり』『音楽』『同性愛』で挑む、禁断魔恋のマウスピース!
さあ、物語は神社付近の公園で、『音楽』活動に励む二人を描く〜、
友人の帰宅遅らす由真さん、日が暮れるまで続く遅滞行動、ほの見えるのはハイ出た百合だw 嫉妬の炎ォ!
近くにあった鉄棒に、ぶら下がっては『逆上がり』、スカートまくれてあの子の太もも(最高だな)、情欲混じる『同性愛』〜
満ちる想いはマウスピースに握り締め、ただただ飲み込む無念に変えて、夕焼け小焼けでまた明日〜! 464氏がどれ、まずは手慣らしだと3個お題を消化し、スレ住民に人気の吹奏楽部・片思い系百合ものを復刻して見せた、想いを伏せる淫靡END〜
>>467
速攻、速攻! クルージングツアー後半、奮闘は実るか〜、選択は『雨』『悪魔』『ガソリンスタンド』、デモニック・ガンマン・ショー!
舞台はアメリカ〜、休憩所と給油機しかない寂れた『ガソリンスタンド』で、いざ死闘が幕開けるー
『悪魔』に憑かれた呪われし銃、45口径6連発リボルバーことピースメーカ〜、血気盛んなる喋る銃が、死の匂いに唾を飛ばすぜw
さあデスゲームの始まりだ〜、飛び交う薬きょう、血だまり銃音、死体にガソリンぶっかけて、証拠隠滅・大爆破ァ! アクション満載、先行き真っ暗物語はラスト、467氏が爆炎バックに片手を上げたァ、立ち込める黒き『雨』雲描き、しめてお題6個をハードに全クリア〜
ご機嫌なダンスは終わらねえ! 死を欲する銃に魅入られた、背徳のガンマンはどこまで生きる、短編スレに弾丸を降らせ、暴力が暴力を呼んだフルクリアENDだ・乙乙!! >>469
これ連続か? 選択は、『逆上がり』『女装』『悪魔』、駈けろ暴虐のフォトグラファ〜
主人公はオークションでバイヤーとなった小判鮫系女子の永夏さん、『逆上がり』した女生徒の写真を、『悪魔』の笑顔で叩き売りィ〜、でも画像エロくないのが憎めないw
ゼニ勘定しか頭にない彼女が目をつけるのは、顧客からのリクエストメール〜、ターゲットは…放課後しか現れない、レアっ子!?
さあ教室に追い詰めたレア女子は、しかしど変態によるトラップだァw タイトルと残ったお題で垣間見せたぞ『女装』オチ〜
ラスト、追う側が、追われる側へと追い込まれ、長追い無益の逃亡劇へと変貌か〜、弱みを盾にの算段も、半裸にさせられエロ応報〜ほのぼのニギャーENDだ、うん好き! 感想有難うございます
実は書き出した順は469、467、464だったりします
469は最後まで百合オチにするかどうかで悩んでいたのですが、唐突に降ってきた464を書いた事で女装オチへ
ただ、それだけでは弱いと感じたので、あんな感じにw
467に関しては、兎に角何かハードな感じのお話を書きたかったので……
何気にアクション物が多いですよね、自分
その割には途中ですっ飛ばす事も多いと言うorz 使用お題:『雨』『女装』『同性愛』
【俺の親友】(1/3)
下駄箱まで近づくと、雨の音が一際大きく聞こえてくる。
同級生たちが傘を開いて友人たちと喋りながら帰宅していく。
俺はどうしようかと少し途方に暮れた。
「傘忘れちゃったの?」
後ろからハスキーボイスがする。
振り返ると、見た目は可憐な女子生徒がからかうように俺を見ている。
「お前は?」
「持ってきてるよん。一緒に帰ろっか」
そいつは俺と腕を組んで歩こうとした。俺も特に抵抗しない。
左手に開いた傘を持って、右手に俺を持って雨の中を歩く。
「まるで恋人同士だね?」
「そうかい」
歩く途中で、いくつかの生徒が俺たちのことを意味ありげに見る。おそらくこいつと同じクラスの人間だろう。俺はそいつらを無視した。
道路にたまった水たまりをトラックが勢いよく跳ね飛ばして去っていく。
俺はこいつを車道側にしたままにするべきか少し迷ったが、まあいいかと思い直した。
傘に二人は少し狭いらしく、俺とこいつの肩が少し濡れてしまう。
「君は昔っから天気予報を確認しないよね」
道中クスクスと笑いながら、こいつは俺をからかってくる。
「ガサツって言いたいんだろ」
「いやいや、そのおおらかさも君のいいところさ。それにこうして僕が傘を持ってくれば問題はないしね」
「お前にいつも借りるのは嫌だな」
「どうしてさ? 僕は君に頼られて嬉しいのにな」
俺に絡みつく腕の力が少し強くなる。 【俺の親友】(2/3)
俺は少しため息を吐いた。
「お前は俺にべったりだな」
「当たり前だろ。だって僕は君のことが好きなんだから」
「友達として?」
「恋しい人として」
「男として?」
「……さあね」
俺がそう言うと、こいつは黙って俯いた。それでも俺の手を放そうとしない。
こいつはいつもそうなのだ。
本当はとても緊張していても顔に出さない。とんでもなく突飛なことをしでかすが、内心おっかなびっくりでいる。自分の行動のせいで自分が傷ついてもやっていることをやめようとしない。
こいつが女装してきた日はとても驚いた。前から中性的な顔つきだと思っていたが、一見してまるで男に見えなかった。奴は俺に微笑みかけた。
それは俺に告白してきた数日後のことだった。告白してきた日、奴は俺に自分の想いをぶちまけて、付き合ってほしいと懇願してきたのだ。
俺は戸惑って、断った。どうして、と聞くので、お前は男で、俺も男だろうと言った。すると、思いつめたように黙り込んで、俺の顔を見ずに走って帰っていった。俺はただそれを見送ったんだ。
「お前、クラスの人間に馬鹿にされているだろ。いい加減、その恰好をやめたらどうなんだ」
俺がやめろと言ってもこいつは止めようとしない。
「でも、君は女の子じゃないと振り向いてくれいないんだろ?」
「お前は男だ。それで俺の友達だ。それじゃあ駄目なのか?」
「……僕は君のことが好きなんだ」
「知ってるよ」
「友達じゃ、やだよ」
「そうかい」
俺が嘆息すると、こいつは震えた声を張り上げた。
「……なら、僕を突き放せばいいだろ。こうして僕が抱き着くのを、ちゃんと拒めばいいだろ!」
「そうしたらお前は俺と会話をしなくなる。俺はそれが嫌だ」
「……」
俺の言葉を聞いて、俯きながら、鼻をすすりだした。こいつの持っている傘が揺れて時々俺の半身に雨が豪快にかかる。
「傘、俺が持とうか」
「ごめんね……君まで同じに思われるよね……ごめんね……」
「でも、やめる気はないんだな?」
「ごめんなさい……」
「俺に嫌われてまでやりたいんだな」
「……君が嫌だっていうなら、僕は君に近づかないようにするよ」 【俺の親友】(3/3)
そういいながら、こいつはぶるぶると震えている。
どうしようもなく頑固な奴だ。本当にしょうがない奴だ。しょうがない、しょうがないなあ。
俺は泣いてるこいつの顔に自分の顔を近づけた。いい匂いがするのが腹立つ。
数秒後、顔を真っ赤にしたこいつが、傘を放り投げて、後ずさりながら俺を見開いた眼で見る。
「な、え、な、あえぁ、ぅえ?」
「傘を投げるな。いや、こんだけ濡れたらもうどうでもいいな」
「今、今今今、ええええ、え?」
口をパクパクとさせて言葉にならない音を漏らし続けるこいつを放って、俺はさっさと帰ることにした。
「あ、待って、ねえ、待ってよ!」
後ろから声がかかるが、俺は待たない。
とりあえずボロが出るまでは続けよう。
この先どういう結末になるかはわからないが、無難なところに落ち着けたらいい。
なんにしたって、こいつの無茶を受け止めるのはいつも俺の役目なのだ。俺はこいつの親友なのだから。
俺はちょっと振り返って、傘を拾うのも忘れて慌てて走ってくる奴を待った。 >>474
性別を越えた純粋な恋心
男の価値は惚れられる事ではなく、惚れ抜くことだそうです
頑張って!! 今回もいろんな短編が揃ったなぁ・・・よー思い付くわ
ばあさんや、次のお題はまだかのぉ? お題『逆上がり』『雨』『女装』『音楽』『悪魔』『同性愛』『ガソリンスタンドI』締め切り
【参加作品一覧】(1/2)
>>436【悪魔の音楽会】
>>444【メイドリフレ『とろい』】
>>448【無題】
>>451【都市伝説「雨女」】 【参加作品一覧】(2/2)
>>460【キックオーバー】
>>461【雨の日の出会い】
>>464【ゆうやけこやけ】
>>467【デビランドトゥギャザー】
>>469【因果応報】
>>474【俺の親友】 ☆お題→『怪盗』『バタフライエフェクト』『昔話』『ガーターベルト』『メイド』『誰かが雄叫びをあげる』『悩み』より三つを選択
※二つ以下、四つ以上は不可
☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。
もちろん文字数が少なくても分割OK
☆締め切り→6/3の22時まで
☆平行して投票を行います(試験運転)→安価もしくはタイトルで一人一票までレスしてください。締切5/30の22時
【見逃し防止のため、このレスに安価してください。】 >>474
前回お題『雨』『女装』『同性愛』を選んできた力作、ザ・トランスミッション!
さあ、学校帰りに一際大きくなる『雨』を見て、親友が傘下の提供、申し出る〜、彼は見た目可憐な女子学生、って感じのカムアウト済み『女装』デフォw
主人公が告白蹴ったそのあとで、女装してきた親友が、友達じゃやだよと言いつつかなりの攻勢〜
そのくせ身を引く準備は万端〜、なるほど『同性愛』なる親友のあくまで控え目なポジションは、十分に自己否定してきた過去をも思わせる、さぁお題を消化し臨むはラスト〜
主人公は考える、拒絶、葛藤、恋慕、友情〜、自分にとって肝心なものって何なのか!? 考えても考えても、判断できる訳はない〜、しかし嘘いつわりないピュアな求めに、何やってんだ俺とキス与え、半分成り行き、性の境を超えてファイティングポーズEND! >>489
>>469【因果応報】 に一票。理由は・・・ごめん、なんだろ? なんとなく? >>489
>>436に一票
人×人外百合タマリマセンワ^〜 ???がどれなのか凄い気になる・・・自分のだと嬉しいけどw タイトルオチですorz
>>489
使用お題:『怪盗』『バタフライエフェクト』『悩み』
【怪盗バタフライエフェクトの悩み 1】
「えぇ? この間考えたトリック、このマンガと丸被りじゃん……」
******
【怪盗バタフライエフェクトの悩み 2】
「予告状、配達ミスって、マジで?」
******
【怪盗バタフライエフェクトの悩み 3】
「うわっ、そろそろ行かないと予告時間に間に合わな……あ! マントクリーニングに出したんだった……」
******
【怪盗バタフライエフェクトの悩み 4】
「さて、こいつの服をいただいて変装を……えー、水虫って……えー……」
******
【怪盗バタフライエフェクトの悩み 5】
「ふふ、お宝はいただき……!! ……誰だよ! 国宝に落書きとか、うぁ……マジ有り得ねぇ」
******
【怪盗バタフライエフェクトの悩み 6】
「さて、隠しておいたお宝を回収して………………おおぅ、犬のマーキングが……」
******
【怪盗バタフライエフェクトの悩み 7】
「…………贈賄容疑で逮捕って……売却価値がほぼゼロに下がりやがったぁ……ぁぁ……」 >>498
お題選択は『怪盗』『バタフライエフェクト』『悩み』、怪盗とカオス理論を学ぼうin短編スレ〜
蝶の羽ばたきが竜巻となるがごとく、初期値が時間経過とともに大きなインパクトを生む、ゆえにバタフライ効果!
かの有名映画『バタフライエフェクト』は、過去遡り能力を持った主人公が過去時点に影響与えて未来変えんとするループもの〜
『悩み』に悩む『怪盗』バタフライエフェクトの業績は、丸被りするトリック、配達ミスの予告状、服を盗めば水虫だあw それでも徐々に進む計画は、過去で修正繰り返すバタフライエフェクト映画版のオマージュか〜
ラスト、7回目で奪取成功も、お宝自体の価値がなくなる無意味オチ〜、これもう違うことに能力使った方が楽だろw 宣言お題を消化した物語が視野狭窄に陥った怪盗を描き、盗まれてるのは貴方の心ですENDで決めたァ〜 感想有難うございます
夜中に目が覚め、唐突に書きたく成って勢いだけで 書きました
後悔はしていませんw >>489 勢いで書いたせいで読みづらいかも、ごめん
使用したお題:『昔話』『誰かが雄たけびをあげる』『悩み』
【前編】
その昔、奇病が流行っていた。
その病気にかかるとあら不思議、体調は一切変化しないのだけど、驚くほど短期間で体中の水分が抜け落ち、干からびて死んでしまうという病気だった。病死までのその時間、なんとわずか丸一日。とてつもなく強力な伝染病であるといえよう。
しかもどうやらその病気は感染力が強いらしく、ものすごい速度で病気が広がってしまう。体液感染はもちろん、接触しただけでも病気が移る。しかも感染源が死亡した際に死体から溢れる謎の粉末は、風に乗って遠くの里まで届いてしまうという悪質さだった。
パンデミックという言葉がないほど昔の話だったが、その奇病が全国に知れ渡ると同時に人々は恐怖に怯え、日々警戒を続けていた。
ただ、その病気を治すことは実は簡単だった。長年謎とされてきたが、なんとその病気、とてつもなく水に弱いのだそうだ。
どういう原理かは不明だが、全身が水に浸かっているとその部分だけ干からびることはなくなるのだ。そして体が冷やされ続け体温が一定以下であると、病原体が死んでしまうらしい。
また、これまたどうしてそうなるのかわからないが、病気に罹患した患者は、水中で活動ができるようになるそうだ。水の中でも窒息することなく、息が続くらしい。
なのでこの病気の対処方法がわかった日を境に、この奇病に恐怖していた人々は、水の中で自由に遊べる楽しい病気へと変化したそうだ。
この奇病はそのため「人魚病」と呼ばれるようになり、特に漁師や遊びたい盛りの子供たちに喜ばれるようになったのだ。歴史的に壮大な手のひら返しである。
ただ、病気は所詮病気でしかなかった。そのことを歴史が語っている。
水中での活動ができることを知った人々は、人魚病を利用しはじめたのだ。人間以外の動物にわざと罹患させ、病死するまで放置し、死んだ際に出てくる粉末を集め始めたのだ。
水中で呼吸ができるようになる薬として安価で売られるようになった人魚病はなかなかの人気を博し、たくさんの人々が手に入れていった。遊び目的、探検目的、水中工事に使う人もいれば、水の中に落とし物をしたときにさくっと服用する者まで出た。
ただ、この薬の使用はすぐに禁じられることとなった。死傷者が多数出たのである。
まるで遊びで人魚病を利用していた人々を罰するかのように、薬を服用した瞬間体が干からびる人が続出したのである。本来なら死亡まで1日は猶予があったのに、おかしい話である。
しかし考えてみれば当たり前の話で、病原体が水によって死亡するといっても、100%全てではない。ほんのわずか、1%にも満たない僅かな生き残りが体内に残り、それが積もり積もっていけば病死になる結果は目に見えている。
そんなことがわかり、統治者の号令によってすべての人魚病の薬は摘発され、処分された。事業に投資したばかりで取りやめにされた商人たちは阿鼻叫喚の体を催したが、誰も同情なんてしなかった。
ほんのわずかな商品だけが闇市場に残されたという噂はあるものの、治療方法まで確立された人魚病は完全に根絶し、気づけば誰も人魚病にかからない平和な世界が訪れたのである。
……ただ、商人の一人が人魚病の商品を隠そうとして、新しい発見をしてしまっていた。
どうやら人魚病は、罹患者が水の中に長時間いると自然に死滅する、というわけではないらしいことに気づいたのだ。
水中に長時間いた人体は冷え切っている。その体を急激に温めようと、体温が急上昇した瞬間に正確には死ぬらしい。ウィルスをやっつけようと人体が熱を上げるのと同じ理由である。
そのため、変温動物は人魚病にかかっても暖かい昼間になると勝手に治り、水中に住んでいる魚等はそもそも罹患しても発症しないことになる。
昔の人が生食を避けて焼いたり煮たりしていたのも、この人魚病対策の名残だったと思われる。
え、どうしてその商人はこの事実に気づいたんだって?
人魚病を詰めた商品の箱を隠そうと悩み、うっかり一つ開封してしまい、慌てて病気を治そうと水の中に潜ったときにそのことを察したのだ。海辺に転がっている干からびた亀の死骸から……。
……と、ここまでが話の一区切り、前編です。この話は次の昔話へと続きます。
日本人なら誰もが知る、有名な物語へ……。
むかーしむかし、あるところに浦島太郎という若者がいました。
彼が浜辺を歩いていると、村の子供たちが一匹の亀をいじめていました……。 発想はある程度評価できるけど、謎の粉末という発想は必要ないし蛇足。
かかった人間の肉の粉末、とすれば十分だからだ。
それ以外にも表現に難のある箇所多数で、下手に書き慣れて直す癖が付いていないのは問題。
話のスケールも小さい。それはお題のせいだから仕方がないが。
あ、ここは評価するスレじゃなかったか
中々良く出来ていると思ったけど強いて言えば難点もあるかな 謎の粉末設定は玉手箱に繋げてるつもりだけど、無理あったか。まあわかりづらいからなぁ
正直自分でも駄作だと思うから、あんまりいじめんといて;x; >>502
本当はSFな昔話w
果たしてそのウィルスは、地上由来の物だったのでしょうか?
もしかしたら竜宮城からの……? >>502
お題『昔話』『誰かが雄たけびをあげる』『悩み』を選んで語る、死病研究インザシー!
病が世を騒がせるぞ〜、伝染すれば体が干されるパンデミック、しかし全身が水に浸かっていると回避可能で、なんと水中呼吸が可能になるw
割と便利だねってヒット商品に躍り出た奇病粉、つってもノーリスクじゃないわけで、死傷者続出・販売停止で阿鼻叫喚(『誰かが雄たけびをあげる』)〜
さあ、アングラ商人が粉を隠そうと『悩み』、動かした際にとある法則を発見!? 変温動物は罹患しない、水中生活者に優しく陸上生活者は脱水させる…
そう、これは話全体が『昔話』浦島太郎・玉手箱のからくり解説でしたオチw お題『昔話』をオチに活かした物語が、浦島時代に時遡り、華麗なお題消化とそーだったのかENDを決めたァ! 「なぜ浦島太郎が戻ってきたら人がいなくなっていたか」とか「亀をいじめていた子供たちは実は正義だった」とか「竜宮城はなんだったのか」とかそういうところも気付いてほしかったけど、自分の書き方がわかりづらくて悪いんだよね・・・
もっと文章が上手くなりたい・・・orz 亀をいじめるというのと亀からウイルスが移ったら死ぬから殺すというのは違うからやはり無理がある
でもこういうことを思いつくのは凄いと思うよ 小説書こうとしたけどなんか俺のもボロクソ言われそうだからやっぱやめとくか… お題に即したお互いのアイディアを見て楽しむのが本義だから、文章の批評とかはそこまで気にしなくてもええんやで?
むしろ文章の形式を度外視した面白作品とかのが自分は好み。初代スレの「おや、字が疾走した」とかw >>489
使用お題:『ガーターベルト』『メイド』『誰かが雄叫びをあげる』
【思春期地球防衛機デッカイザー】(1/3)
「グッガアアァァッ!!」
改造巨獣の攻撃を受けて、白銀の巨体がよろめく。
パイロットの道明寺 クライはフットペダルを操作し、何とか転倒するのを防いだ。
『何やってんの!? クライ! 動きが鈍いわよ!!』
「わぁってるよ!! そんな事!!」
姉でありオペレーターの道明寺 クウの言葉に、クライが噛みつく。
動きが鈍い、そんな事は白銀の巨人、デッカイザーのパイロットたるクライが一番分かって居る。
だが……
チラッ。
「!! ……グウッ!」
避けるつもりだった攻撃を喰らってしまい、その忌々しさに舌打ちをしたくなった。
恐るべき心理攻撃だった。精神の一瞬の隙を突き、本能に直撃する。
だが、その一瞬の隙はこの戦いの中では致命的な隙であった。デッカイザーの耐久力が無くては、ここまで耐える事は出来なかっただろう。
「負けて、たまるかよおおぉぉぉ!!」
最初はただ、カッコイイから……そんな単純な理由でデッカイザーに乗っていた。だが今は、自分の両肩に人類の未来が掛かっている事を十分に理解していた。 【思春期地球防衛機デッカイザー】(2/3)
******
改造巨獣……それは宇宙帝国インベイドの先兵であり、攻略兵器である。かの帝国の目的は人類の支配ではない。
地球と言う資源そのものなのだ。
改造巨獣は、その為に送り込まれ、資源を搾取する為にあらゆる手段を使う。
地球の都市を壊滅させるなど、その手段の一つに過ぎないのである。
クライが、デッカイザーが負ければ、地球は蹂躙され、搾取され尽すだろう。それが分かって居るから、クライは負ける事が許されなかった。それでも……
チラッ。
「ぐっ!」
辛うじて攻撃を避ける。攻撃が来ると分かって居ても、避ける事が困難だった。
いや、決して鋭い攻撃と言う訳では無い。いつもの戦いで有れば余裕をもって、それこそ反撃すら可能なスピードでしかないだろう。
問題はデッカイザー……いや、クライの方にあった。
改造巨獣が身を翻し、その太い尻尾で攻撃を仕掛ける。
チラッ。
「ぐっ!」
辛うじてジャンプして避け、反撃しようと試みる。だが、改造巨獣は縦回転で回転すると、蹴りを浴びせて来た。
チラッ。
「ぐうっ!」
『何やってるの! それ以上のダメージは、デッカイザーでも持たないわよ!!』
「だから、わぁってるっての!! 集中力が切れる!! 通信、切るぞ!!」
『ちょ、ま……』
クライが乱暴に通信を切る。正直な所、彼の精神はそれだけ追い詰められていた。
モニターに映る改造巨獣を凝視する。その姿はある意味なじみ深い。
そしてある意味ファンタジーの極致と言って良い姿をしていた。
つまり……
「メイド型宇宙巨獣って何だああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
改造巨獣は改造された巨獣である。つまりは元となった巨獣……宇宙巨獣が存在するのだ。
今回の改造巨獣の元となったのはメイド型宇宙巨獣“ヴィクトリラ”。
インベイド帝国は、そのヴィクトリラを捕獲し、改造巨獣としていたのだ……魔改造方面へ……
従来であれば足首まで覆われているロングスカートは膝上……いや、寧ろ股下ギリギリまで短くされ、ズロースだった物がストッキングへ変更された上、ご丁寧にガーターベルトで留められている。
そしてエプロンドレスの胸元は大きく開き、その双丘を強調するかの様にデザインし直されていた。
しかし、怪獣は怪獣である。人とかけ離れた獣じみた容姿は普通であれば受け入れられるものではない。
だが、その体付きは、まるでアニメの世界から抜け出したかの様なボンッ! キュッ! ボンッ! であり、思春期真っただ中のクライには刺激が強すぎた。
その巨乳が動く度、スカートの裾が翻る度、見てはいけないと言う思いと、でもちょっと位ならと言う本能がせめぎ合い、それが決定的な隙となっているのである。
「クソッ! なんて精神攻撃だ!! オレは……オレはどうしたらいいんだあ!!!!」 【思春期地球防衛機デッカイザー】(3/3)
******
「クライ、通信を切りました!!」
「ぬう!! 若さゆえの経験不足がここで浮き彫りになったか……」
デッカイザーの支援組織である“シールド”、その長たる長官、金剛院 大彌は苦悶の表情でそう呟いた。だが、本格的な戦闘状態と成っている区域に現行兵器を向かわせたとしても、改造巨獣にはほぼ歯が立たない上、下手をすればクライの足枷となってしまうだろう。
それ故に、彼を信頼し、任せる以外の手段が取れないのも事実だった。
だが、どうみても状況はこちらが不利で、パイロットのクライも不調の様に見えた。
「我らには、何も出来んのか……」
ギリリと、奥歯を噛み締める。
「ふっ、こんな事も有ろうかと、デッカイザーには遠隔操縦装置をつけてある」
「!! 博士!!」
デッカイザーの設計者であるジーニアス博士だ。
「遠隔操縦装置では細かい操縦は無理でも、光学兵器の発射位ならコントロールできるじゃろう」
「成程、ここぞと言うタイミングでそれを使えば、クライの手助けができると言う事ですな!!」
博士はニヤリと笑うとパチンッと指を鳴らした。それと同時に大彌の席に、拳銃のトリガーを思わせる装置がせり出す。
大彌がそのグリップを握る。モニター上では改造巨獣とデッカイザーが死闘を繰り広げていた。
******
様々な計器がレッドゾーンを指している。クライはそれでも必死に態勢を立て直そうともがいていた。
「ぐうっ」
攻撃が掠り、ショルダーアーマーが吹き飛ぶ。ついにデッカイザーが片膝をつく。
ギリリと、歯を食いしばるクライだったが、彼もデッカイザーが限界だと言う事は気が付いて居た。
もう動けないと読んだのだろう。改造巨獣がゆっくりと近づき、そして止めとばかりに足を振り上げ……
「あ、見え……」
ボシュッッ!! カッッ!!!!!!
閃光が煌き、視界を覆いつくす。デッカイザーの必殺技“エンブレムインフェルノ”が発動したのだ。
「……!!」
呆然と目を見開くクライ。閃光が消え去った時、そこに改造巨獣の姿は既に無かった。
******
「ちょ、クライ! ドアを開けなさい!!」
クウがクライの部屋の扉を叩く。あの戦闘の後、クライは何故か部屋に引き込もってしまったのだ。
「自身の不甲斐なさを悔いているのだろう。そうっとしておきなさい」
「長官……」
******
その数日後、少しやつれたクライが妙に晴れ晴れとした表情で部屋から出て来た。
だが、その彼のPCに、“Kemona”と言うフォルダーが増えていた事は、本人以外、誰にも分からない事だった。 >>512
> かの帝国の目的は人類の支配ではない。
> 地球と言う資源そのものなのだ。
これは変だね。
人類を支配し、奴隷として使役することのみに留まらない。
地球に存在する土を資源として用いることが第一の目的なのだ。
もし彼らが地球を支配すれば、地球は海の惑星になるであろう。
こういうのならまだわかる。
でも、普通なら
地球人の奴隷としての価値>>>>>>地球にある資源の価値
だと思う。
考察が足りない。構想力も。 >>512
クライの方は生身で戦えるの?
凄いスーツを着てるとか、身体を鍛えまくってる(でも普通は死ぬけど)とか、説明が必要だな。
何か超自然的な力があるならそれでもいいからさ。
それこそゲームとアニメの見すぎでそこに違和感を覚えなくなってるんだろうけど、
そこを掘り下げるから面白いんじゃないか。これじゃ肝心の面白さを全部捨ててる。 感想有難うございます
力不足の言い訳に成りますが、想定していた主題としては
地球の危機にも関わらず、目先の欲望に抗えない思春期思想をコメディ的に書いたものなので、それ以外は最低限の情報以外オミットしています
ですが、連載等をするのであれば、その辺を掘り下げるのも面白いですねw まともな感想書けなくてごめんだけど、なんか読んでたら良いネタ思い付いた
ありがとう! >>511
お題『ガーターベルト』『メイド』『誰かが雄叫びをあげる』に挑戦だ、デッカイザーライドオン!
さあ、現れるは正義のメカ・デッカイザー〜、目の前では「グッガアアァァッ!!」と『雄叫びをあげる』、宇宙帝国インベイドの先兵、改造巨獣が吼えるぜ〜
しかし人類の未来を背負って戦う、パイロット・クライさんが防戦一方、なにごと〜、問題は敵のデザインだ、獣の容姿に『ガーターベルト』装着の、『メイド』型巨獣によるパンチラ悩殺ww
長官「若さゆえの経験不足がここで浮き彫りになったか……」←何の経験なのか、苦境を見たバックヤードが遠隔操作で光学兵器を発射し、改造巨獣はケシ飛んだァ! 倒すの簡単じゃねえか
最大の敵は己の若さか、それとも潜在した性癖か〜、511氏の大作が予想外のお題消化で、ケモナー趣味に目覚めちゃったオチを経由し、痛恨のアニマル・ラブEND!w >>520
感想、いつも有難うございます
どうしてもスーパーロボツトが書きたくてこうなりましたw 使用お題:『ガーターベルト』『メイド』『悩み』
【くノ一ボタンの色々な冒険】(1/3)
ギャグボールを噛まされ、ボタンは必死で逃げようともがいた。目の前には4人の男女。ボタンの使命はその内3人の監視であり、もう一人の……サムライ風の少女については、まったく前情報に入って居なかった為、不意を突かれこうして囚われの身となってしまったのだ。
そんな、ウーウーと呻き声を上げるボタンを見下ろしながら、監視対象である少年、タカシが目頭を揉んでいる。
実の事を言えば、この少年に対する本当の指令は暗殺。だが先日、ボタンの里の腕利きの若い衆が襲撃を掛けたにも拘わらず、その全てを返り討ちにして彼らはここに居るのである。
重傷ではあるが、誰一人命を失った者が居なかった若い衆を見て、驚愕と共にボタンは(!! ……流石は、勇者です!)と、そう思った。
勇者……魔王と対を成す存在。魔王を倒し、人類を平和へと導く存在とされている勇者ではあるが、ここ魔王国では、その評価は真逆となる。
「殲滅者」「一騎当千」「一人戦略兵器」「性獣勇者」ets……様々な異名がそれを表している。
当たり前だろう。日々国民が増える魔王国において、彼等が自身の領域を冒されない様に領土を拡張しようと決断した魔王に弓引く者なのだ。
だが、同時にある種の尊敬を集めているのも確かである。なぜなら、魔王国において強き者と言うのは、それだけで崇敬の対象と成るからだ。
そう言う意味で、魔王が弱ければ勇者に討たれたとしても仕方ない……そう言った空気があるのも確かである。
繁殖力の強い魔物種を擁する魔王軍は、産めや増やせやの心意気で、その圧倒的物量によって王国を侵略していた。
だが、ここ最近はそれが滞っているらしく、王国軍との戦線は一進一退の様相を呈している。
実はタカシのパーティーがあちこちで殲滅作戦を行った事で、魔王軍に大量の離反者が出たのが原因なのだが、そこは流石に表沙汰には成っていなかった。
王国の国王は、ここが勝機とばかりに一騎当千たるタカシのパーティーを遊撃として、魔王との直接対決を依頼。
だが、そこは流石だと言って良いだろう。タカシの行動を察知した魔王は、強力な魔物を魔王城の周辺に配置し、早々に守りを固めたのである。
本来であれば、その上で兵を差し向けたかったのだろうが、今、戦線は膠着状態であり、これ以上兵を裂く訳には行かない。
だからこそ、タカシ暗殺をボタンの里……カゲロウに依頼して来たのだろう。
しかし……
魔王直接の依頼を失敗したとなればカゲロウの名は地に落ちる事と成る。
そうなれば、他の暗殺組織に舐められ、蹂躙され平らげられる可能性だってある。それ故に里の首領は、先日の襲撃も「相手の力を図る目的だった」と言う事にする為、監視を付ける事にしたのだ。
その白羽の矢が立ったのがボタン。隠形の腕を買われての事ではあるが、女好きであると言う勇者に、万が一見つかった場合の事を考えての選出でもあった。
瞳からハイライトの消えたボタンは、同行者……監視役の監視の二人と共に、タカシ監視の任務に就く事と成ったのだった。 【くノ一ボタンの色々な冒険】(2/3)
******
魔王討伐の為、王国に召喚された少年、勇者タカシはどうした物かと頭を悩ませていた。
彼の眼前には、犬耳少女を組伏せている美少女がいる。
名はハルナ。自称剣客、実質ストーカー。
彼女は『誉めて誉めて』と言わんばかりに瞳を輝かせ、ストーキング先のタカシを熱い眼差しで見ていた。
チラリと自らのパーティーメンバーを見ると、普段であれば聖女の異名に相応しい温かな笑みを浮かべているアリサが、極寒地獄の鬼もかくやと言った表情で件のハルナを見下ろし、
その正体は大海魔、しかして今は褐色幼女のクラーケンが、今一理解していない様子で眺めている。
いったいどこで身に付けた技術なのか、見事な亀甲縛りでハルナに拘束された犬耳少女は、憐れみを誘わんばかりの涙目で彼を見上げていた。
ハルナと同じ様な間違った和装のその少女は、タカシの認識において、誤解を恐れずに表現するなら“くノ一”の様に見える。
ただし、「忍ぶつもりないだろう? お前等」と言いたくなる様な大輪の花柄で萌黄色の上着に、ボディースーツの様な鎖帷子状のアンダーウェア。
その上、網タイツをガーターベルトで留め、鼻緒状の意匠がくっついているだけのハイヒールブーツと言う、どう見てもエロゲのキャラクターですありがとうございます。と言う格好なのだ。
辛うじて頭に巻いた忍者のアイコンたる鉢金も、側頭から生えている犬耳がコスプレっぽさを助長していた。
「何してくれるかなぁ」
「え?」
褒められるとばかり思っていたハルナの表情が驚愕に代わる。実の事を言えば、タカシは監視に気が付いて居た。
おそらく、先日の襲撃で壊滅的打撃を受けた暗殺集団が、再び襲撃の準備が整うまでタカシの動向を窺おうとしているのだと思ったからだ。
気配を探れば、犬耳少女と共にいた、もう二つの気配は既にいない。
この事を報告しに行ったのだろう。
「厄介な事してくれるよなぁ……本当に……」
「え? え? どう言う……」
「もうこのストーカーは埋めてしまっても構いませんよね? よね?」
「うえぇ!」
「さすごしゅ?」
「うえええぇぇぇぇ!!」
監視がバレたのなら、今度こそ死に物狂いで依頼を達成して来ようとするだろう。こう言った闇組織は面子を大切にするからだ。
「もうこうなったら覚悟を決めるしかないか……」
「さすごしゅ!」
溜息を一つ吐くと、タカシはぐるりと首を回した。 【くノ一ボタンの色々な冒険】(2/3)
******
魔王討伐の為、王国に召喚された少年、勇者タカシはどうした物かと頭を悩ませていた。
彼の眼前には、犬耳少女を組伏せている美少女がいる。
名はハルナ。自称剣客、実質ストーカー。
彼女は『誉めて誉めて』と言わんばかりに瞳を輝かせ、ストーキング先のタカシを熱い眼差しで見ていた。
チラリと自らのパーティーメンバーを見ると、普段であれば聖女の異名に相応しい温かな笑みを浮かべているアリサが、極寒地獄の鬼もかくやと言った表情で件のハルナを見下ろし、
その正体は大海魔、しかして今は褐色幼女のクラーケンが、今一理解していない様子で眺めている。
いったいどこで身に付けた技術なのか、見事な亀甲縛りでハルナに拘束された犬耳少女は、憐れみを誘わんばかりの涙目で彼を見上げていた。
ハルナと同じ様な間違った和装のその少女は、タカシの認識において、誤解を恐れずに表現するなら“くノ一”の様に見える。
ただし、「忍ぶつもりないだろう? お前等」と言いたくなる様な大輪の花柄で萌黄色の上着に、ボディースーツの様な鎖帷子状のアンダーウェア。
その上、網タイツをガーターベルトで留め、鼻緒状の意匠がくっついているだけのハイヒールブーツと言う、どう見てもエロゲのキャラクターですありがとうございます。と言う格好なのだ。
辛うじて頭に巻いた忍者のアイコンたる鉢金も、側頭から生えている犬耳がコスプレっぽさを助長していた。
「何してくれるかなぁ」
「え?」
褒められるとばかり思っていたハルナの表情が驚愕に代わる。実の事を言えば、タカシは監視に気が付いて居た。
おそらく、先日の襲撃で壊滅的打撃を受けた暗殺集団が、再び襲撃の準備が整うまでタカシの動向を窺おうとしているのだと思ったからだ。
気配を探れば、犬耳少女と共にいた、もう二つの気配は既にいない。
この事を報告しに行ったのだろう。
「厄介な事してくれるよなぁ……本当に……」
「え? え? どう言う……」
「もうこのストーカーは埋めてしまっても構いませんよね? よね?」
「うえぇ!」
「さすごしゅ?」
「うえええぇぇぇぇ!!」
監視がバレたのなら、今度こそ死に物狂いで依頼を達成して来ようとするだろう。こう言った闇組織は面子を大切にするからだ。
「もうこうなったら覚悟を決めるしかないか……」
「さすごしゅ!」
溜息を一つ吐くと、タカシはぐるりと首を回した。 【くノ一ボタンの色々な冒険】(3/3)
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身の丈2mはあろうクマの獣人が崩れ落ちる。その顔面には深さ1cm程の溝が一直線に付いていた。信じられない事だが、それは剣の跡であった……鞘を付けたままの。
地面を見れば、クマ獣人の得物であった金剛杖が寸刻みの状態で落ちている。状況から察するに、これをやった犯人も同一人物だろう。
「王国の勇者はバケモノか……」
「バケモノだから暗殺を依頼したんだろう? 魔王も思ったよりは常識人だよな」
暗殺獣人集団の首領の首に剣を突き付けながら、犯人……タカシはそう言った。
完膚なきまで……それを体現するかの様な惨状である。精鋭の実働部隊を欠いた組織では、タカシに対抗するなど力不足過ぎたのだ。
暗殺獣人集団“カゲロウ”は一夜にして壊滅したのである。
もはや廃墟と言って良いカゲロウの里の瓦礫を踏み越え、アリサがやって来る。
「タカシ様、治療は完了しました。獣人の中に死者は居ません」
「そうか、それは良かった……さてと、首領さん?」
「ひい!!」
怯えた首領の様子にどうやら心まで折る事が出来た様だとタカシがニヤリと笑う。
「オレに敵対する事がどう言うことか分かったのなら、お願い、聞いてくれるよね?」
満面の笑みを浮かべるタカシに、元首領となった男はコクコクと頷く事しか出来なかった。
******
「諜報活動と暗殺阻止の為ですか?」
「さすごしゅ?」
「うん、そう」
茶屋風の店で団子を食べながらタカシがそう言う。現在、魔王軍と王国軍は一進一退。ほぼ互角の戦いを繰り広げている。となると魔王国と言えどタカシ達に兵を差し向けるのは厳しいだろう。
そうなれば、同じ様な暗殺者を差し向けて来る事は想像に難くなかった。
「だからその為にも、彼等にはスカウト兼カウンターメジャーをやって貰おうかとね」
「はぁ、成程、魔王国で情報を集めるのは、人族では厳しいですからねぇ」
アリサが頬に手を添え溜息を吐く。実際、魔王国に多く居る獣人の方が、人族であるタカシ達より情報収集には向いてるだろう。
「……で? “コレ”は何でしょう?」
「さすごしゅ?」
「……カゲロウ改め“オボロ”からの繋ぎ要員……かな?」
気温を低くするアリサから目線を外し、タカシがそう言った。
現在、お茶を喫する彼らの後ろでは、一人の犬耳少女が侍っていた……メイド姿で。
タカシの言う通りオボロとの繋ぎ要員なのは事は確かであろう。
しかしそれと同時に、タカシの機嫌を取る為の人身御供である事も事実だった。
その事を理解しているからか、瞳のハイライトの消えた犬耳少女ことボタンは、力なく笑いながら「よろしくお願いしますです」と、呟く様に言った。
「あー、うん、こちらこそ首領達との連絡の時はよろしく」
******
その頃ハルナは……
「竹が! 竹がお腹に食い込んで!! ちょ、思ったより竹の成長が早い!! タカシ殿ぉぉ!! ヘルプ! ヘルプミー!!!」
竹林にす巻きにされ縛られていた。 おおおお……
何故か(2/3)が二重投稿されてしまいました
どんな操作間違いが合ったのやらorz 作者サンの好きな属性欲張りセットな感じですねぇ
だがクラーケンちゃんが活躍せずに終わってしまったぞ!どういうことだ!
……次の方が居なそうなんで、投稿させていただきます。
テーマは『バタフライエフェクト』『昔話』『悩み』 【クレインエフェクト】
ある寒い冬の日。雪の原に羽ばたく小さな翼を見た。近づいてみると、一羽の鶴が罠に足を捕られてもがいている。
「おお、おお、かわいそうに」
罠を外してやろうと手を伸ばすと、鶴は羽ばたき抗おうとする。けれどすぐに力なく伏せてしまう。
「食うたりはせんから、そんな目をするな、ちび助」
これでは餌も食えなかったろうによく生きていたものだ。いや、きっとこのめぐり合わせも運命なのだろう。この年になってようやく、鶴に恩返しができるとはな。
「帰ったぞ」
「まぁまぁ、今度は何を拾ってきたのですか……」
さすがに鶴を抱えて帰るとは思わなかったのか、ひどく驚いた顔が出迎えてくれた。これはキツネの子を拾ってきたとき以来だな。
「……犬が続いていましたから、よもや三匹目はと予感がありましたが」
「怪我をしとるんだ、手当をしてやりたい。あぁ、三郎と四郎は近づけんでくれよ。怖がらせてしまう」
足元にじゃれつく二匹をまたぎ、鶴を抱いたまま火のそばへ。
「なんでまた、拾ってきたんです」
薬草を刻む背中が問うてくる。
「毎度のことだ。弱っとるやつは獣であろうと助けてやらねばな。特に鶴には思い入れがある」
そう、鶴を助けるのは二度目だ。 【クレインエフェクト2】
あの日も雪が降り、よく冷えた。年老いた父母が病に倒れあっけなく死んじまって。どうしようもなく弱っていたときだ。その日を生きるのに必死で嫁のきてもない孤独な身。せめて孫の顔を見せてやりたかった。
やるせなさを抱えたまま、どこへ行くでもなくうろついていたら白羽が舞うのを見つけたのだ。
大きく美しい鶴が雪原に縫い留められていた。まだ元気があるらしく懸命にもがいていて、それは舞のようだった。こんなに立派に育ったのに、こいつはこのまま一人寂しく死んでしまうのかと哀れに思えた。
「群れの仲間はおらんのか。見捨てられたか。運のないやつだ」
舞いを止めてこちらをじっと見てくる。
「諦めたのか? 助けてほしいのか?」
あれほど激しく暴れていたのが嘘のように、屈んだおれの背中をおとなしく見つめているようだ。
「おれが来なかったら、おまえはどうなったんだろうなぁ」
自力で抜け出すことができただろうか。別の誰かが助けただろうか。
自由を得たそいつは、一鳴きしてどこかへ飛び去っていった。
「その晩だ。おまえがここへ来たのは」
鶴は落ち着いたのか、あぐらをかいた上でそのまま眠ってしまった。
「鶴を助けたから、手頃な娘が転がりこんできたって?」
「はじめはな、天女でも迷い込んできたのかと思った。おまけに行く宛もないから置いてくださいときたら、いよいよ狐に化かされてるか、くたばって死に際の夢でも見ているのかと」
そのいたずらめいた微笑みは、ちっとも変わっとらんな。
「だが、飯の炊き方すら知らん女がいると、一人よりも苦労が増えるとは思わなんだ」
「……すぐにうまくなったでしょう?」
「夢でも物の怪でもないと信じるに足る時間だったな」
消して覗くなと言って、おれを奥に閉じ込めて一人で練習していたな。
「そういうあなたも、なかなか一緒になろうと言ってくださらなかったではありませんか」
どこぞのお貴族様の娘が家出でもしたのかと思った。いつか迎えが来ていなくなってしまうのかと悩んでいたんだ。
「家を任せられるまではと決めていたんだ」
「いくじなし」 【クレインエフェクト3】
久しぶりに遅くまで話し込んだ気がする。
「……なぁ。何か言いたいことがあるんじゃないか」
とうとう言ってしまった。帰ってきてから様子がおかしい。楽しい思い出話なのに、どうしてそんなに思いつめたような顔をする。
「……ずっと、悩んでいました。あなたは私と一緒になって良かったのかと」
何を馬鹿なことを。
「子どもが欲しかったのでしょう? けれど私はそれを叶えられなかった」
それは……おれの体が悪かったのかもしれない。おまえだけが気に病むことじゃない。それに、お前が来てくれただけでおれは――
「でもね、あのとき私は確かに見たのです。火を囲む若夫婦と、孫を抱いた老婆の姿を」
何の話だ。
「暖かな家に暖かな人たち。私もこの人たちの家族になれたらと願いました。この人こそがと」
一体何の話をしている。
「その鶴は明日の昼には元気になり飛び立っていきます。怪我は痛かったし寒くてお腹も減っていたけれど、諦めが早かっただけで何日も捕まっていた訳ではないから」
「ここを出たあとはね、遠くへは行きません。いつでもあなたが見えるところに住み着いて、生きて、あなたを見守って、あなたがいなくなってもずっと、生きて生きて、あなたに恩を返したくて――」
ふいに立ち上がり奥へ歩きだす。
「――千年生きます。執念深き物の怪になって、あなたに会いにいきます。あの人と出会う前のあなたに」
嗚咽混じりの声は、薄い戸には遮られない。
「きっと人と鶴じゃあ子どもなんてできないんですよ。あなたの人生は私が歪めてしまったの。だけど、だからこそ冬が来るたび祈りました。変わってしまったのなら、どうかあの日が来ませんようにと。あなたが私を見つけないでと」
「けれど今日がきてしまった。ならば私は罪を償うことができるはず。私が今日、羽ばたかなければ、あなたの人生はもとに戻るはず。自分ではできないから、最後に一つだけお願いを聞いて」
明日の朝までこの部屋からは出ません。それまでに鶴を殺してください。決してそちらを覗きませんから。
◆
◆
◆
いつの間にか眠ってしまったようだ。窓の外を見やると、もう日が高くなっている。
日が、たか…く…
「おい、ちび助......飯だぞ」 >>489 今回少ないな。自分は二つ目だけどね!!(ドヤ顔
使用お題:『昔話』『悩み』『誰かが雄叫びをあげる』
【前編、その2】(1/3)
むかしむかし、あるところに、それはそれは美しい女性がいました。
その女性は見目麗しいだけでなく、心も美しく、たいそう人に好かれておりました。誰にでも優しく、両親を大事にし、四季や草木を嫋やかに愛で、本土から少し離れた小島の村で穏やかに過ごしておりました。
そんな彼女のことを、百人一首の心情豊かな様子に準えて、人々は『百(もも)姫様』と尊敬を敬愛をもって呼び親しんでおりました。
ただ、百姫様はあまりにお優しすぎたがために、少々婚期を逃しそうなのが悩みものでした。
いえいえ、男性からの求婚はとても多かったのですよ? 平民からだけでなく、豪商や貴族のものからもそういう打診が幾度となくありました。
しかし、百姫様は首を縦に振りませんでした。それはというと、彼女はあまり体の強くなかったご両親のことを殊更愛しており、家族三人での生活を何よりも大事にされていたからだったのでした。
……まあ、行き遅れになりそうだったことで当のご両親は気が気ではなかったらしいですけどね。
それはそれとして、百姫様の幸せな生活が続いておりましたが、ある日を境にその日々は終わりを告げました。都に疫病が流行ったのです。
その大病にかかった者は長く、長く苦しんで死んでしまいます。治療法はないではなかったのですが、薬代にとてもお金がかかるのです。
なのでほとんどの人は脂汗を流しながら苦しみ続け、そのまま死んでしまいました。
また、疫病で家畜や野菜がやられた結果、重大な飢饉まで発生してしまいました。病気にかからなかった者も食料がないせいで、どんどん痩せ細っていきました。
僻地の村落は特に被害が酷く、人が屍肉を食らう姿も見られたそうです。まさに現世に現れた地獄でありました。
百姫様のお家も無事ではすみませんでした。
それなりに大きな家ではありましたが、日々の生活のために資産を食い潰していくハメになり、やがて明日の食事にも困る有様になってしまいました。
そして悲しいことに、百姫様のご両親が病気にかかってしまい、その治療のために薬を買わねばならなくなったのです。そのせいで余計に首が回らなくなり、百姫様はとてもご苦労されたようです。
優しいご両親は「私たちに薬なんていらないから、お前だけでも幸せになってくれ」と寝床で脂汗を流しながら笑顔で頼みました。
が、同じく優しい百姫様が彼らを見捨てるはずもなく……そうして、彼女は最も辛いご決断をされました。
百姫様は、とある金持ちとの結婚を了承したのでございます。
その金持ちは、金だけは有り余るほど持っていましたが、それ以外は全て捨ててきたのではないかというほど酷い男でした。
性格は最悪、見た目は醜悪、人望もなければ魅力もない。そんな男でした。
その金持ちは百姫様にこう言ったのです。「ワシがお前を買ってやる。その金で、両親を救えばいいのではないか?」と。
そして百姫様は……その悪魔の提案に乗ってしまったのです。
こうして……百姫様の地獄が始まりました。
金持ちにとって百姫様は妻などではなく、ただの姿形の良い人形、いえ、奴隷でありました。
なので夜遊び朝帰り程度は当たり前、食事や掃除が少しでも気に食わなければ無抵抗の百姫様を殴り飛ばします。
女を買って帰るのなんて日常茶飯事で、その片付けを仮にも妻である百姫様にやらせます。また庭師にトラをけしかけて楽しんだり、百姫様がよくしていた野良猫の首を首飾りにつけて送ったりと非道なことをします。
人非人という言葉でも足りないくらい、それは鬼畜の所業でした。
しかし、百姫様はその全てに耐えました。それもすべて、ご両親の治療のため。
どうしても辛さに耐えかねたときは、百姫様は病床につくご両親の下へと向かいます。
そうして辛い自分の境遇を押し隠して他愛無い話をする百姫様に、ご両親もまた病気の苦しさを隠して「もう少しだよ、もう少しだけの辛抱だよ。ごめんね……」と謝ります。
外も地獄、中も地獄な人々の生活の中、百姫様も苦しみながら金持ちの妻として必死に生きてきました
が、ある日その生活に大きな変化が訪れました。子を、宿したのです。 ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています