安価・お題で短編小説を書こう!3
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安価お題で短編を書くスレです。
■お題について
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■前スレ
安価・お題で短編小説を書こう!
http://mevius.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1508249417/
安価・お題で短編小説を書こう!2
http://mevius.2ch.net/test/read.cgi/bookall/1511408862/ 【前編、その2】(3/3)
「……なんだ、ようやく気付いたのか」
百姫様が背後を振り返ると、そこには金持ちの男が立っていました。
驚いて腰を抜かしている百姫様と、壊れたはっかけのように同じ言葉を繰り返す両親の生首を見て、金持ちの男はそれはそれは愉快そうに笑いました。
そして金持ちの男は、全ての答えを教えてくれました。
「ワシは、実は鬼に連なる系譜のものでな。今は人間に化けておるが、本来は誇り高き鬼人の豪族なのだ」
百姫様は問いました。あなたが両親をこんな目に?
「ああそうだ。妖の術でそういう風にした。だが別に良いだろう? お前もこっそりその親の生首に話しかけて慰めにしていたようだしな。お前が嫁いできたときにはすでに死んでいたんだ、むしろ長く両親と話せて良かったじゃないか」
百姫様は問いました。知っていて、こんな酷い目に?
「先程も言っただろう? 死んでいたとはいえ、両親と長く接することができたのは事実だ。それにお前を手に入れるために疫病をばら撒いたり人心を惑わしたり手間をかけたんだ。簡単に壊れてしまっては大損してしまうからな」
百姫様は問いました。なぜ私を?
「人と鬼との間にできた子は尋常ではない力を宿すのだ。ワシの命令に従うワシの兵隊がほしかったから、人間どもを困らせてから金で大量に女を買ったのだ。その中でもお前は特別だ。妖怪の中の占い師のような者が言っていたが、お前が孕んだ鬼の子は最強の力をもつらしい。
単に力が強いだけでなく、動物と意思を交わし、決して死なない神通力も持ち合わせるそうだ。だからお前を手に入れるのを一番の目的として、こんな茶番をやったのだ」
百姫様は問いました。人の世を惑わすこの悲劇の全てが、茶番?
「そうだ、ただの茶番だ。まったく煩わしい。人間なぞ鬼の供物としてただ食われていればいいものを。まあここは離島、おかげで時間はかかったが確実にワシの兵隊を増やすことができた。すでに鬼と人との間の子は幾人か生まれておる。
お前の生んだ子を筆頭の護衛とし、ワシの最強の軍隊を作ってやる。そうしたら、フフフ、人の世をすべて支配するのも容易いだろうよ」
百姫様は問いました。すべて、私の、せい?
「その通りだ」
百姫様は金持ち、いいえ、鬼の見下した目を見ました。そして首だけになった両親と、外の阿鼻叫喚の地獄絵図と、自らのお腹の中の子を見ました。
百姫様は、覚悟を決めました。
「おい、どこへ行く? どこへ行ったところで今のお前には何もできないぞ。産気づくまで大人しくしてろ」
百姫様は引き留める鬼を一瞥し、大きなお腹を抱えて走り出しました。さすがに鬼も慌てます。
「おい、おい! どこへ行く!? おい、待て!」
異変に気付き慌てて負う鬼と、逃げる百姫様。
大きなお腹の妊婦と怪力の鬼とでは走る速度など段違いでしたが、住まう小島はもともと狭く、そして駆け出しが早く土地勘のある百姫様の方が目的地に着くのが早かったのでした。
百姫様は崖の上で鬼に大声で怒鳴りました。
「お前の思い通りになるくらいなら、いっそ死んでやる!!」
「よせ!!」
百姫様は鬼の手を逃れ、崖から飛び降りました。
最後に感じたのはお腹の中の赤ん坊が元気よく蹴った感触と、畜生と叫ぶ鬼の雄叫びと、冷たく硬い水の感触と、自らの首が折れる音でした。
こうして、百姫様は、死んでしまいました。
しかし百姫様の覚悟も空しく、最強の小鬼が作れなかったことを鬼はあっさり諦め、「ならば数を増やそう」と小島に鬼を増やし続けました。
ああ、めでたくなし、めでたくなし。
……と、ここまでが話の一区切り、前編です。この話は次の昔話へと続きます。
日本人なら誰もが知る、あの有名な物語へ……。
むかーしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんが住んでいました。
おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に向かうと、川上からどんぶらこーどんぶらこーと、それはそれは大きな……
もも >>522
さあメンテ終了〜、522氏の使用お題は『ガーターベルト』『メイド』『悩み』! 続、ハーレムパーティの旅路!
あらためて紹介しよう〜、短編スレ初期より生まれた、勇者タカシの俺ツエーシリーズは、最強勇者とお供女子で進むハーレムパーティ冒険譚だ〜
書き出し、どうした物かと頭『悩』ます勇者の目前には、ギャグボールを噛む犬系クノイチ・ボタンさんの姿〜、花柄の上着をまとい、網タイツを『ガーターベルト』で留める、半分エロゲの暗殺者w
魔物も怯える勇者らの圧倒的な膂力を前に、彼女の里は速攻陥落、生贄ライクな『メイド』姿にさせられパーティ加入! 一方パーティに入り込もうと手柄を狙うハルナ女史が竹林にヘルプ響かす、簀巻きオチww
スレ民にやいのやいの言われつつ安定感あるシリーズが、今更だけど522氏お題6個消化おめって感じで、台風一過・乙乙ENDだ〜〜 >>527
感想有難うございます
クラーケンは裏方として、襲撃を返り打ちにしたり、里を壊滅させたり、ハルナをふんじばったりしていますw
>>528
閉じた未来に風穴を開けるための選択
愛しすぎた故の悲劇ですね
悲しいお話です
>>531
本当は猟奇的なお伽噺
桃太郎が鬼を討ったのは、義の為か私怨か?
それとも百姫様の執念なのか? >>528
力作続く、528氏が『バタフライエフェクト』『昔話』『悩み』を選択だ、give back!
かの名作、『昔話』、鶴の恩返しをモチーフに、528氏が語り始める〜
さあ、鶴を助けて帰宅した夫が、二人のなれそめ思い出す〜、妻がいつ消えるかと不安を感じる夫の『悩み』、そして、これで良かったのかと自問する妻の『悩み』〜、隠された過去いま明かされる〜
時空を超えた妻の思念が、話の骨格ほのめかし、過去への輪廻を繰り返す化生の鶴が現れる〜、感謝の鶴の憧憬は、いつしか恩人の生奪い、ねじれる後悔、自責の念! 物語の裏側は、間違いが起こした『バタフライエフェクト』だー
お題を消化した物語はラスト、自死を乞う妻の告白に応える、夫の回答、これは、彼女と再ループ、いやループ終焉か?! 今ここにある幸福を、今さら壊すが恐ろしい、タイムパラドックスがお題消化と哀しさ満点ENDを決めたァ! >>534
いつも感想を有難うございます
果たして、このパーティーは魔王を倒せるのか?
まぁ、魔王と言ってもアレな訳ですがw >>531
531氏の選択は、『昔話』『悩み』『誰かが雄叫びをあげる』、ザ・鬼退治・バックナンバー!!
さあ、物語が幕を開け、主役は婚期を逃しそうなのが『悩み』のヒロイン、百(もも)姫だ〜、飢饉、疫病、不遜な金持ちとの結婚〜、
追い込まれる姫様に両親がかける、もう少しの辛抱だと噛み合わぬ答え、ええっ布団の下には…「壺から、ご両親の首がにょっきり生えています」←怖すぎてワロタ
鬼の子宿した悲運の姫が身を投げて、鬼の雄たけびコダマして(『誰かが雄叫びをあげる』)、めでたくなし、めでたくなしと、531氏の饒舌が語る語る〜! ラスト、徹底的に救いのない物語がもたらした一縷の望みは…海の中の遺児ィ!?
531氏が桃太郎の出生を丁寧な筆で書き下ろし、『昔話』オチを再演だ! 見事だぜ、鬼が島の秘密、桃太郎の生誕、ストーリーの謎を解明しつつ、元の物語を百姫の思いが彩る重層化、バックナンバー・接続ENDで技巧を魅せたァ! 浦島太郎、桃太郎ときて、次の昔話が何がいいか思いつかない・・・
3つくらい書きたかったけど、今回は2つで諦めて次のお題を待つか 使用お題:『怪盗』『バタフライエフェクト』『昔話』
【神算鬼謀】(1/2)
地中海もほど近い小国アルアーナ。この日、この国は国民の歓喜の声で沸いていた。
圧政を敷いていた将軍、カルカリッツ・エイプマンが捕えられ、失われたと思われていた王家の正当な姫が、女王として即位したからだ。
即位式のパレードは国民の笑顔で迎えられ、新王女ベアトリス・アルアーナもそれに笑顔で応える。
しかし、その王女の視線が誰かを探している事に気が付く者は、その中には居なかった。
******
「……何時から、計画していた?」
「……やあ、探偵殿、貴方がこんな所に足を運ぶなんて珍しいね」
街を一望できるカフェテラスで、一人の紳士然とした男が紅茶を嗜んでいた。
ジャケットとスリムボトム、緩くネクタイを締めた男……探偵、歯車 鉄雄は、その紳士の目の前に座る。
「色々調べさせてもらったよ、軍部の動き、将軍の隠し財産……そして、15年前のクーデターの真相……」
鉄雄の言葉に紳士が「クックック」と笑う。
「随分と仕事熱心だね? いや? 好奇心に忠実……と言った所なのかな? 将軍の依頼を蹴ったと言うのに、Nihonnzinnは、本当に勤勉だ」
「受ける訳はないだろ? 自滅に付き合うなど御免だよ」
一頻り笑ったのか、紳士は肘を机につくと両手を組む。
「少し、昔話をしようか」
「何?」
「昔々、ある所に小さな小さな国があった。その国の王は無能で、小心者。常に家臣の顔色を窺って、国民に圧政を敷いていた。」
「……それで、将軍を焚き付けたのか?」
鉄雄の言葉に、紳士はニヤリと笑みを浮かべる。 【神算鬼謀】(2/2)
「当時、まだ30代だった将軍は、野心に溢れていたさ、『自分ならもっと上手くかじ取りが出来る』とね」
「だが、実際は同じ様に圧政を敷き、こうして引き摺り下ろされている」
「人間だれしも、自分の姿は良く見えないものだよ? あぁ、探偵殿、貴方は違うようだがね」
「そっくりお返ししよう、怪盗紳士。僕は君以上に怪盗らしい怪盗を知らない」
探偵の頼んだ珈琲が届き、二人は無言でそれぞれの飲み物を喫った。
「幼い、少女が居た」
「うん?」
「利発で聡明、そして心優しい少女だった……」
「……成程、その為か」
「……」
紳士は応えず、探偵は続ける。
「新王女がクーデター時に匿われていたのは、公爵家に連なる市井の夫婦だったそうだね?」
「そう聞いている」
「しかし僕の調べでは、あの公爵に親類縁者などいない……巧妙に隠されていたけどね」
「それは、不思議な事だね」
紳士が肩を竦める。
「タイミングが良すぎるとは思わないか? 将軍の醜聞が明るみに出るタイミングにしろ、王女が発見されるタイミングにしろ……」
「そうかな? 歴史が動く時は一気に動き出す物だろう?」
探偵……鉄雄の目が細められる。
「将軍の隠し財産、その内、美術品数点が今も行方不明だそうだ」
「……管理が杜撰だったんだろうね? 肥えた豚は、自らの厩舎を掃除などしないものだ」
紳士が会計を頼み、席を立つ。
「お前は、何処まで見通している?」
「さぁ、私に判るのは、人の欲望だけだよ」
鉄雄が椅子に座り直し、珈琲を口にする。
「姫さんからの伝言だ『ジョアン叔父さんによろしく』とさ」
「……彼女は、良い女王に成るよ」 お題『怪盗』『バタフライエフェクト』『昔話』『ガーターベルト』『メイド』『誰かが雄叫びをあげる』『悩み』締め切り
【参加作品一覧】
>>498【怪盗バタフライエフェクトの悩み】1〜7
>>502【前編】
>>511【思春期地球防衛機デッカイザー】
>>522【くノ一ボタンの色々な冒険】
>>528【クレインエフェクト】
>>531【前編、その2】
>>540【神算鬼謀】 前回の投票忘れてました。ごめんなさい。
『逆上がり』『雨』『女装』『音楽』『悪魔』『同性愛』『ガソリンスタンドI』
【得票数一覧】
>>469【因果応報】一票
>>436【悪魔の音楽会】一票
>>451【都市伝説「雨女」】一票 えーとでは七つお題
>>546-552
この形式でもう結構経つけど、飽きてきたりあるのかな…… ☆お題→『水着』『イケメン』『年の差』『パニック』『遺伝』『電車』『北欧神話』より三つを選択
※二つ以下、四つ以上は不可
☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。
もちろん文字数が少なくても分割OK
☆締め切り→6/10の22時まで
☆平行して投票を行います(試験運転)→安価もしくはタイトルで一人一票までレスしてください。締切6/6の22時
【見逃し防止のため、このレスに安価してください。】 >>541
前回お題の最終日、541氏が駆けつけ一杯『怪盗』『バタフライエフェクト』『昔話』を選択だ、ザ・フィクサー!
おー懐かしいな! 前スレ年越し総力戦より再来だ、歯車探偵シリーズは、探偵・歯車 鉄雄と世を騒がす怪盗紳士の交流描く、物語〜
さあ女王即位が描かれて、場面は転じ街を一望するカフェテラス〜、男の前に探偵座り、少し『昔話』をしようかと、愚帝の末路と将軍失脚、語られる〜
歴史のフィクサー『怪盗』紳士、その八面六臂に何処まで見通していると、鉄雄さんが『バタフライエフェクト』能力を予感する〜(まさか正体>>498じゃないだろなw
お題を消化しラスト、ヤツがやったと知っている〜、新王女も知っている〜、冷たく醒めた仮面の下で、誰より熱きを滾らせる、その名も義盗・怪盗紳士! 男らが内心熱きを認め合い、こいつァまるで短編スレだと、ニヤリ微笑むフィニッシュだッ >>554
感想有難うございます
最初は、怪盗バタフライエフェクトにしようかと思ったのですが、キャラが違うかな? とw >>553
使用お題:『水着』『パニック』『電車』
【気が付けば終着駅】
「くああぁ〜……」
大きな欠伸を一つする。夜更かしをし過ぎたせいで眠いが、ゲームを止められなかった自分の自業自得なので文句も言えない。
正直、会社になど行きたくは無いが、日々の生活を行う為には稼がなければならないので、俺は仕方なしにいつもの電車に乗った。
快速でも急行でも準急でも無く各停に。座れるからと言う理由だけでそれに乗っているのだが、朝から疲れたくないのだから仕方ない。
最寄り駅から2駅目が乗換駅の為、結構な人が乗って来る。
俺は、それを座ったままぼんやりと見ていた。
スイマーが居た。水中眼鏡とブーメランパンツの水着姿の……
俺はあまりの事に思わず目を逸らした。
周囲を伺うが、気が付いていないのか、回りの人間がパニックを起こす様子はない。
本当に? こんな狭い車内でこれだけ人がいて、俺以外気が付いていない等あり得るのか?
もしかしたら自分以外の人間には見えていないのか?
だとしたら、こいつは何なんだ?
ガタン、と電車が揺れる。
俺はゴクリと唾を飲み込み、視線を上げた。
いる。
見間違いじゃなかった。
何故、誰も見向きをしないんだ?
本当に……俺にしか見えていないのか?
いや、違う。回りの人間は確かに避けている。ほぼ満員といって良い電車の中だ、アレに当たらないようにするには、避けるしかない。
だったら、何故?
ガタン、と、電車が揺れた。
目が……合った? いや、気のせいだ、相変わらずアイツはそこに……
「!!」
真正面から顔を覗き込まれ……いつ、動いた?
顔を挟み込む様に押さえられる。視線が逸らせない。
水中眼鏡の中の目と俺の目が…………
いや、無い何もない。
水中眼鏡の中には何もない。
俺は……
スイマーがニヤリと笑った。 >>557
お題『水着』『パニック』『電車』を選択して新たな怪談を創生するぜ、ブーメラン・パンツ・メーン!!
さあ、夜更かしし過ぎた語り手が、『電車』内で各停のんびり、大あくび〜、乗換駅の乗客まぎれ、姿を見せるはブーメランパンツの『水着』の男ォ!?
なぜか『パニック』起こさぬ乗客に、いぶかしみつつ、男と目が合い〜、ラスト! 誰もが視線を逸らすスイマーに、気付かれ・魅入られ・終着点!
先の透けたゴーグルは、人ならざるモノの証だぜ〜、見てはならん、見てはならんと、しかしそう言われるほど気にはかかるが人のサガw
知らぬ存ぜぬ通せぬ者を、餌食にかけるスイ魔ー登場って感じで、557氏が熱帯夜を涼感もたらす都市伝説をキメたァ! 感想を有難うございます
まぁ、駄洒落ネタなのですがw >>553
>>528【クレインエフェクト】 に一票。短編でよーループ物書けたなぁと感心したから
今回天啓が降りてこないなぁ・・・なにか、なにかないか >>553
>>498【怪盗バタフライエフェクトの悩み】に一票。 いや、思い付いたは思い付いたんだけど、無難すぎて書く気がしなくてな・・・
インパクト強いのじゃないと書く気が起きないマンなので許して >>553
使用お題:『イケメン』『遺伝』『北欧神話』
【アースガルドシンフォニー】(1/2)
『俺に首輪をはめられるのはお前だけだ』
「キャ―――――――!!」
「救流兎、ちょっと騒がしい」
餓狼 焔里にそう言われ、トリップしかかっていた乃流 救流兎は周囲を見回し頬を赤らめる。幸い、コーヒーチェーン店の店内は盛況で、彼女の方に注目している者はほとんどいなかった。
「……良くゲームにそれだけ入れ込めるよね? アタシには分からないなぁ」
「エンリちゃんの意地悪! だってカッコイイんだよ? 乙女の憧れなんだよ?」
「…………まずそれが分かんない」
救流兎が手に持っていた携帯ゲームの画面を焔里の顔面に押し付ける様に前に出す。画面には救流兎イチオシのイケメンキャラクターが映っていた。
携帯ゲーム「アースガルドシンフォニー」は、北欧神話の登場人物達の遺伝子を受け継ぐキャラクター
を育てて、アイドルを目指しながら恋愛すると言う乙女ゲーである。
乙女ゲーである為、その登場人物は全てイケメンで、その中からアイドルとして5人のキャラクターを選び、それを育てる訳なのだが、その中の一人、フェンリルの遺伝子を受け継ぐキャラクター“フェンリル”が彼女の推しメンらしい。
「フェンリルは、孤高の一匹オオカミだけど少し寂しがり屋で、毒舌屋さんだけど、本当は優しいんだから!!」
「あ、うん」
「一匹狼なのにアイドルグループなんだ」等の突っ込み所が気になったが、目がグルグルと渦巻いている様な救流兎の迫力に負け、焔里は口を噤む。
こうなってしまうと、親友が止まらなくなるのはいつもの事だからだ。
「とにかく!! カッコイイんだよ? キュンキュンするんだよ!! 分からないかなぁ? エンリちゃんもやってみなよ、はまるよ? と・く・に! フェンリルルートは絶対おすすめなんだからぁ!!」
「……アタシは良いかな?」
「エ――――!! なんでぇ―――!!」
******
「……無理だって、本当……」
大きな溜息を吐きながら、それでも焔里は腕を振るった。眼前に居た蛇の特徴を持った異形の者は、彼女から出る鋭い爪を形作るオーラを受け消滅する。
「おー、お疲れさん! いやぁ、フェンリルは今日もカッコ可愛いねぇ」
「……」
「って、ちょ!!」
そう言って近づいて来た男に向かい、焔里は無言で腕を振るう。
ピシリと固まった男の背後にいた異形の者が、そのひと振りで消滅した。
「油断し過ぎ、そんなんだから、アタシに食われて終わったんだよアンタ」
「あ、あー、でも、可愛い娘に食べられるなら本望かな? オジサン的に」
焔里が目を細める、青白いオーラが立ち上がると、オオカミの様なシルエットを形作る。
「茶化しすぎですよ? オーディン。それでなくとも彼女、真面目なんです」
「おー!! トール! そっちも終わったかな?」
「はい、滞りなく」
月光の降り注ぐビルの屋上に、音も無く舞い降りたトールは、その場で大槌を振り回しながらそう言う。
そうこうして居る内に、異形の敵、ニッズホッグを倒し終えた仲間達が一人、また一人と集まって来る。 【アースガルドシンフォニー】(2/2)
「やっぱり無理」
焔里は眉間に皴を寄せながらそう呟いた。北欧神話の神々、その遺伝子を現在に覚醒させた者。それが彼女達、エインヘリアルであった。
携帯乙女ゲーム「アースガルドシンフォニー」に出るキャラクター達は、全て彼女達をモデルとしている。ただし、全員がイケメンとして。
それ故に、モデルにされた元の人達を知る焔里としては、そのゲームで仮にとは言え恋愛云々をする事に忌諱感があった。
ましてや救流兎のイチオシのキャラクター、フェンリルのモデルは自分なのだ。それでプレイなど軽く羞恥死できるだろう。
「はーいはいはい、皆、お疲れ〜」
「ロキか……」
手を振りながら、角笛を持った少女を傍らに現れたのはロキ。今のエインヘリアル代表にして、携帯ゲーム、アースガルドシンフォニーを作った会社の社長でもある……つまりは諸悪の根源だ。
「さて、この辺のニッズホッグは粗方かたずいたよね? ヘイムダル」
そう訊ねられ、ヘイムダルと呼ばれた少女はコクリと頷いた。
「はーい、それじゃぁ今宵はこれで解散!」
その掛け声に、エインヘリアル達が思い思いに消えて行く。
焔里も帰ろうとした時、その肩をロキに押さえられた。
「何?」
「焔里ちゃ〜ん、そうつれなくしないでよ、母さん元気?」
「……」
ピシャリと焔里がロキの手を振り払う。
「……別れた妻の事なんて忘れて、新しい恋人の事を心配なさってはどうですか? 亜神社長?」
「おおう、娘が他人行儀に!! お父さん傷心!」
ピクリとコメカミが反応するが、相手をすればする程この男が喜ぶと知っている焔里は、フイッと顔を背けると、一跳し、ビルの谷間に身を躍らせた。
「やれやれ、反抗期かなぁ? どう思う? ヘイムダル?」
ヘイムダルは目を逸らした。
******
「ねぇエンリちゃん! 見て見て、隠しルートが解放されたよぉ!!」
「……あ、うん」
「今度は“ロキ”が攻略できる様に……」
「救流兎、止めて、それの攻略だけは本当、マジで、止めて? お願い!」
「え? でも……」
「お願い!!」
「う、うん」
あまりにも必死な焔里の様子に、救流兎は頷くしかなかったと言う。 お題『水着』『イケメン』『年の差』『パニック』『遺伝』『電車』『北欧神話』締め切り
【参加作品一覧】
>>557【気が付けば終着駅】
>>568【アースガルドシンフォニー】 投票、個人的な負担分散の為に水曜締切にしてたんですが水曜以降もちょいちょい票が入るのと、結構忘れる(すごく申し訳ないorz)ので今週からお題と同じ日曜日に締めます。
お題『怪盗』『バタフライエフェクト』『昔話』『ガーターベルト』『メイド』『誰かが雄叫びをあげる』『悩み』投票締め切り
【得票数一覧】
>>562【クレインエフェクト】一票
>>563【怪盗バタフライエフェクトの悩み】一票 安価間違えて本当に申し訳ないです
投票のレスにしてしまった……
>>528【クレインエフェクト】
>>498【怪盗バタフライエフェクトの悩み】 気を取り直してお題安価取ります
>>574-580 ☆お題→『インターネット』『オカルト』『新人賞』『講演』『自己紹介』『チェンジ』『召喚』より三つを選択
※二つ以下、四つ以上は不可
☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。
もちろん文字数が少なくても分割OK
☆締め切り→6/17の22時まで
☆平行して投票を行います(試験運転)→安価もしくはタイトルで一人一票までレスしてください。
【見逃し防止のため、このレスに安価してください。】 >>568
高難度だったか前回お題、『イケメン』『遺伝』『北欧神話』を選んで開幕、北欧神話と父と子と〜
さあ、乙女ゲー「アースガルドシンフォニー」のテーマは『北欧神話』、登場人物達の『遺伝』子持ったキャラクターによる、育成アイドル恋愛ゲーだ〜
ゲーム内『イケメン』の殺し文句に歓声あげる友人に、苦々しい顔する焔里さん〜、彼女の正体こそマジで北欧神話の遺伝子持ったモデルこと、戦闘部隊エインヘリアルの一員だ〜ゲームの開発者・親父をはねつけラスト!
友人がアイドルゲーの隠しルートを開放し、出てきた攻略対象は親父・ロキw ただでさえ複雑な関係なのに、親父の攻略中継なんて耐えられないw
子の心、友知らずオチ! 職人568氏が難題『北欧神話』を己のテイストに取り込んで、お題6個をフル消化だッ、親子の愛憎・入り乱れ、攻略拒否ENDでシメてくれたぜ、乙乙ッー! >>582
感想有難うございます
『年の差』を含めた短編も考えてはいたのですが、上手く纏まらず断念しましたorz >>581 今回は書けた。良かった……
使用したお題:『自己紹介』『チェンジ』『召喚』
【異世界召喚】
「あーぶーらかたぶらこっかどぅどぅるどぅえろいむえっさいむうんぬんかんぬん……。
さあ、出でよ、異世界の勇者よ! 我らの世界を守るためにいざ、参られい!!」
「うわ、な、なんだここは……」
「あなたが異世界の勇者様ですか。よくぞ、よくぞ参られました」
「え、異世界の勇者? よくわかんないけど、あれ、俺召喚されたとか?」
「そうでございます……。あなたこそ我が世界を救う勇者様です!」
「まじか、ゲームの新作が早くやりたいからって久しぶりに家の外出て店まで買いに行って良かった! トラックに引かれそうになってうわって思ったらまさかこんなところに出られるなんてラッキー!
しかも異世界召喚に巻き込まれるなんて、本当にあるんだこんなこと! やったぜ、これからチート能力で敵をバッタバッタなぎ倒し、可愛い異世界美女のハーレム作れるんだ!!」
「……ところで勇者様。異世界でのご職業はなんでしたか?」
「え、し、仕事は、その……そんなことはいいじゃないか! 俺がニートでも、チート能力さえあれば最強の勇者に……」
「チェンジで」
〜〜〜
「(前略)さあ、出でよ、異世界の勇者よ! 我らの世界を守るためにいざ、参られい!!」
「きゃっ、なに!? いきなり変なとこに来ちゃった?」
「あなたが異世界の勇者様ですか。よくぞ、よくぞ参られました」
「ちょっと! 異世界とかよくわかんないこと言ってないで早く元の場所に戻しなさいよ! 私さっきまでホストのケンジと一緒に楽しく飲んでたんだから! あんたみたいな変な奴お呼びじゃないのよ!
それにいきなり変なとこ呼びだされて地面に腰打っちゃった衝撃で、服のボタンが取れちゃったじゃない! もう、私の着られるサイズのドレスってオーダーメードじゃないと無いのに……」
「チェンジで」
〜〜〜
「(前略)(中略)参られい!!」
「あれー、ていうかマジヤバクない? なにここキショイー、写メとってSNSのっけよ。しかもこの変なローブのおっさんウケルし。
コスプレ? ねぇ、それコスプレ? おっさんなのにコスプレしてるとかちょーウケ……」
「チェンジで」
〜〜〜
「(以下同文)」
「あ゛? ワレなに人様を拉致ってんじゃコラ? 事務所言って話しあおか? さもないとイテコマシたるでコラ?」
「チェンジで」
〜〜〜
「えー、なんか変なとこいるしー。あーあ、せっかくダイエットしようと思ったけどやる気なくしたわー。明日にしてカラアゲ食べようかしらー」
「チェンジで」
〜〜〜
「あれ、ここはどこ? さっきまで病室にいたのに……。あ、人工呼吸器が外れてる。このままだと窒息して死……」
「ちぇ、チェンジ! 早くチェンジで!」
〜〜〜
「……なんだここは、オレはなぜこんなところに? あ、すみません。ここはどこですか? さっきまで一人で空手の練習をしていたはずなのですが、なぜかこんなところに……。
困ったな、大会まで近いのに、このままだと確実に優勝するラインまでいけなくなってしまう。医大の勉強が忙しくてただでさえ練習時間が取れないというのに、どうしたら……」
「おおおおお! あなたこそ、あなたこそ我が世界を救う勇者様ですううう! お願いします、助けてくださいいいいいい!!」 >>585
好き
まさかそういう『チェンジ』の使い方をしてくるとは思わなかったw >>585
勇者召喚
呼ぶ方にも呼ばれる方にもドラマがありますね
とりあえず、チェンジシステムが有って良かったw >>581 久々に息抜き兼ねて書いた。
使用したお題:『オカルト』『召喚』『チェンジ』
【悪魔の召喚】
「ははっ! この俺がオカルトなんかにまた手を出す羽目になるとはな……」
恐らくは自業自得という事なのだろう。今までの人生で好き勝手にやり過ぎたという訳だ。だが、こんなとこで死んでたまるか!
「おいこら! 逃げ回ってんじゃねぇぞ、出てきやがれ!」
ヤクザの男がブチ切れた様子で俺を探し回っている。勝手に組の金を持ち逃げしてそれがバレたら、そりゃそうなるわ。つくづく調子に乗っていた。何をやってもこれまで失敗などした事はなかった。だからこそ調子に乗って金を盗み出したが、結果はこの始末。
「だけど、それでもこれさえあれば……!」
俺が手に持っているのはなんの因果か幼い頃に、怪しげな婆さんに渡された一つの書物。その本には『悪魔召喚』の術が載っている。かつて虐待を受けていた俺は、それを使い事なきを得た。そこからは順風満帆な人生だったと言えるだろう。
何をやっても上手く行くのだ。調子に乘るのも当然だろう。今考えるなら真っ当な生き方でも大成したのかもしれない。だが幼い頃の環境が悪かったせいか、そんな道は俺は選ばなかった。
俺は暴力と金で全てが上手く行く世界しか知らなかった。そしてそれを辞める気は欠片もない。
「さぁ、悪魔よ。再び俺に失敗のない人生を!」
その呼びかけに答えるかのように、悪魔が召喚されてきた。よし、これで俺の人生は安泰だ!
「……なんだ、折角の召喚かと思ったら既に契約済みじゃねぇか。こりゃあいつの契約者か。おい、契約満了の奴が来てるぞ!」
「……何、どういう事だ?」
「なんだ、もう満了になったのか」
「良いからさっさとチェンジしろ。契約済みの満了者なんか相手にしてられるか!」
「分かったからそう急かすな」
……なんだ? どういう事だ? 悪魔が別の悪魔にチェンジした……? この悪魔、どこか見覚えが……?
「思ったよりは早かったが、随分と美味そうな魂へと変わったな。どれだけの悪行を繰り返したのやら」
「……どういう事だ!? お前は……!」
「俺はかつてお前と契約した悪魔だよ。寿命が尽きるまで人生の成功を望んだのは貴様だろう?」
そうか、見覚えがある筈だ。俺はかつてコイツと契約をして、その代償に……。
「悪行を働かなければ、より良い人生で寿命を全う出来ただろうにな。まぁこちらとしては美味い魂になってくれて有り難いが」
「ま、待ってくれ!」
「悪いが契約は満了した。報酬を回収させてもらおう」
身体から力が抜けていく。そして得体のしれない何かに食われていく感覚がある。嫌だ、死にたくない! ふざけんな、なんでこんな事に!
次第に意識も薄れていき、いつ自分の意識が無くなったのかすら分からなかった。
「真っ当な人生を送れば、まだ50年は先だった筈だがな。淀んだ魂は美味かったぞ、外道」 >>588
正に“命運は尽きた”と、言ったところですね
天国への道は細く険しく、地獄への道は広く穏やかと言います
困難でも、真っ当な生き方をしていれば、違った結末に成っていたのに…… >>585
お題『自己紹介』『チェンジ』『召喚』に挑戦、召喚リピート、オーバー&オーバー!
さあ、物語はローブの祭司が『召喚』呪文を唱えて開幕だ〜、呼ばれたニートが喜びの声とともに『自己紹介』、ん、しかし祭祀、これを『チェンジ』ィ!?
繰り返される召喚召喚、これちゃうこれちゃう、チェンジチェンジ〜、出てきたのはギャル、ギャル、ヤクザ、ギャル、瀕死の人だ〜、ギャル率w
ラスト、祭司がミスター文武両道の召喚に成功し、態度一転、拝み倒しのオチをきめ、585氏は『チェンジ』の使い熟しで賛辞を浴びてニッコニコ、お題・複数回消化で腕を見せたぜ!
誰だって行ってみたいな異世界へ〜、しかし忘れるな、選ぶ権利、それは召喚する側にだってあるはずだ〜、世界の行く先をそんな簡単に預けられるわけねえだろって感じで、運否天賦を力でネジ伏す、ガチャENDだッ
>>588
お題『オカルト』『召喚』『チェンジ』を選んで悪魔ものを描いた〜、短編スレ版・悪魔の報酬〜
さあ、『オカルト』にまた手を出す羽目になるとはなァ〜、って追われる男が魔術書のページを開くぜ〜
男は過去、悪魔『召喚』によって己が虐待乗り越え、悪逆の徒として過ごしてきた〜、ここで再び召喚に手を染め〜、って!? 魔術書の悪魔サイドが何やら混乱、いわく満了の客だ、『チェンジ』しろ、これ何の窓口業務だよバタバタわろた
先代の悪魔が出てきて、報酬回収オチだァw 悪の生が寿命縮める、因果応報バッチリ決めてお題をクリア〜
ラスト、死の淵しずむ語り手に向け、悪魔は語る〜、真っ当な人生を送っていれば、まだ50年は先だった! 災い転じて福となし、福は転じて災いとなる〜、588氏が幸運と不運を弄び、悪魔作者っぷりを愉しみENDォー! 今回のテーマで考えてたら、めっちゃ昔に見たSSを思い出して、久しぶりに読んでみたら泣けてしまった
パクって細部を変えてこっそり投稿しちゃおうかなと思ったけどやめたわ。あの作品を汚したくない >>581 初挑戦!
使用したお題:『インターネット』『オカルト』『自己紹介』
【忍び寄る黒い悪魔】
夏季休暇が明けたあとの大学で、パソコンに詳しいという友人から『メリーからのメール』について聞かされていた。
それは今まさに僕が体験していることで、思わず飛び上がりたくなるほど驚いた。
最初のメールは何気ない挨拶文と自己紹介文が並び、僕との交流を持ちたいという内容だ。
翌日からはバイトから帰るたびにメールが届いており、内容は送り主の近況がしめていた。
初めのうちは興味半分で返信をしてみたが、もれなく宛先不明だと返ってくるだけだった。
誰かに相談しようにも、親しくパソコンに詳しい人間がそのへんにいるわけじゃない。
最初のメールから一週間ほどが経ってようやく相談できると思っていたけど、まさか向こうから話を振られるとは思わなかった。
僕の方からも症状を告げると、大仰な身振りをして現代のオカルトを体験できるなんてお前ついてるなと言われた。
ちょっと強い口調で咎めると、友人は涙目で笑いながら種明かしをしてくれた。
結局そのメールは、インターネットを介して感染したウィルスによるものだったらしい。
後日友人が家に来て、首を傾げながらもパソコンを綺麗にしてくれた。
それから気味の悪いメールが届くことなく一週間が過ぎて――――。
再びメールが届くようになっていた。
それも若干内容が不自然で、不定間隔に来ていた。
『メリーよ。いまゴミ捨て場にいるの』
『メリーよ。いま駅前の広場にいるの』
『メリーよ。いまタバコ屋さんの角にいるの』
『メリーよ。いま不細工な猫に追われているの』
『メリーよ。いまあなたの家の前にいるの』
僕は恐怖を感じながら玄関を覗いてみたが誰もいない。
恐る恐るチェーンロックを掛けて扉を開くが、すぐそこで隣の家の黒猫が寛いでいただけだった。
再びパソコンの前に座ってニコニコチューブを見ていると、再びメールが届いた。
『メリーよ。いま目の前にいるの』
見るとキーボードの陰から台所の黒い悪魔がでてきた。
〈おしまい〉 >>592
面白かったけど、これ前半と後半繋がってないんじゃない?
前半のオカルトチックな奴は、「メリーさんウィルスが収まったあと、まさかの展開が!?」的なホラー落ち(もしくはギャグでもいいけど)にした方がいいと思うし、
後半のメリーさん(G)は違う掘り下げ方、例えばそれこそギャグ路線とかで読みたかった。着眼点自体はすごくいいと思ったけど・・・ >>593
感想ありがとうございます!
やっぱり無理がありましたか
「友人が首を傾げながらもパソコンを綺麗にした」というのは、
「ウィルスに感染してないのになんでだ?とりあえずいらないアプリを消しておこう」
という表現のつもりでもありました
まあそれでも一週間ほどメール送信の空白ができた理由にはならないけど
ついでにどうでもいいことを言うと、メリーの言う「不細工な猫」は隣の家の黒猫です >>592
最初のメリーさんのメール内容も見てみたかったですね
良く読むと、後半のメール内容が小さな者視線に成っているので、対比が見たいと思いました
でも、そもそも“黒き者”からのメールと言う時点で、結構なオカルトですよねw 連載の話の筆がめっちゃ進んでこっちの事忘れてたw
>>589
真っ当な人生さえ送れば、死後に魂は持っていかれるものの、事故をしても無傷だったり、病気になる事もなかったり、宝くじが大当たりしたりという人生でした。
悪行を繰り広げた事でそのトラブルの解消にそれらを使い果たした為にこうなったので自業自得ですね。
>>590
新規さん用の悪魔召喚の魔術書なので、すでに契約済みの人間が使う事は想定されてなかったっていうね。
悪魔の世界も色々大変なのでしょう。
それにしても悪魔作者ってw >>592
選択お題は、『インターネット』『オカルト』『自己紹介』! ホラー開演、忍び寄る黒き艶々のあいつ!
初登場592氏が描いてみせる、夏季休暇明けの大学生〜、彼のメールボックスに届くのは、メリーさんの『自己紹介』と挨拶文〜
こんな『オカルト』体験できるなんてツイてるなと、友人が『インターネット』をクリーンアップ、
しかーし、メールは止まらず戦々恐々〜、さあお題を消化し、オチはどうなる、メリーさんが家の前〜、玄関の、扉あけたる主人公、そこには寛ぐ黒き猫、こ、コイツが黒い悪魔か!?
かかったな、ソレはフェイントだぜとゴッキー現れ、私でしたオチw 私でしたじゃねえよ、何めっちゃメールしてきてんのwって感じで、人類に対して永劫続く、あいつの嫌がらせEND〜! 初陣592氏がフェイント・フィニッシュをカサカサと決めてくれたァ! 感想ありがとうございます!
>>597
黒猫はフェイントのつもりじゃなかったけど、確かにそういう見方も出来ますね
黒猫が好きなので、猫を出すか→じゃあ黒猫で、といった流れでした
意図して何か仕掛けておけばよかったな
>>595
最初期の書き殴りから引っ張り出してみます
この時はまだ黒い悪魔じゃないどころか、オチと共に何も決まっていない状態でした
『始めまして。私はメリー。あなたと交流を持ちたいの』
『メリーです。ようやく地球についたの』
後付のメール内容としては
・家族が一杯いるよ、春に生まれた子供たちが元気に飛び回ってる
・たまには日光浴しなきゃね
・丸1日外出していたら美味しい食べ物を手に入れて食べ尽くしていたらしく自慢された(ホウ酸団子)
・みんな死んでいく…………悲しい
・気分を一新してこの家から離れることにしたよ、あなたにも会いに行くね
と言ったものでしょう、たぶん
いま考えると『僕』が受け取ったメール内容と『友人』の話すメール内容とで噛み合わないという描写を入れておくべきだった >>581
使用したお題:『新人賞』『講演』『自己紹介』
【ああ黒歴史よ】(1/2)
以下は、実話のようで実話ではない、とあるとても悲しい出来事の一片を散々噛み砕いて誇張したものである。
人の持つ大きな自意識、緊張したときにいらないことを口走ってやっちまった感、そういったものを以下から感じ取ってもらえれば幸いである。
……あ、もう喋ってもいいんですか? あ、そうですか。
あー、マイクこれ大丈夫です? え? いや、大丈夫かって。なんか、音出てます? あ、出てる? 本当に?
あー、あー。出て無くないですか? あ、出てる? 本当に? あー、あー。あ、出てますね。
いや、すみません、こんな、ねえ。せっかくの新人賞の講演なのに、ぐだっちゃって。
あはは、まあ、えー、はい。……なに言うんだったっけ(笑)。あー、すみませんねえ。ちょっと緊張しちゃって。
こういう、改めた場面での挨拶っていうのをする立場になかったものですから。
だって、こういうのって、なんか、ためになること言わなくちゃいけないじゃないですか? 人生の糧的なこと?
校長先生みたいな? いやいや、無理だって、ねえ? 僕なんか若輩者にそんなの、何が言えるかって話じゃないですか?
いや、まあ、まあ、ね。新人賞取っちゃったからね、しょうがないと言えばしょうがないんですけど、
あ、取っちゃったって言い方はまずいですね、すみません、すみません。新人賞逃した方本当にすみません。
こんな僕が新人賞取っちゃってすみません。ね。はー……もう講演時間無くなったんじゃないですか?
あ、まだある? あ、結構ありますね、あはは。はー、それでは、自己紹介をしましょうか。はい、どうも。どうも。いや、いいですね。
自己紹介とかやめましょう。まどろっこしいことをやめましょう。どうも、数いる応募者から何かの間違いで新人賞を取ってしまった者です。
ね。ほんと、何かの間違いかって思いますね。こういったらなんですが、審査員の方は見る目ないんじゃないんですかね? 僕みたいなのを選ぶだなんて?
僕のほかにたくさんいいのがあったでしょうに。どうして、わざわざ僕の奴に目を留めて、あげくこんな賞与えちゃって。ね。勘違いしちゃいますよー。
才能あるって勘違いしちゃいますよー。 【ああ黒歴史よ】(2/2)
ね。ほんと、どうかしてますよ。世界、どうかしちゃってませんか? ここにいる人たちは、わかると思うのですが、世界に対する、違和感。ね。
こういう、職業柄、ね。四六時中、心象を面白おかしく弄って遊んでいると、ね。
わかっちゃいますね。世界がもう、歪んでるって。あ、もう駄目だなって。世界が崩壊しかけてるなって(笑)。
わかっちゃう(笑)。皆さんは自分が誰だかわかっていますか? この世界で自己を明確に表現できる方はいらっしゃいますか?
はい、手を挙げてみてください! ……あ、誰も手を挙げない(笑)。んー、まあ、そうですね。
ぶっちゃけて言うと、誰も自分のことなんてわかってないんですね。自分のことも、他人のことも、何もわかっちゃいないで、この世界を生きるしかないんです。
でも、みんなわかっている気でいる。それが僕には、我慢ならない。だから、世界が、嫌になる。
僕は毎日夢を見ます。終わった世界の中で、血みどろの海に浮かんで、自分が殺した彼女のことを夢想する。ね。
それが、僕が今回表現した小説なのです。あ、人生の糧、喋っちゃいましたね(笑)。
時間もそろそろ、いいころなので、それでは皆様方、こんな僕のことを、よろしくお願いしますね?
……。
……。
……お分かり頂けただろうか。
皆も、大きな場に立つときは気を付けよう。 >>599
予想外な告白w
果たして何をどう“ヨロシク”したら良いのでしょう?
先ずは落ち着いて電話でしょうか?w 何やら、ネタが被った気もしますが……
使用お題:『インターネット』『新人賞』『講演』
【故郷の錦】(1/2)
「ほうら、お父さんも、そんな怖い顔してないで……」
「煩い、地顔だ」
妻、節子の言葉に、隆正は不機嫌そうに言った。
街の人が勢ぞろいしているのでは無かろうか? そんな風に思える程に駅の前には人が集まっている。
駅前には横断幕が張られ、待ち人を今か今かと待っていた。
そうこうして居る内に駅に電車が到着する。鼠色のくたびれたスーツに黄土色のコート、手には土産の詰まった紙袋をこれでもかと持った男が改札から出てきた時、集まっていた街の衆がワッと沸いた。
「な、なんだぁ?」
驚きに目を瞠っていた男は、横断幕に書かれた文字を認め、羞恥に顔を染めると共に苦笑した。
――――横山 清太郎センセイ お帰りなさい――――
小説家、横山 清太郎の帰郷である。
******
町長に注がれた、零れそうになる麦酒を清太郎は慌ててすする。
「いやぁ、清太郎センセイ、今回の講演を快く引き受けてくだすって、本当に助かりました」
「いえ、自分の話程度で良ければ……」
「はは、御謙遜を」
機嫌よく呵々大笑する町長とは裏腹に、清太郎は曖昧な笑みを浮かべる。
チラリと、横目で宴会場の隅で黙々と酒を呷る父の姿を確認し、小さく溜息を吐いた。
清太郎の父、隆正。彼も清太郎と同じ小説家である……いや、清太郎自身は自分が小説家であると言う意識は薄い。
彼の思い浮かべる小説家の姿と言うのは、一日中机に向かい黙々と筆を走らせ、時にはそれらを放棄し、また筆を進める。
そして書かない時は、行き詰まった思考を落ち着かせる為に少しだけ休んで散歩等をしている……と言う、父の姿そのものだったからだ。
それ故に、仕事の片手間に依頼を消化している様な自身をもって、“小説家”等と名乗るのはおこがましいとさえ感じていた。
そもそも清太郎は小説家になど成ろうとは思っていなかった。今やっている仕事のストレスが溜まり、それを発散させようとインターネット上に細々と小説の様な物を書いたのが始まりであった。
それがある編集者の目に留まり、「一冊にまとめてはどうでしょう?」と勧められた本が、何を間違ったか、文学の新人賞を取ってしまったのだ。
当初は、こんな短編とも連載ともつかない様な小説モドキが賞を取る等とと、受賞を辞退するつもりだったが、そこは海千山千の編集に言いくるめられ、あれよあれよと言う内に新人賞、そして2冊目の本を出す事まで決まっていた。
それ等の本が更に幾つかの文学賞を取り、話題と言う意味では都合が良かったのだろう。そうこうして居る内にエッセイの依頼なども来た為、それを受けたりしていたのだが……
今回、帰郷したのは、それらエッセイで述べた内容を講演する為だった。
既に故郷を離れ10年近く経つ。
少ないながらも連絡のやり取りはあったが、それまで一度も顔を合わせて来なかった両親に会うには、良い機会だとも思った為、この講演を引き受けたのだ。
嫁すら貰っていない、親不孝を続けて来た自分が少ないながらも孝行が出来るのでは? と言う思いもあったのだが、そんな両親とは駅で挨拶を交わした以降は、まるで話をしていない。
「はぁ……」
「おや、清太郎センセイ、お疲れですか?」
「え? あ、あぁ、そうですね、少し、疲れたのかもしれません」
「それは大変だ、旅の疲れでしょう、では、この辺で一旦お開きにして……」
「あー、いえ、それには及びません、少し、休憩してきますから」
盛り上がる会場を目にし、清太郎はそう言うと席を立った。 【故郷の錦】(2/2)
******
「結構、変化しているものだな……」
宴会場のあるイベントホールの、ベランダに作られていた喫煙所で電子タバコを喫しながら、清太郎は郷里の風景を眺める。
十年一昔と言う言葉も有る。彼の視界には、それまで無かった建物もちらほらと映っていた。
「清太郎」
「ん? あ、母さん……」
声を掛けられ振り向くと、そこには母、節子の姿があった。皴の増えた顔で、しかし昔と変わらない笑顔を清太郎に向ける。
「まぁ、立派になったわねぇ」
「……偶々だよ、僕の実力って訳じゃない」
母の言葉に清太郎が皮肉気に笑う。隆正がどれだけ小説に心血を注いでいたかを知っているだけに、周りに流されるままにここまで来た清太郎の心中は複雑だった。
「そう言うのも実力と言うのよ」
節子が苦笑する。
「親父は……怒ってるかい?」
「何で?」
「いや、だって……」
再開して以降、顰めっ面で黙ったままだっ隆正を思い出し、清太郎がそう言う。節子はくすくすと笑った。
「まぁ、心中は複雑でしょうねぇ、あのひと文学賞なんかには、とんと縁が無かったから……」
「やっぱりか」と言う思いが清太郎の胸中に渦巻く。隆正の小説は、自身を体現する様な硬質な感じの物で有り、万人に受け入れられると言う類では無かったが、しかし根強いファンもいる為、生活に困らない程度には売れていた。
しかし、自分はどうだろうと考えれば、偶々最初の小説が話題になり、編集者の営業手腕によって、続けて出した本も売れてくれたに過ぎない。
つまりは一時の流行り病の様なものだ。
「悔しくはあるわよ、でも、それ以上に誇らしって思いも有るから、どういう態度をとって良いか分からないのでしょうね? だって、万年中堅作家のお父さんが、幾つもの賞を受賞している作家サマに、上から目線で『よくやった』……なんて言えないでしょう?」
「え?」
その言葉に清太郎は思わず目を見開いた。隆正は古いタイプの人間である。
だからこそ、インターネットで書かれた様な、軽薄と言われそうな自分の作品に対し憤りを抱えているだろうと思っていたし、そんな自分が“センセイ”等と呼ばれ、まるで一端の小説家の様に振舞っている事が気に入らないだろうと思ったからだ。
それ故の、あの態度だと思っていたのだが……
「貴方は知らないでしょうけど、あのひと、最近ネット小説も書き始めたのよ? 誰に感化されたのかしらねえ」
笑いながらそう言う節子の話に驚きながらも、“あの”父親のネット小説である。電子書籍すら敬遠しそうな隆正の意外な作品の情報に、清太郎は「探して読んでみなければ」そう思った。
もっとも、「あの頭の固い親父は嫌がるだろうなぁ」とも思っていたが。
「だから、貴方の方から話し掛けて御上げなさい?」
「うん、そうだね」
少しばかり予想外な父の近況に笑みが零れる。
電子タバコをケースに仕舞いながら、清太郎は「麦酒を注ぎに行かなければ」……と、そう思ったのだった。 そして安価を忘れていると言う体たらくorz
>>581 あ、作品投稿が安価なんだね
投票する時に安価付けるのかと思ってた 前は投票時だけだったのですが、代理さんの時に投稿時にもと成り、そのまま継続……と言った感じです >>601
感想ありがとうございます
オチが無くてちょっと紛らわしくなったかもですが
一応言っとくと殺人の告白とかではないです
ただ痛い痛い痛いと読んだ誰かがのたうち回る話です…… >>599
こういうの大好物、意味が分かると怖い話系。
だけど可能ならもうちょっと隠してほしかったかなぁ・・・隠すとわからなくなっちゃうかもしれんが いや違うんですよそういうアレじゃないんですよ
ただ痛い人間を書きたかっただけで……
あれ? 失敗したかな…… >>599
講演する前にテーマを考えてないとこうなりそうw
というか俺も過去の殺しをポロリしたのかと思っちゃった >>602
講演そっちのけで宴会してるw
インパクトはないけど作中の雰囲気がいいな >>599
お題選択は『新人賞』『講演』『自己紹介』だ、キリキリ舞い・スピーキング・ターイム!
さあ、599氏が描く、『新人賞』の受賞者が、『講演』会でマイクテス〜、スピーチ内容忘れた彼が、気を取り直して『自己紹介』、〜て言いつつやめるんかいw
このグダグダ感! アガっている〜イイ具合にアガっているぞ〜、卑下するためとはいえ、やれ審査員は見る目がない、やれ自分の才能は云々と、空気を読まぬ失言で、聴衆はもう冷え冷えだ〜
焦りまくる登壇者がテンパりながら問いかける〜、感じてるかい、世界に対する違和感をww 「皆さんは自分が誰だかわかっていますか?」←自分、自分、キャラを見失ってるのは完全に自分だよ!
混乱トークが厨二方面に転がって、こいつ殺人鬼なのかオチw ユニークな作品だ、技巧派599氏が文字だけでテンパりを描き切る、新機軸アガリ短編・爆笑ENDォ!
>>602
力作続いて、602氏がネタ被りで『インターネット』『新人賞』『講演』に挑む〜、錦を飾ろう、あの故郷〜!
さあ、主人公の帰郷を祝う人々の横断幕で物語はスタート〜、「お帰りなさい」の文字に戸惑う『新人賞』の小説家〜、『インターネット』の手すさびが、いつしか『講演』漕ぎ着けた〜
しかーし歓待受けるも上の空〜、小説家が気に留めるのは、酒を呷る父・隆正の姿〜、不安渦まく主人公、母が語るは驚愕の事実! あの漢・隆正が、ネット小説に手を染めたァ!?
宴会片隅で酒呷るのは、もはやいぶし銀のアイツじゃねえ! 帰ってきた息子の勇姿に頬緩む、一人の老いた父親だあ!
ラスト、理解しがたきを理解したいと互いに手伸ばす物書き親子、麦酒片手に距離縮め、ねぎらい祝っておつかれEND! 電子化親父・プリティーオチが決まったァ〜! >>611
感想を有難うございます
テーマ的には、家族故の微妙な距離感を描ければ……と思い書いたものです
上手く伝わっていれば良いなぁと思いますが、どうでしょうね?
>>612
いつも感想有難うございます
可愛いお年寄りは自分的に“萌え”だと思ってます
同意者は皆無ですが……
いや老人専と言う訳でなく、何かほっこりすると言う意味でw >>581
使用お題:『オカルト』『チェンジ』『召喚』
【疾風攻機ブロウゲイル】(1/2)
クラッチを握りシフトを上げる。アクセルを回すと同時に滑らかに加速した。
夜の高速、疎らな車の間を縫うように風祭 瞬はバイクを走らせる。
増加する圧力が摂理に逆らったスピードを否定するが、瞬は身を固める様に頭を下げると、さらにアクセルを捻った。
バイクは良い。自動車にはない、体で風を切り裂く感覚。全てを振り切り、ただ独り先へ進む興奮。
(先へ、もっと、もっとだ!!)
ピピピー、ピー、ピピピピッ、ピピピー、ピー、ピピピピッ。
「チッ」
舌打ちを一つ、瞬はレシーバーONにした。
『瞬、仕事だ』
「……はいよ……」
端的に告げられ、座標がヘルメット内のモニターに表示される。
瞬は前輪のブレーキをかけると、後輪を滑らせターンした。
******
淡く光る魔方陣の中から怪物としか呼べないモノが這いずり出てくる。
繁華街で有る筈の町の一角、そこは、不自然に街の明かりが消え、人通りも皆無だった。
幾つもの乗り捨てられ、主の居なくなった自動車群の、その取り残された自動車一つの中で、女性が腰を抜かして顔を引き攣らせていた。
どこかの噂では聞いた覚えがある。良く有るオカルト系都市伝説の類いだと思っていたモノ。
“ラルヴァ”
悪霊と言う名を付けられたその怪物は、闇夜の中から這い出し人を襲うと言う。現れる時に魔方陣を伴う為、何処かの邪悪な魔導士が召喚しているとか言う噂であるが、その真相を知る者は極少数の者だけだった。
半透明の蜥蜴の様な形状の、ゲル状の肉体の中に人らしき肉片や骨の浮かぶ、吐き気をもようす様なラルヴァの姿、女性は短い悲鳴を上げ気を失う。
のっぺりとした、目も鼻も無いラルヴァの貌。だが、生ある者を認識できるのか、取り残された女性に対し、巨体をくねらせると、途中にある無人の自動車を残骸に変えながら、その元までたどり着く。
と、ラルヴァは、無貌の頭部をバックリと開いた。
ババッ! ババッ! ババババババッ!!
ラルヴァの体表が弾け、幾つもの風穴を開ける。
だがその傷も、ゲル状の体が直に塞ぎ、致命傷とはならなかった。
だが、ラルヴァの敵意を引くのには成功したらしい。ゲル状の背から幾本もの触手を伸ばすと、攻撃を仕掛けて来た敵に対して鞭の様に伸ばした。
パスン! パスン!
銃音が響き、その度に触手が寸断される。
『!! !!!!!! !!! !!!!!!』
声なき悲鳴が闇夜に響いた。
パパ―――――――――ヴン!!
爆音が轟き、昏闇の中から鉄の塊が高速で飛び出す。 【疾風攻機ブロウゲイル】(2/2)
「アームドチェンジ」
静かな声がキーコマンドを発すると、その鉄の塊……武装バイクは展開し、翔の体を鎧の様に包み込んだ。
脚部のスフィアが回転し、エアロスラスタがバランスを制御する。
その身にかかるGに舌打ちをしながらも、翔はガトリングガンをラルヴァの体にばら撒いた。
『!!!! !! !!!!!!』
度重なる攻撃にラルヴァの怒気が膨らむ。背からの触手が、あたかもミサイルの様に射出され、武装バイクのスタンド形態“ブロウゲイル”に襲い掛かる。
だが翔は、スフィアとエアロスラスタ―を駆使し、まるでダンスを踊る様にその触手を避けると、追撃のガトリングをさらに叩き込んだ。
『!!!!!! !!!! !!!!』
ラルヴァがブロウゲイルの方を向く。完全に敵だと認識したのだろう。だが、翔はそれを確認すると全力で後退を選択した。
すでに、怒りに支配されたラルヴァは、ブロウゲイルの後を追い足を走らせる。翔は、敵が思った通りに動いたのを見て、口の端を吊り上げた。
「追って来いよ、ここは死への一本道だ!」
現場から十分に離れたと感じた翔は、ブロウゲイルの背面パックからエネルギーバイパスを引き出すと、ガトリングのグリップに接続する。
ガトリングは砲身中央から二分割に割れ、その間にバチバチと放電が始まった。
ラルヴァもまったく馬鹿と言う訳では無い。ドスドスと走りながらも触手弾をブロウゲイルに向かい発射し続ける。
背面走行の上、加速重粒子砲の狙いを付けている翔に、それを避けている余裕はない。
だが、鎧と成っているブロウゲイルの装甲は伊達では無かった。
幾つもの触手弾が、掠り、間直で爆発するも、その装甲は凹みこそすれど、内部にまでダメージを通す事は無かった。
『!!! !!!!』
「次元の狭間に還れ!!」
その一瞬、ヒョボッと言う音と共に、ラルヴァの体は四肢を残し消滅した。
******
21世紀もとおに過ぎ、エネルギー不足は深刻な状況に陥っていた。
そんなある時、科学者の一人が相違次元から“まだ何物にも成っていない粒子”を取り出す事に成功する。
何物でもない粒子、シュレディンガー粒子と名付けられたそれは、エネルギー問題を解決する新たな粒子として受け入れられた。
だが、その粒子こそ幻創世界で語られた“魔力”で有る等と誰も知り得る者は居なかった。
魔力の満ちる時、幻想だと思っていたかつての怪物達が蘇る時である。
今はまだ、都市伝説だとしてしか語られないそれらが、完全に復活した時、果たして人類に……
******
朝の高速、疎らな車の間を縫うようにして走るバイクがある。
風祭 翔、彼が人類存続の為の戦いに身を投じる事に成る等、彼もまだ気づいては居なかった。 お題『インターネット』『オカルト』『新人賞』『講演』『自己紹介』『チェンジ』『召喚』締切
【参加作品一覧】
>>585【異世界召喚】
>>588【悪魔の召喚】
>>592【忍び寄る黒い悪魔】
>>599【ああ黒歴史よ】
>>602【故郷の錦】
>>614【疾風攻機ブロウゲイル】 久々に5つお題に戻してみたい
全部入りを挑戦しても良し
一つに絞っても良し
>>620-624 ☆お題→『参戦』『その場しのぎ』『病気』『夢』『蕎麦打ち』
☆文字数→3レス以内に収めれば何字でも可。
最大文字数の目安としては、3レスで5000〜6000字程度。
もちろん文字数が少なくても分割OK
☆締め切り→6/24の22時まで
☆平行して前回お題作品について投票を行います→安価もしくはタイトルで一人一票までレスしてください。
作品一覧は>>617より。
【見逃し防止のため、作品投稿、投票の際はこのレスに安価してください】 >>614
前回お題『オカルト』『チェンジ』『召喚』をチョイスして刻限すぎて見参だ! ブロウゲイル・ガトリング〜
とある『オカルト』系都市伝説の噂によれば、明かりの消えた街角で、魔導士がラルヴァなる怪物を『召喚』していると言う〜
ってことで魔方陣から現れた、半透明のトカゲこと、人間食らって消化中のゲル野郎がお目見えだ! さあ、コイツに風穴あけるのは、「アームド『チェンジ』」を叫ぶ風祭さん〜、エアロスラスターとダンスを踊る〜、
ここが死への一本道だ! 熱いぜ! 銃撃戦で追い足走らせ、お題消化の物語、熱く弾けるガトリングの銃身が、放電帯びて決め技炸裂〜ッ、ってあれ、これ途中END?w
声なき悲鳴を夜に響かせ、風を切り裂くブロウゲイル! 人機一体の殲滅戦は、まだまだ描き足りねえといった感、続編の存在を予感させる寸止めオチで迸る閃光を魅せたァw >>626
感想、いつも有難うございます
帰宅後、急いで書き始めたのですが、〆切、10分前に慌ててまとめて投稿したのですが、結果、過ぎていると言うorz 言っちゃ悪いけど自分にとって7‐3お題は、やりやすいけど書く気が燃えなくて困ってた。
久しぶりの5‐自由お題だからちょっと本気出すぜ? >>625 全部選択!
使用したお題:『参戦』『その場しのぎ』『病気』『夢』『蕎麦打ち』
【長年の夢】
「父さん、待てって!」
「えぇい、離せ!」
病院のベッドで大人しくしている事を拒む父を何とか宥めてみるが、大人しく言うことを聞いてくれない。
「長年の夢がようやく叶うって時に病気でもないのに大人しくしてられるか!」
「父さんが定年後に蕎麦屋をやるのが夢だったってのは分かってるけど、そんな状態で行ってどうすんだよ!?」
いつも蕎麦打ちの特訓をして、家族に振る舞っていたんだ。それくらいは知っている。先週、念願叶って蕎麦屋を開店したばかりだから気持ちもよくわかる。だが今行ったところで、その場しのぎの対処すら出来ないだろう。
「あそこは蕎麦屋の激戦区なんだぞ! そんな所で開店してすぐに閉めた日にはあの立地に参戦した意味がないだろうが!」
「だから、もう少し離れた場所にしろって言っただろ! それならここまで焦る必要も無かった!」
「くそったれ、なんでこんな事になっちまったんだよ……」
「父さん……」
激戦区の中に作った個人店だ。その場しのぎの対応でどうにか出来る話じゃない。そもそも開店したばかりの父の店には蕎麦を打てるのは父しかいない。後は知り合いの子がアルバイトに来ている程度だ。
定年を迎えるまでに自宅で蕎麦打ちを鍛え、父の友人の蕎麦職人の指導も受けて大丈夫だろうと太鼓判を押されて、退職金を使って開いた店だ。そりゃ悔しいに決まってるだろう。
「父さん、気持ちは分かるけどさ……」
「うるせぇ……。俺の何が分かる……」
先週までは喜びに満ちていた父の悔しそうな顔を見ると心が痛む……。だけど……。
「くそったれ! なんでこんな時に事故で両腕を骨折しちまったんだよ!」
交通事故で両腕を骨折してしまい、入院している父を見て俺まで悲しくなってしまう。だけど、腕の骨折だとどうやったって手打ちの蕎麦は作れないだろう……。 >>629
料理マンガなら、主人公が助っ人を買って出るシュチュエーションなのですが……
現実は無情
動かなければ事態は好転しないけれど、これも天から与えられた充電期間だと思って、頑張って欲しいところですね というより変化がある方が良い
新しいお題の出し方もちょくちょく開拓したいね その辺の意見は随時受け付けてるよ〜
っていうかむしろ意見欲しいな >>632
思いつきで
* 〇〇のお題は必ず含めること
* 相反するお題を組み合わせること
(あるいは相反する二つを組みで募集するとか)
* 二つ(あるいは三つ)のグループから一つづつ選択すること
お題募集時は Aグループ >>XX1-XX3 Bグループ >>XX4-XX6 Cグループ >>XX7-XX9
うーん、これだと複雑になりそうだ ■ このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています