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ワイが文章をちょっと詳しく評価する【91】
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0001ぷぅぎゃああああああ ◆Puuoono255oE
垢版 |
2018/05/31(木) 10:51:37.67ID:e9HLf/lY
オリジナルの文章を随時募集中!

点数の意味
10点〜39点 日本語に難がある!
40点〜59点 物語性のある読み物!
60点〜69点 書き慣れた頃に当たる壁!
70点〜79点 小説として読める!
80点〜89点 高い完成度を誇る!
90点〜99点 未知の領域!
満点は創作者が思い描く美しい夢!

評価依頼の文章はスレッドに直接、書き込んでもよい!
抜粋の文章は単体で意味のわかるものが望ましい!
長い文章の場合は読み易さの観点から三レスを上限とする!
それ以上の長文は別サイトのURLで受け付けている!

ここまでの最高得点76点!(`・ω・´)

前スレ
ワイが文章をちょっと詳しく評価する【90】
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1526900952/
0416この名無しがすごい!
垢版 |
2018/06/05(火) 20:15:04.62ID:PGs5cpok
 雛子が建物のロビーから出てきた。既に七分丈のパンツと花柄のシャツを着て、つば広の帽子を被っている。美世がプップとホーンを鳴らすと雛子は身を低くしながら恐る恐る車に近づいて、少し離れた所からこちらを見ている。
 美世がサイドウィンドウを開けると、雛子はうわっと驚いた身振りをして小走りに助手席側に周り、ドアを開けてよじ登るように乗り込んできた
「デケーよ!」「うん、ウチも始めて見た時はビビッた、でも乗り心地は最高、最大積載量気分次第や」「ホントだ、中ひろーい」
「姉さんこれでキャンプ行こうや」「いいねー」
 今日は山田の練習試合の日だった。最近お気に入りの高校球児を自慢したいから紹介すると、雛子を誘ったのだ。球場が大学からほど近い場所にあることもあって、美世が雛子を迎えに来たのだ。
 車を出すと白衣を着て慌てた様子のメガネの男性が走って追いかけて来た。
「先生! 先生! もうパラフィン包理が上がって来るんですよ! 教授の要求精度で切れるの先生だけなのに!」雛子は窓を開けて言った。
「岩見君を信頼してるよー」「NOOOOOOO!」
 バックミラーを見ると、プラトーンのように膝を落とした白衣の男が叫んでいた。
「姉さんあれええの」
「いいのいいの、あの人私頼りで成長しないのし、教授は教授で用事ばっかり押し付けて、自分の仕事ができやしないんだから、二人して私の有り難みを知ればいいのよ」
「ふーん、板挟みでなんか哀れやなぁあの人」

「姉さんこっちや、こっちこっち」
 美世はまた適当に三塁側の席を選んで入場したが、今回はこちらが稲村実業ベンチのようだった。既にベンチの前で監督を囲んでなにやらミーティングをしている。二人は開いている所を見つけると尻をずらしながら長椅子の適当な所に座った。
「ねぇねぇ、どれが涼介君?」
「呼んでみるか? せーので涼介やで」
「うん」
「せーの」
「りょうすけー」
 二人の声にチームメイト全員がこちらを見た。
「みんなこっち見ちゃったよ?」
「まだまだこれからやて」
 ぽかんとこちらを見た稲村実業ナインだったがすぐさま一人の男を殴ったり蹴ったりしはじめた。
「ほらな」
 美世が大笑いしながら言った。
「ひどい美世ちゃん」
 そういいながら雛子も笑った。監督が下から声をかけてきた。
「いつも差し入れありがとうございまーす」
「いえいえ〜」
「涼介君おっきーねー」
「あの体躯から剛速球を生み出すんや、ただ早いだけやないんやで、あの長身から投げ下ろしてくる球はバットの軌道との接点が少ない、それにコントロールも抜群、針の穴を通す制球や、チェンジアップもうまいねんで」
 美世は誇らしげに雛子に話して聞かせた。
「へぇ〜、よくわかんないけど奥が深いんだね」
 その時、ベンチから女の子がでてきて監督に何かぼそぼそと話しかけて何かやりとりした後こちらへ振り向いた。女の子は突っ立ったままじっと美世を見上げた。人に無言で差し向ける視線としては多少長いと感じる間だ
 美世は思わず視線を返したまま硬直していたが、やがて女の子は視線を外してすーっとベンチに消えた。
「なんやあの子、やっぱり人間やったんか」
「え? 何?」
「いや、なんでもない」

 またもや3対0で稲村実業は快勝した試合後、美世は駐車場で二人を引き合わせて紹介した。
「こちらがトモ兄の彼女の諏訪園雛子さんや、どうや、ビビったか」
「はい、噂には聞いてましたがここまでお綺麗とは想定の範囲外です」
「やだ亮介君お上手だね」
「いえ、ほんとに、お世辞じゃありません」
「こいつ現代っ子やからこういうの得意やねん、日本男児がなかなかよー言わんようなことはっきり言いよる」
「僕、ほんとに今日は困りました、あれは誰だって問い詰められて、僕だって知らないのに、まあだいたい予想はついてましたが」
「ごめんね、突然来ちゃって、美世ちゃん言ってなかったの?」
「別に言う必要ないやろ、野球観戦は自由や、まあそれはともかくウチらこれから飯やけど、亮介はどないすんねん」
「山田は固く目をつむって悔しそうに言った。
「美女二人とご飯食べたい……でも2回連続で反省会抜けは無理です」
「あっはははは、そらそうやなぁ、心配すな、また別の機会に席設けるから
はよみんなの所にいてこい」
「はい、それじゃ雛子さん、また今度」
「またね、亮介君」
 向こうに向かって行きかけた山田が足を止めて振り返った。
「美世さん、今日は何も言いません」
0417この名無しがすごい!
垢版 |
2018/06/05(火) 20:18:24.87ID:PGs5cpok
 そう言って山田がじっと美世の顔を見た。美世が焦った様子で少し後ろに下がりながら山田と雛子を交互に見た。雛子はおかしな空気に気付いて逆に山田と美世を交互に見たが、美世は俯いて言った。
「は、はよ行けや、みんな待っとるで」
「それじゃ」
 山田は皆がぞろぞろと乗りこんでいるバスに向かって走って行った。

 雛子は逆手に握ったフォークでザクっとマッシュルームを突き刺した
「豪速球がハートに直撃か〜」
 ビクっとした美世が雛子に聞く。
「な、何がやねん姉さん」
「別に〜話したくないなら聞かない〜」
 雛子はもぐもぐと黒鯛のポワレにつけ添えられていた野菜を食べている。「言いたい事あるように思ったんだけど勘違いだったみたい」
 美世が急に何の脈絡もなく高校野球を見に行こうと誘って来た事、鷹山を誘うのに消極的だった事、たまたま出会った事を強調しながら話す山田の話。先程の美世と山田のやりとりで雛子は全て理解した。
「姉さん、ウチ、間違うてしもたかもしれん」
「ん? 何を間違ったの? よくわかんない」
「い、いや間違ったっていうか、りょりょ、亮介がウチの事好きやて言うねん、おかしいやろ?」
 美世の言う事を聞いているのかどうかモグモグとキノコを食べていた雛子がゴクンと呑んで一言放った。
「ん〜、確かに間違ってるね」
「そ、そやろ、うん、困ってんねん、ウチその気全然無いし」
 雛子がギロリと美世を睨んだ。
「それが間違ってるって言ってんだけど」
 意味が理解出来ずに固まった美世に雛子は口元を拭いて水を飲むと言った。
「不誠実だと思わない?」
「な……何がや」
「自分にも、亮介君にも」
「そやかて相手高校……」
「高校生が好きだと言うから困ってるの? 卑怯な言い回しだね、向こうは大人相手に真っ向勝負なのに、高校生なら人を愛する権利に制限があるんだ、人を見るのは美世ちゃん得意分野だと思ったんだけどなぁ〜
物事の判断がつかない人間をどうのこうのするのはフェアじゃないけど、亮介君は自分を持ってると思うな、明らかな意思と誠意には答えるべきじゃないの?」
「そやかて」
「高校生とかじゃなくて人として相手になりえないならお断りすればいいじゃん」
「いやなりえないっちゅーか」
「なるの?」
「いやなるっちゅーか」
「不誠実」
 雛子が手でピストルの真似をして美世をぴたりと指した。
「もーあんまりいじめんといてくれ、ウチも正直わからんねん、こんなん初めてやもん」
 雛子はニヤリとして身を乗り出した。
「あのね美世ちゃん」
 美世は雛子の口から何が飛び出すのかという緊張で唾をごくりと呑んだ。

 ガガガガガというブレーキペダルのキックバックにパニックになりながらも美世は辛うじて車を止めた。目の前を横切ろうとする人影に気づいて急停車したのだ。
「あぶなかった、信号見てなかった
あかんあかん、このままでは人殺しになってまう、きぃつけんと」
 驚いてこちらを見ていた歩行者が前を向いて横断しはじめた。

 美世は目の前を流れていく人垣を見ながら雛子の言葉を思い起した。
「高校三年生なんだから順社会人じゃん、もうすぐ18だし、そうなれば法的にも公序良俗的にも問題なくなるでしょ、人を愛するのに年齢差は関係ないよ、好きならがんばってみれば?」
 言葉の意味を噛み砕こうとすると山田の真剣な告白や部屋でキスした事が
フラッシュバックしていつの間にか自分の顔が緩んでいる事に気づく。
「思春期か! あかん、自分で突っ込んでもた、青春って伝染すんのかなほんまもんの青春時代はこんなんやなかったのに
告られても別にこんな気持ちにはならんかったしな、思たらあの頃のほうが淡々としてて冷静やったな」
 美世は世間を斜めに見て人波を泳ぐのは得意だったがこういう部分はからっきしな自分に腹が立った。
「これというのもあのロクデナシの親父のせいや、アカン、あんなクズのせいにしてもしゃーない、お母ちゃんが死んでからは一人で生きてきたし、ウチはトモ兄に出会って変わったんや
 自分でちゃんとやれる、愛される事にはずっと失敗してきたけど大丈夫、今は愛されてるんや、あとはウチがうまく愛することができるかどうかだけや、って何本気になってんねんあ〜もう姉さんも無責任な事言うて」

 山田に弁当を持たせて送り出す、練習が終わって家に送り届け、車の中でキスをするのがパターン化していた。
 山田の家でキスをしてからしばらくして、もう一度してほしいとお願いされたのをきっかけに、ズルズルと続けている。今日一日がんばったご褒美にという設定だ。
0418この名無しがすごい!
垢版 |
2018/06/05(火) 20:23:21.87ID:PGs5cpok
 山田いわく、キスをすると疲れた体に沸々と力が沸いてくるのだそうだ。多少強引な設定に付き合うのを装っていたが美世自身も内心楽しみにしていた。
(あかん、ウチ完全に好きになってもとる、キスが近づくとドキドキが止まらんようになってもた、スポーツで一流になる事と女は両立出来ないというのはほんまなんやろか、しかし亮介は調子ええみたいやし、なんか新しい球も研究してるってゆうてた、心配ないはずや)

 そんな生活を続けて何週間かが過ぎたある日、山田からのメールで風邪をひいたから2,3日休むとのメッセージが来た。直接電話して山田の様子を伺おうとしたが電話には出ない。
 仕方なくメールで様子を聞いて体を労わるように言っておいた。毎日メールをして様子を聞いていたが3日目にちょっとこじらせたとの返事が返ってきた。美世は少し焦りをおぼえた
 山田の病状が重いのだろうかと考ると背中に冷たいものが走る。それと同時にたまらなく山田の姿を求めてる自分に気がついた。
「やばい……会いたい」
 結局明日から学校へ行くとメールが来たのは1週間経ってからだった。

「えらい長引いたな、大丈夫か」
 美世は山田の顔を見た瞬間少し泣きが入ったのを必死に隠して喋った。
「はい、もうすっかり治りました、今日からまたバリバリ投げます」
「そうか、よかった、ほんまに心配したで、風邪以外の病気ちゃうかて」
 引きつってぎこちない美世に気づいているのかどうか山田は屈託なく答える。
「いえ、ほんとにただの風邪なんです、疲れが溜まってたみたいで」
 美世はいつもの元気な山田を見て安心していた。自分は本当に山田に会いたかったのだなと認識してそれを伝えたい気持ちをどうしていいかわからず
黙って運転していた。
 しかし山田が美世の気持ちを代弁するように言った。
「会いたかったっす」
 美世は前方を見ながら5秒ほど耐えたがチラリと助手席の山田を見た。山田は真っ直ぐにこちらを見ている。
「そうか、そんなにウチの弁当が食べたかったか」
 論点をずらそうと必至になる美世だったが山田はそれを許さない。
「いえ、美世さんに会いたかったんです、好きだと言ってるじゃないですか」
 多少不機嫌に言う山田に美世はつい謝った。
「そ、そうか、悪かった」
「本当はこうしてお弁当作ってもらったり、送り迎えしてもらったり、こんなに甘えていていいんだろうかって常々気になってるんです、でもこうして毎日会えて、手料理を食べるチャンスを自分で潰すなんてできなくて
だから僕はせめて勝ち続けて美世さんを喜ばせる義務があると思ってるんです」
「そ、そうか、まあその通りや、利害が一致したな、だから気にする事ないで」
「そう言ってもらえると助かります」
 少し黙った美世だったがまた口を開いた
「あのな、それとウチな、実は……」
「なんですか?」
「い、いやなんでもない」

 学校へつくといつものように弁当を手渡して背中を叩いた。
「気張って行けや」
「はい」
 山田が走り出そうとした時に美世が呼び止めた。
「あ、涼介」
はい?
「あの……力が出るやつしたろか」
上ずった声でそういうと、山田が唖然としたのを見て美世は激しく動揺した。
「い、いやその方が気合入ってええ球ほうれるんちゃうかとおもて」
「美世さん」
 山田の顔がぱっと明るくなって美世の所に戻ってきた。
 いつもは車の中で巨大なセンターコンソールを挟んでお互いが寄り合い、キスするのでどうすればいいか悩んだ山田が少しもたついた。最終的に美世に近寄って腰を落とし、両肩を掴んだ
美世が山田の肩を持って胸に手を置き軽めのキスをしたが、山田はグイグイと押しながら舌を絡めて来た
「ん、んむぅ」
 山田が腰を抱き手に力を入れてきたので体はほぼ宙に浮いている。もし今 山田が襲いかかってくればヘタすれば許してしまうかもしれないと美世は思った
(こんなトコであかんやろ、いや車があるか)
 そんな事を考えながら美世は山田に体を預けていたがしばらくすると山田の唇が離れた。少し感極まって見つめる山田に美世はバッグからハンカチを取り出して山田の口についている口紅を拭った。
「ありがとうございます!力沸いてきました!」
「う、うん、ええんや、はよ行け」
 山田が走り去るのをぼーっと見守った後少し顔を緩めながら車のドアに手をかけた時だった。
「いい気なもんですね」
 不機嫌そうな女の声に美世は振り向いた。
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