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全選択で行きます!

使用お題:『ナイアガラ』『ドラクエ』『図書室』『視点』『アチアチ』

【白紙の本】

 こんな都市伝説をご存知だろうか?

 ーー曰く、その本に題はなく、中身はただの白紙である。
 ーー曰く、いつからその本がその図書室にあるかは誰も知らない。
 ーー曰く、その本は夢の本である。
 ーー曰く、その本は1冊しか存在しない。

 ある学者はその本を手にして、ナイアガラの滝やアマゾンの密林、更には火山の噴火口や海の底にまであらゆる難所へと視点を飛ばす事が出来たそうだ。

 ある子供はその本を手にして、ドラ◯エのようなゲームの世界へと行き来する事が出来たという。

 ある貧乏な者はその本を手にして、普段は食べる事すらままならないアチアチな料理をたらふく食べたそうである。

 その本は本人の望みを自由自在に叶えるものであると言われている。
 ここまで聞けば、誰もが欲しがる夢のような本であろう。

 ただし、その話には続きがある。
 そのような夢の本を一度手にして、その魅力に取り憑かれてしまえばもう二度と手放す事など出来はしない。だが、その本は1冊しかこの世には存在していない。
 
 つまりその本を手にした者たちは、既にこの世にはいないという事になる……。
 その本の魅力に取り憑かれた者は、その本の力で全ての事を完結させようとしていくのだ。そして、次第に衰弱していき、やがて死に至る。その様子はまさしく本に命を吸い取られていく様だと言う。

 本に魅入られて衰弱死とは情けない最後としか言いようがないとは思わないかい?


 あぁ、そういえばもう一つ都市伝説があったのを忘れていた。
 悪魔の本というものを知っているだろうか?

 なに、簡単な話さ。その本を手にした者へ幻覚を見せて、その魂を食らい、その本のページに魂を写していくという本らしい。
 魂を食われる始めるまではその本の中身は白紙にしか見えないとの事。

 どちらの本もいつの間にか図書室へと現れているらしい。身近な図書室でそのような本を見かけた時は注意したほうが良いだろう。