>>137
使用お題:『配管工』『ユニオニオン』『誰かが冗談を言う』『ドラムンベース』『ジャンル:ローファンタジー』

【入国管理】(1/2)


「あぁ! ここが日本か!」

 飛行機から降りるなり、流暢な日本語でそう言ったのは、アングロサクソン系の若者だった。
 ユニ・オネオナ。今年で19才になる、オクラホマ出身の青年である。
 感慨深そうに口にしてはいるが、飛行機を出こそすれ、未だ空港の室内ではあるので、言うほど日本日本した感じではない。
 それでも空気の違いを感じているのか、彼はそれを堪能するべく大きく深呼吸をした。

「さて、入国手続きをしないとな!」

 初めての海外旅行。それで日本を選んだのは、ひとえに彼が日本文化が好きだったからだ。

「ヨウカイ、オンミョウ、ヤオヨロズ〜!!」

 少し……いや、かなり偏っては居る様ではあるが……

 BGMだろうか? 空港の通路にはノリの良い音楽が流れていた。彼の記憶によればドラムンベースのナンバーだった筈だ。
 そんな彼が浮かれ気分で入国カウンターに着くと、そこには20才半ばの男が仕事をしていた。
 ネームプレートには“土御門”と書いてある。土御門……その名前に彼はピンと来る物が有った。かの大陰陽師、その子孫がそんな苗字だったのではないか?

「Oh! ツチミカド!! セイメイ・アベ!! オンミョウリョウ!! 貴方は子孫では無いですか?」

 入国管理官であろうその男は若者をジロリと見るが、取り立てて感情を浮かべないまま「パスポート、プリーズ」とだけ言った。
 まったく相手にしてくれない土御門に苦笑しつつ、彼がパスポートを渡す。

「……ユニオニオンさん?」
「違います! ユニ・オネオナです!」
「入国目的は……観光ですか?」
「はい! 観光です」
「配管工? これ、観光ビザですから、配管の仕事じゃ入れませんよ?」
「違います! 観光です!!」
「はは……冗談ですよ」

 全く表情を変えないまま土御門はそう言う。
 そうすると、最初に自分の名前をどこぞのイメージキャラクターと間違えたのも冗談の類だったのだろうか? どちらにしろ面白くも無い冗談ではあるが……第一、冗談だと言うなら、少しは笑ったらどうなのか?