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使用お題:『線香花火』『おっさん』『空軍』『キャプテンTOBBY』『イケメン』

【異界の空軍参謀】(1/2)


 バチバチと火花を散らしながら落ちる炎の塊を目にし(線香花火みたいだな)等と、少し的外れな感想を抱く。
 地面に落ちたそれは、あたかも水滴の様に飛び散り、あちこちで白煙を上げる。
 それを成した蒼天に隊列を組む航空戦力を眺め、私は少しの間惚けていた。

「どうしました? マジマ航空参謀」
「あ、いえ、大した事では……」

 私の名前は馬嶋 弘義、一年ほど前にこの異世界にやって来た地球人だ。
 私は今、このアリセラ王国で、士官をしている。肩書は【航空参謀】……空軍の……相談役である。

 私が眺めていたのが今の私の成果である航空兵団……の実験小隊。
 このアリセラ王国の有る世界は、所謂剣と魔法のファンタジー世界であり、私が幻獣なんて言うくくりで認識している生き物が数多く生息している。
 だが、そんな世界でも世知辛い物で戦争なんかは、むしろこちらの方が多いだろう。群雄割拠……と言うやつだ。
 さて、何で私がそんな世界で航空参謀なんて事をしているかと言えば、まぁ、航空戦力の有用性を示してしまったからだ。

 ******

「…………んが?」

 会社帰り、何時もの様に同僚と飲んだ所までは覚えている。
 気が付けば私は何処から持って来たのかキャプテンT〇BBYを抱きしめて目を覚ました。
 酔っぱらって記憶が無くなるのもいつもの事だ。戦利品だってケ〇ちゃん、カーネ〇・サンダースと色々ある。
 社会に疲れた中年のおっさんには良く有る失態だろう。(全裸で公衆便所に突っ伏していないだけ今日はマシだったな)なんて事を考えていたのだが……

「どこだ? ここは?」

 石造りの部屋、周りを見渡せば見知らぬ人々が立って居る。それも、コスプレとしか思えない様なローブ姿の人々だ。

「あの、勇者様?」

 目の覚めるような美人が目の前に居た。それが、この国の王女、エルメシアだと聞いたのはその後の事だった。

 ******

「……伝説……ですか……」
「はい、女神ラーナフのお導きです……」

 紅茶を飲みながら、私は冷や汗を流した。うっすらと記憶に有る。酔っぱらった勢いで何を安請け合いしてしまった記憶だ。

(……あれが、この世界に来ると言う契約だったんだなぁ)

 つい遠い目をしてしまう。酒の上での失態なんて星の数ほどあるが、まさか異世界に送られる事に成る等、露程も思っていなかった。

「……あの、勇者様?」
「あ、いえ、何でも無いです」