0351この名無しがすごい!
2018/09/16(日) 12:25:10.69ID:nyL+Pdt7使用お題:『筋肉』『ケロちゃん』『お月見』『ごちそう』『首輪』
【月光の不死美人】(1/2)
予感があった。
辻堂 当摩は無意識に自らの首に嵌めたチョーカーをつうっと指先で撫でていた。
息を切らせながらも宵闇に包まれた街をひた走る。
ドクンっと鼓動が高鳴った。
真円を描く月を背に、当摩の望んでいた存在がそこに立って居た。
「ケロちゃん……」
幼馴染だった少女の愛称を呟く。
少女の瞳が赤く煌いた。
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『とーまぁ……』
あどけない幼子が、しかし今は妖艶な雰囲気を湛えながら彼に馬乗りに成っている。彼女は当摩の首元にぷっくりとした紅い唇を添わせ、艶めかしく舌を這わせる。
ゾクリ……と背筋に甘い痺れが登り、その直後に激痛が走った。
だが、その痛みに対する当摩の感情は、甘露にも似た悦びだった。
彼女の口が彼の首筋から離れ、一筋の血が伝い落ちる。
何処か陶然とした瞳で当摩を見詰めた彼女は、舌先で唇を……そこに残っていた彼の血液を舐め取ると、ニンマリと嗤いながら言う。
――――――――ねぇ、とーまぁ。あなた、わたしの“僕”にお成りなさい? だって、こぉんなに美味しかったの初めてなんですものぉ――――――――
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意識が覚醒した時、その心臓は早鐘を打ち、やけにジットリとした汗が全身を濡らしていた。
記憶は定かではない。だが、何か恐ろしい夢でも見ていたのだろうか? そんな風に当摩は思った。
鼓動が落ち着くにつれ、何故か取り残された子供の様な寂寥感が心を支配し、酷く泣きたくなった。
だからと言って本当に泣き出す訳にはいかないのだが……
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「……お月見?」
「うん! だから、今日は早く帰って来てね? ごちそうを作るんだから!!」
当摩の妹である睦月が、出がけにそう言った。
その言葉を聞き、当摩は今日が満月なのだと思い出す。
父親の単身赴任に母が付き添ってって行った所為で、辻堂兄妹は現在二人だけで生活をしている。
彼の妹はこういったイベント事が好きで、ちょくちょく何かしらの行事にかこつけてパーティーの様な事をしていた。
既にどんなごちそうを作るのか算段しているのであろう。ニコニコと機嫌がよさそうに睦月が学校に向かって行く。
そんな妹を見送りながら、当摩は一人朝ごはんを食べながら(今日はどうするかな?)等と考えていたのだった。