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使用お題:『野球』『水平線』『同じセリフを3回』『コンビーフ』『厨二』

【終末の俺伝説】(1/2)


 少し小高い山の間、遠くに見えるのは海だろうか? 内陸にも近い場所なのにも拘らず水平線が見えるのは余程の奇跡が積み重なった結果だろう。

「山に来たにも拘らず、母なる海を見届ける事が出来るとはな……フッ……かの海すらも、この俺の成長を見守ってくれている……と言う訳か……」

 誰に聞かせる訳でも無いのに、そんな気障な言葉が口を突く。
 だが、そんな事をしている場合ではないと思い直し、改めて登山用の大きなバックパックを担ぎ直して俺は山道を進む。

「“刻”は近い……」

 急がねばならない。
 道と言うには心許ない藪の合間。獣道と言って良い道なき道を俺は進む。
 より、本当の冒険に近いと言える。だからこそ、自分の鍛錬には持ってこいとも言えた。

「この辺で良いかな?」

 早朝から動いたおかげで、まだまだ時間は早い。山頂に近いなだらかな斜面に草の生い茂る空地を見つけると、俺はそこで準備を始める。
 バックパックを下ろし腰元に手を遣ると、腰から特殊警棒を抜き放つ。
 一振りされたそれが本来の長さを取り戻し、手に心地良い重さを感じさせた。

 踏み込み、横に薙ぐ。返す刀で振り上げ、そのまま振り下ろす。

「……技と技の合間に隙が多いか……フッ、俺もまだまだだな」

 呟き、俺は自嘲した。腰まである草が足元を不安定にさせていると言う事も有るだろうが、“敵”が襲ってくる場所が、常に安定した場所であるとは限らない。

「つまり、より実践的……と言う事でもある」

 草を踏みしめながら警棒を振り回す。片手で、両手で、そしてまた片手で……
 つぅっと俺の頬に汗が流れる。気が付けば、日が中天に届きそうな位置にあった。

「……動きっぱなしと言うのも、効率が悪いしな……それに、冒険者たるもの休める時には休んでおかねば……」

 多少空腹を覚え始めた腹をさすりながら、そう呟く。火を熾しても平気な様に、十得ナイフで2m四方程度の草を刈ると、林の中に取って返って木の枝を拾い集める。
 だが、思ったよりも時間が掛かった。