>>519 そして2いじり目。そういえば競馬実況さんはいじらなくていいのか?
使用したお題:『1年』『進行が主人公』

【情報過多】
 人間と動物の違いってなんだかわかるかい?

 二足歩行? 火を使う? 道具を作ることができる? どれも違うね。全部一辺にできるのは人間だけかもしれないけれど、できる動物はたくさんいる。

 人間は情報を食うことができるんだ。

 食う、という言葉が気に入らないのなら、こう言い換えてもいい。情報に飢え、情報を求め、情報を得ることができ、情報を加工し、情報を生かすことができる。古い情報を捨てることもできる。
 これは人間にしかできないことだ。動物は肉や草を食べることはできるが、情報は食わない。

 ん? 情報を食うと何が起こるのかだって?

 そんなの日常に実例がいくらでも転がってるじゃないか。傘を持っていくかどうかの判断のために朝のニュースを見るだろう?
 話題のラーメン屋のラーメンが自分の好みにあわなくても、つい美味しいと言ってしまうだろう?
 ツイッターを見るのはなぜだい? 他人の情報が知りたいからだろう?
 そして……これ以上生きるのが辛いと感じたら首を吊るだろう? どれも動物はやらない行動だ。人間にしかできないことなんだよ、情報を食うことは。

 もし私の言っていることを否定したかったら、目や耳を塞いだ状態で1日過ごしてみてくれ。
 目隠しをして、耳栓をして、鼻を塞いで、両手両足を縛って、その状態で24時間耐えることができたら私の意見を否定していいよ。素晴らしい忍耐力だ。
 私だったら10時間はなんとか耐えれても、20時間は無理だね。発狂する。

 閑話休題、人間は情報を食べることができる。では食べ過ぎたらどうなってしまうか、知っているかい?

 肉を食べすぎると太る。砂糖を取りすぎると糖尿病になる。水を飲みすぎると過水症になって死ぬ。
 何事も過ぎたるはなお及ばざるは如し。足りないのもよくないが取りすぎるのもよくない。では、人間が生きるために必要とする情報を取りすぎると、その人間はどうなるか。

 情報を食べすぎた人間は、その人自体が情報になってしまう。

 言ってる意味がわからないって? まあ普通の人はわからないだろう。情報過多となったその存在はまとめて情報となってしまうのだ。うん、わかりづらいかな?

 そうだな、都市伝説や幽霊と言ったらわかりやすいだろうか。情報を取り過ぎた人は、生きたまま幽霊になってしまう。
 誰もが知る、だが誰もが実態が見たことなく、そしてその生態が意味不明で、そんな存在になり下がってしまうのだ。口裂け女やデイダラボッチ、八尺様なんてのも元は普通の人間だったのかもしれない。

 情報を集めすぎると、その集めすぎた情報を基に個人の人格が分離され、新しい人格として独り歩きしてしまうのだ。逆に言えば、世間を騒がせたかったら情報を大量に集めれば良い。

 もっとも効率よく情報を集める方法は物語だ。物語は情報の宝庫である。たくさんの物語を簡易に集めることができるシステムを生み出せば、誰より早く幽霊になれる。

 ……これで私のやっていることの意味はわかったかね? 伊達に1年もつまらない進行役なんてやっていないよ。
 これはつまり現代版の百物語だ。怪談話を一つするたびにろうそくを消していき、その数が100に達すると幽霊がやってくる。
 では、一般で周知されている物語の場合は、どうなる?

 ……そろそろ1年だ。物語の数は……百物語の倍ほどか。ならば十分かもしれない。
 フフフ、一体何が起こるだろうか。楽しみだ、ああ楽しみだ……。