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使用お題:『憑依』『ごうかくクン』『すいか』+『戦闘描写をいれる』『魔王』

【追い出された俺は『ざまぁ』をしない】(1/2)


「すまん! パーティーを抜けてくれ!!」

 パーティーリーダーであり勇者でもある朝生 光輝が、土下座でそう言う。
 対する馬郷 鶴利は、(とうとうこの日が来ちゃったか)と諦観混じりに考えていた。パーティーメンバーである剣士王、賢者、大魔導士も、複雑な気持ちが籠った表情で彼らを見つめている。光輝が鶴利との友情をどれだけ大切にしているかを知っているからだ。
 鶴利は、今は勇者の剣のアクセサリーと成っているマスコットに目を落とす。それは二人の絆の象徴であり、誓いの籠った品物でもあった。

 二人で同じ高校に入ると言う……

 二人はいわゆる勇者召喚で異世界から呼ばれ存在である。召喚される前の二人は受験生であり、同じ高校を目指していたのだ。
 その、絵馬を象ったらしい五角形のマスコットは、合格祈願の人気キャラクターであり、それにあやかって二人も揃って購入していた。
 それに込められた願いは変わらない。いや、むしろ少し多くなったくらいだろうか? つまりは……

 元の世界に帰って、二人で高校に入る。

 そう言う事である。

 だからこそのパーティーからの追放なのだろう。光輝の目の下の隈が、どれだけ彼が悩んだのかを表していた。
 それでも鶴利をパーティーから外さなければならない程、最近の戦いは厳しくなって来ていた。
 その理由は二人のユニークスキルにあった。光輝のユニークスキル【リレーション】、鶴利のユニークスキル【ポゼッション】。
 【リレーション】は同系の能力を重ねるとその威力を乗倍すると言う能力であり、例えば、初期の【回復】魔法を【リレーション】を使って重ね掛けすれば、その威力は【上級回復】すらも上回る様に成る。
 それは、いわゆる【必殺技】にも適応されるのだが、【必殺技】は一人の人間が二度三度と使える物では無い。
 その為、勇者はその加護をパーティーメンバーにかける事によって、【必殺技】の重ね掛けを行っていたのだが……

 対して【ポゼッション】はいわゆる憑依能力。だが、その能力を発揮できるのは、自我の無い相手か弱い相手だけであり、最初の頃の魔獣であればともかく、最近出てきている魔族や悪魔相手では、抵抗され、その能力を発揮する事は出来なくなっていた。
 それでも、光輝は友情を優先させ、鶴利をパーティーメンバーとして、加護の影響下に入れていたのだが、しかし、それも難しくなって来ていたのである。

「僕の、力不足で……」
「そんな事は無いよ、俺自身がもっと強ければよかったんだ」

 勇者の加護の影響下に置く事が出来るのは本人を含めた5人までであり、それがいわゆるパーティーメンバーとなり、メインアタッカーとなる。
 その為、火力不足を補う為には、どうしても鶴利をパーティーメンバーから外すしかなかったのだ。

「すまん……」

 そう言って光輝が鶴利から加護を外すと、その瞬間、鶴利の手の甲に輝いていた勇者紋が跡形もなく消える。
 喪失感に鶴利の顔が少し歪んだ。

「……しょうがないよ、でも、俺も今後は斥候として活躍するさ」

 確かに、戦力として数に入れる事の出来なくなった鶴利ではあるが、しかし彼のユニークスキル【ポゼッション】は、鳥や小動物に憑依し、斥候とするには有用な能力であった。
 その為、彼は、今後はパティ―メンバーでは無く、勇者の補助をするサポーターとして残る事を決めたのだった。