便乗して俺も

俺はひょいと手を伸ばした。
「痛ぅ!」
それだけで、俺の目の前にいた野郎が顔を押さえてうずくまる。まあ、目玉をつかれたら、普通はそうなるだろう。
「勝負はこれでついたな」
俺は言いながら、そいつの髪の毛をつかんだ。野郎がギャーギャー悲鳴をあげるが、知ったことか。そのまま道場の真ん中まで引きずって行き、その場で顔面に膝蹴りを叩きこむ。
もう声をだせずに動かなくなる野郎の後頭部に、俺は正々堂々のかかと落としを食らわせてやった。
「はい、これでいいですか、皆様?」
俺は動かなくなった野郎から目を逸らし、周囲の連中に声をかけた。
「一対一。テコンドーの技で勝負をつけるって約束だったはずだ。これで文句ないな?」
「ふざけるんじゃねえぞ!」
どこかの誰かが怒鳴りつけてきた。注意して見ると、誰かがどうとかじゃない。ここにいる連中、全員が殺気立った目で俺をにらみつけていた。
「アンナの反則じゃねえか! 麺玉に指を突っこむってどういことだ⁉」
「俺はテコンドーの技で勝負をつけるって約束をしただけだ。だから、その約束は守った。それ以外のやり合いで、喧嘩殺法を使ってはいけないなんて約束はしてないはずだ」
「おまえ、黙って聞いてれば」
俺の返事に、周囲の連中が凶悪な顔で立ちあがった。予定通りだったな。これで、こいつらが先に突っかかってくれば、正当防衛ですべて片付く。
「なんだてめえら? 一対一って約束を破るのか? だったら、これは本当の喧嘩になるぞ」
俺が殺すレベルの本気になったら、10人くらいは特に怖くない。眼球突きと禁的蹴りを意識しながら、俺は連中をねめつけた。
これで、この部室は俺のものだ。

こんなかな