>>27
拝読しました。

人形たちと心を通わすハートフルストーリーと思ったら一転、
はらはらさせられるサスペンス仕立てで面白く読ませていただきました。

意見を求めているようですので、
冒頭から順に感想と指摘をさせていただきます。

プロローグ
雰囲気はありますが、読者の可読性を落とすだけの良くある失敗パターンになっています。
プロローグと一章に完全に緩急をつけてプロローグの印象だけ残すか、
(=あとで読み返すとそういう意図があったのか、という作品は良くありますよね)
ある程度登場人物の背景が分かった後、幕間として登場させる方が無難だと思います。
現状では作品の雰囲気を伝えることも、伏線を残すことにもうまく繋がっていません。
その失敗している大きな理由としては、プロローグと一章のノリが基本的に一緒だからです。
だったら一章冒頭から始まってもこの作品の雰囲気は十分に伝わります。
同じテーマとテンションをあえて読みづらくして、読む文量をただ増やすのは作品としてはマイナスに捉われやすいです。
現状では設定の開示にも、登場人物の具体的で客観的な説明にも一切繋がっていませんよね。
私個人としては『厭世的な人物』というのは好きなのですが、
一般的にはあまり刺さらずに「なに偉そうなこと言ってんだ」と思われてしまい、
大事な冒頭で作品イメージをマイナスからスタートさせてしまう諸刃なプロローグだと思います。

では、プロローグとしてではなく、このシーン本体としてとらえた場合。
フゥテの回想にみせかけて、クウルの回想である。というミスリードをしたいというのは分かります。
しかし、それをしたところでなにがあるのかと聞かれても、別段なにか感情を揺さぶるようなことは起こっていません。
クウルがどうして狂気じみた行動に至ったのか? の解答にはなっていませんし、
博士に対する恋愛感情の伏線になっているのか? と問われても、そこまで直接的な描写ではありません。
物語後半で語られる博士とクウルの邂逅シーンの、ただのクウル側の描写で終わってしまっています。
それをするとしてもなにかしらの新情報が無ければ、シーンとしての必要性に欠けてしまいます。
(唯一金色の指輪をしている、ということは判明しますが)
なんとなくですが、最初はフゥテの回想として書いてたけど、クウルの回想にしたら面白いかな?
と思って急遽変えたような印象を受けます。

一章
リアンとフゥテの触れ合い、そして病状が悪化してからの立場の逆転。
リアンは人形らしさ、フゥテは人間らしさが出ており、とても良い流れでした。
しかし、リアンがフゥテに尊敬を抱く理由が少し弱いように感じます。
これは事件が無く、メインストーリー軸の進行をほぼ会話だけで済ませているためだと思われます。
リアンが博士を通してフゥテを意識するのは理解できますが、それがフゥテ個人を意識する描写にまでは至っていません。
リアンがフゥテを強く意識する(ドラマティックな)シーンが必要だと思われます。

二章
一転してフゥテの激情が前面に出ているのは、一章と印象ががらりと変わって読み味に良い意味で変化をもたらしてくれています。
一点あげるとするならば、黒い化け物の視覚イメージが付きづらいのと、
島民全体の黒い化け物に対する迫害の度合い
(いきなり殺そうとするほど? という疑問が出てきてしまう)
が足りてないと感じるところでしょうか。
なかなか難しいですが、アミの両親の凶行を裏付けるためには、
黒い化け物の伝承部分の設定開示を早く、かつ島民の恐怖を煽る形でする必要があると思います。

続きます。