安価・お題で短編小説を書こう!8
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安価お題で短編を書くスレです。
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■前スレ
安価・お題で短編小説を書こう!
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1508249417/
安価・お題で短編小説を書こう!2
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1511408862/
安価・お題で短編小説を書こう!3
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1522770910/
安価・お題で短編小説を書こう!4
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1529860332/
安価・お題で短編小説を書こう!5
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1541947897/
安価・お題で短編小説を書こう!6
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1557234006/
安価・お題で短編小説を書こう!7
https://mevius.5ch.net/test/read.cgi/bookall/1572191206/ 【レンタルお姉ちゃん】(2/3)
「僕ね、この近所にある飲食店はちゃんとレビューとかで調べて、良い店をきちんと把握してるんだ!」
「へえ、なかなか几帳面で偉いわね」
「でしょ?もっと褒めてほしいな」
そのラーメン屋に入るとヒロトは豚骨、カナミは醤油ラーメンを選ぶ。
「おっちゃん、どっちもネギとメンマをマシマシでお願い!」
「はいよっ!」
そこのラーメンはとても美味しく、カナミもとても満足気な様子だった。
一方その頃、ケンスケは家に帰る途中で公園に立ち寄り、キーコーと音を立てながらブランコに座っていた。
「おっ、ケンじゃねえか!」
「ハヤト兄!」
近くを通っていたハヤトがケンスケに気付き、駆け寄ってきた。
「あれ、今日は大好きなお姉ちゃんと一緒じゃないのか?珍しいな、いつもセットなのによ」
「お姉ちゃんはちょっと友達の頼みで明日まで家にいないんだ…」
「ん、どういうことだ?」
・・・・・・・・・・・・・・
お昼を食べ終えた後、カナミとヒロトは近くの繁華街をのんびりと散歩していた。
「お姉ちゃんと一緒に散歩はすっごく楽しいな!」
「そう言われると嬉しいわ」
「僕、両親が共働きであまり家にいないし、一人っ子だから余計に寂しいんだ…」
「それは辛いわね…でも明日までは私がそばにいるんだから安心して」
「うん!」
のんびり楽しくおしゃべりしながら散歩していると、いつの間にか夕方になっていた。
夕飯もヒロトが知っている行き先の美味しいレストランで済ませる。家に戻ると、ヒロトはカナミをリビングに案内する。
「お姉ちゃん、何か見たいアニメの映画とかある?」
見たいDVDを選ぶとディスクを入れ、リビングのソファーにもたれて楽しむ。
「とっても面白いわね!」
「まるで映画会みたいだよねアハハ!」
映画を楽しんだ後、風呂に入って歯を磨き、カナミは持ってきたパジャマに着替える。
「今日はとっても楽しい一日になったね、明日も良い日になるといいな」
「そうね!それじゃあもう寝ましょうか」
ヒロトが敷いてくれた布団に入り、カナミはスヤスヤと眠りにつく。
午前0時の深夜、カナミは突如ただならぬ気配と殺気を感じて目を覚ます。
目を開けると、自分が寝ている布団のすぐ隣に包丁を持った少女が立っているのに気付き、カナミは一瞬心臓が止まりそうになる。
「あら、目を覚ましたようね」
「あ、あんたは6年の西口トモエ!と、ということはまさか!」
「そのまさかだよ!」
そのヒロトは、なんとあの意地悪で傍若無人な6年女子の一人である西口トモエの弟だったのだ。 【レンタルお姉ちゃん】(3/3)
「ひ、一人っ子というのは全くの嘘だったのね…!」
「そうだよ。僕の大好きなお姉ちゃんがどうしても君を完膚無きまでに叩きのめしたがってるんだ、協力しないわけがないだろ?」
「そうよ。七尾、あんたはまんまと私達の罠にはまったというわけ」
「ケンスケも僕に姉がいるってこと全く知らずに、お願いを聞き入れるんだから本当バカだよね」
「さあ観念しな!」
包丁を片手にトモエがカナミに迫ってくる。逃げる場所などどこにもなく風前の灯火、まさに絶体絶命!と思った次の瞬間だった。
「七尾ー!」
「お姉ちゃーん!」
家のドアを力合わせて蹴り飛ばし、ハヤトとケンスケが中に突入してきた。
「ケンスケ!それに宮坂君!」
「ヒロト、まさかあの西口トモエの弟だったとは全然知らなかったよ…!友達だと思ってたのに裏切ったんだね!」
「そんなのお前に教える義理なんてあるはずないだろ、ケンスケ。でも何で急にそれが分かったんだよ」
「俺がお前らが陰でこそこそと話し合ってるのを見たんだよ」
つい先日、ハヤトが休み時間に体育館の近くを通った時、その陰でヒロトとトモエが何やらこそこそと作戦を練っているのを見て、とても怪しんでいたのだ。
「絶対何かとんでもないことをしでかすと思ってたけどやっぱりだったな!」
「まあ今更気付いても遅いわ、七尾はここで最期を迎えるのよ!」
「そうはさせるか!」
ハヤトは勢いよくジャンプすると、トモエの脳天に目がけて踵落としを食らわせる。
ギャー!の悲鳴と共にトモエはそのまま倒れてしまい、それにヒロトが動揺する一瞬の隙を狙ってケンスケが飛びかかり、彼を取り押さえる。
ハヤトは急いで警察に連絡し、駆けつけた警察によってトモエとヒロトは逮捕されたのであった。
「七尾、ケガはないか!?」
「大丈夫よ、本当にどうもありがとう!」
「友達だと思っていたのに、お姉ちゃんの命を狙っていただなんて…。お姉ちゃん、僕が騙されたせいで危険な目に遭って本当にごめんね…」
「ケンスケはちっとも悪くないわ、気にしないで」
気付くと既に太陽が顔を出し、朝が来ていた。
「じゃあ気をつけて帰れよ、また月曜に学校で会おうな」
「うん!本当に色々どうもありがとうね宮坂君!」
「なんか悪い予感がしてたんだ、第六感というやつさ」
そう言うとハヤトは去っていき、カナミとケンスケは家路につくのだった。
「お姉ちゃん、早く帰ろう。お母さんもお父さんも心配しているだろうし」
「そうね!」 >>16
今回は狂気との対決!
『レビュー』で調べたラーメン屋で『マシマシ』、『午前零時』の危機一髪
昼間はただデートしてただけw、からの斬新な手口、最後は安心の救出劇でした >>19
感想ありがとうございます!
話が進むに連れて狂気度がどんどん上がってきているなあ、と確かに書いてて思いましたw
それでもどんなお話も最後はなるべくハッピーエンドで締め括る、それが私の小説を書く上での信条です
今回も楽しんでいただけて本当に嬉しいです! >>2
お題:『トライアル』『レビュー』『クリスタル』『マシマシ』『午前零時』
【トライアルセクション】(1/2)
埠頭は、午前零時を過ぎたと言うのに、煌々と灯りがともり、疎らであるが人影も出ている。
都内へと運ばれる物資が、次々と運び込まれ、湾岸用リフトが絶え間なく動いていた。
「大忙しだな、仕方がないが……」
その、復興の為の支援物資の積み降ろしを尻目に、男は、寂れた倉庫街へと歩みを進める。
待ち合わせ場所である倉庫へと赴いた天津 恒は、その廃墟然とした佇まいに眉根を寄せた。
「本当に、ここで合ってるのか?」
待ち合わせは午前零時三十分、場所は湾岸倉庫17番。記憶と照らし合わせた場所は、確かにここだ。
「待っていましたよ? 天津さん」
やけに耳に残る老人の声に、恒は、ビクリと肩を震わせ振り返る。
いつの間にそこに居たのか、老人は杖をついた姿勢で佇んでいた。
「あんたが……あー」
「はい、依頼人の山田 太郎です」
あからさまな偽名に恒が溜め息を吐く。
しかし恒は、ここに仕事をしに来たのだ。特に彼の場合、依頼人が訳ありと言うのも良くある事だった為、その事はスルーする事にした。
山田に連れられ、倉庫へと入る。と、途端に地面か揺れ、倉庫中央にポッカリと穴が開いた。
山田は躊躇うことなくその穴に入って行く。
恒も、渋面を作りながらも、その後に続いた。 【トライアルセクション】(2/3)
******
クリスタルガラスで広く視界を取られたエレベーターで降りた先に有った物に、恒は驚きのあまり息を飲んだ。
20m近い人形のそれは、彼の認識に間違いがないのならば、“ロボット”と呼ばれる物だろう。
「……何だ? 映画の撮影でもやろうってのか?」
「それも楽しそうですがね、貴方にお願いしたいのは、アレのパイロットですよ」
「!! ……冗談だろ?」
「本気です」
天津 恒と言う男は運び屋だった。今まで、有りとあらゆる手段、乗り物を使って、頼まれたモノを運んできた。
その為、今回も、その類いだろうと思って来たのだが……
「いや、流石に筋違いだろう? 俺は、単なる運び屋で……」
「謙遜しないでください、我々とて、色々と調べましたよ? バイク、自動車、航空機から船舶、果ては重機まで自在に操り、有りとあらゆる場所へ荷を運ぶ」
「買い被りすぎだ」
確かに恒は、あらゆる乗り物を乗りこなし、その、依頼達成率は100%に近い。
だからと言って、ロボットの操縦など、あまりに毛色が違うだろう。それに……
「コイツに乗せようって事は、つまり、アレと戦えって事だろう?」
「はい、その通りです」
この所、日本にはエイリアンが襲来していた。
全長20m近い、その来訪者は、日本全国に降り立っては、何かを探すかの様に荒らし回っていた。
各国は、当初こそ、このエイリアンに対処すべく動いていたが、彼等の目的が日本であると分かった途端に、軍を引き上げ、全ての対処を日本に任せる事にしたのだ。
それでも一応、支援物資を日本に送る程度の援助はしているのだが……
日本政府は、このエイリアンに対抗する為、国防相だけでなく、民間にも広く対応策の依頼をし、各企業がそれに応えた。
この、山田からの依頼も、そう言った物の1つだろう。
「無茶を言う。第一、ここまで作ったんだ、テストパイロットだって居たはずだろう?」
「いや〜、お恥ずかしい話ですが、先任は寿退職致しまして……」
「えっと、おめでとう?」
「授かり婚だそうです、ウチの整備員と……」
居たたまれない空気に、恒が視線を逸らす。
「お願いします!! 国防相のトライアルまで、1ヶ月を切ってしまったんです!!」
「いや、同情はするが、さすがの俺も、ロボットの操縦なんか自信ないって!」
「大丈夫です! 調査の結果、貴方か一番適正があったのです!!」
そう言えば、恒の事を調べたのだと山田は言っていたか。
確かに今までも、命ギリギリの仕事はしてきた。しかし、ロボットに乗ってエイリアンと戦うと言うのは、勝手が違い過ぎる。
「悪いが、他を……」
「料金はマシマシ! 特別手当てと、危険手当ても付けますので!! お金が必要なのでしょう? 妹さんの……」
その言葉に、恒の動きが止まる。
「当然、もしもの時の、保険も付けます」
「そこまで調べたのか?」
「…………」 【トライアルセクション】(3/3)
渋面を作る恒とは対照的に、山田が笑っていない笑みを作る。
恒は、舌打ちを1つすると、降参だとばかりに両手を上げた。
「分かったよ、アレに乗って、宇宙人をブッ飛ばせば良いんだな?」
「あくまで、実践テストです。テストの結果いかんでは、そのまま正規パイロットと成っていただいても構いませんよ?」
******
ブスッとした顔で、パイロットスーツの恒がロボットに乗り込む。
一週間の訓練で、恒は、このロボットの特性は掴んでいた。
そして今日、初の実戦である。
エイリアンが襲来したからだ。
コクピットが密封され、シリコンリキッドが充填される。
(何度体験しても慣れんな、これは)
それでも、衝撃を吸収するこのリキッドがなければ、恒の命に関わるだろう為、我慢するしかない。
コクピット内がシリコンリキッドで満たされ、水中にも拘らず呼吸が出来るようになると、恒は、操縦用の水晶を握った。
網膜に直接映像が投射され、恒の視界がロボットのソレとリンクする。
『では、発進シーケンス開始します。良いですか? 天津さん』
(オッケーだ、何時でも良いぜ!)
『あ、後、帰還後は、直ぐにレビューを提出してくださいね?』
(発進直前に、気を削ぐ様な事、言うんじゃねぇよ!!)
管制室で、クスリと笑う山田を恒は感じた。
『では、ご無事にお戻り下さる事を願っています』
(了解だ!! 天津 恒、ゲイル・バインダー、出る!!)
もしかしたら、初出動で緊張する自分の力を抜かせる為の、彼なりのジョークだったのかもしれないな、等と考えながら、射出された恒は、まだ視界に捉えられぬエイリアンを睨み付けたのだった。 お題→『トライアル』『レビュー』『クリスタル』『マシマシ』『午前零時』締切
【参加作品一覧】
>>5【洞窟の中の冒険】
>>11【変態ストーカー、その名はノーマン】
>>16【レンタルお姉ちゃん】
>>21【トライアルセクション】 ではでは、今回も通常お題5つでお願いします
お題安価>>27-31 ☆お題→『恐竜』『コネクト』『満月』『カブ』『新生活』から1つ以上選択
☆文字数→3レス+予備1レス以内に収めれば何字でも可。
1レス約2000字、60行が上限。
☆締め切り→4/12の22時まで。
締め切りを過ぎても作品の投稿は可。
【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】 なんかよく分からない組み合わせw
あと様子を見て、次回か、その次は、企画お題をやりたい・・
作品もお題もありがとうございます
8スレ目もどうぞよろしく〜 >>11
本当に怖いストーカー被害ですね
相手の心情をおもんばかる訳でもなく
身勝手な想いを一方的に押し付けるのは愛情でも何でもないですよね
>>16
例え、どれ程憎いと思っていたところで
実際に手を出してしまったらアウトですね
ソレをした時、その後どんな事に成るか、想像できないのは痛ましい事です >>2、一発目から供養枠で申し訳ないです
使用お題→『トライアル』『レビュー』『クリスタル』『マシマシ』『午前零時』
【コートの向こう側に】(1/4)
最後のカードは『バーサーク・ブレイズ・ライオン』だった。めくられると同時に立ち上る霊気。
「これでダメージマシマシだぜ!」
百獣の王。その姿を借りた召喚獣が、その場に出現する。一度だけ大きく咆哮(ほうこう)すると、それは瞬く間に形を失い、光を放つ粒子となって、対戦相手のアバターに吸い込まれる。
「今度こそ、俺が勝つ!」
カードの力を取り込んだアバター。そのたてがみを震わせ、闘志もあらわに拳を構えると、全身から炎が吹き上がった。
「さあ、どうする。残りのカードを使うよな! なあ!」
もちろんそのつもりだけど、もう少しだけ引っ張ってもいいだろう。
「使わないなら遠慮なく行くぜ! オラァ!」
その拳は、速くて、重い。だけど。
「オラ! オラ! うらあ! うぉああああ!! なぜ! 俺の! 届かない! パンチが!」
まだまだ、だね。私のアバターは攻撃をすべて回避する。一発でも食らえば、たちまちノックアウト。かすっただけでも炎に焼かれてしまうだろう。
「ああああ!!」
ラッシュに続けてキックも飛んでくる。不意打ちのつもりだろうけど、全部見えてるよ。落ち着いてよける。
相手の動きが止まる。こちらは相手から少し距離を取る。
「じゃあ、そろそろ、今度は私から行くよー!」
伏せられたカードは残り二枚。私はその両方を同時にめくる。
「ララ、レレ、出番だよっ!」
『あいよ、ポン!』
『よしきた、コン!』
「またそいつらかよ!」
コートの反対側から文句が飛んでくるけど。
「いいでしょー、これが強いんだから! 対策してないそっちが悪いのよー」
かわいくデフォルメされた、タヌキとキツネの召喚獣。『スウィフト・ファントム・ラクーンドッグ』と『ソニック・ブレード・フォックス』だ。二匹は一瞬で分解され、その光の粒は一つに混ざって、私のアバターへと流れ込む。
「さあー、覚悟しな!」
「くっそー! 俺は負けねえ!」
相手の攻撃が再開される。いよいよ勢いを増した炎と、それをまとって繰り出される神速のパンチは、しかし、今やちっとも怖くない。
拳が追い付いた、それは残像。私のアバターは駆け回る。火炎を吹き消す音速の剣(つるぎ)、カードで強化された短剣を相手のリーチぎりぎり範囲外からたたき込めば、面白いようにダメージが入る。
「これで……終わり!!」
カードのアクティブスキルを発動する。残像は分身となり、迷子の猛獣を閉じ込める。切っ先を一斉に振りかざすと、それを無慈悲に突き立てた。
『対戦終了、りこぢゃよの勝利です』
「あああー!! また負けた!」
『お疲れ様でした』
*
「ちくしょー、なんで勝てねえんだ……」
そのままコートに座り込んで、対戦相手、四十万(しじま)レオンが愚痴をこぼす。
「だからさー、パワータイプにこだわり過ぎなんだって。いくら強い攻撃だって、当たらなきゃ意味ないんだから」
「うるせー。俺が腕力を捨てたら、それは俺じゃねえよ」
腕力……つまりは筋肉馬鹿だ。そのこだわりも、嫌いじゃないけどね。
「じゃあ、もっとうまくなろ。それで次こそは、あたしを倒してね」
「おいレオン、莉子(りこ)、終わったんなら早く場所空けろー。次だ、次」
「おーう、悪い」
せっつかれて、のろのろと立ち上がるレオン。そこで私はふと、彼の向こう側、コートの外からの視線を感じる。
目が合った……と、思う。
レオンの肩が持ち上がってきて、視界が遮られる。
「お前さ、トライアルには出るよな?」
「……うん。多分ね。そのつもりだけど」
黒髪ショート。女。捕食者の目。見掛けない顔だけど……どこかで、見たような。
「俺、応援してるから。お前ならきっとプロになれるって」
「だといいけどね。ありがと」 【コートの向こう側に】(2/4)
部活を終えて帰宅する。家の中は薄暗い。
「ただいまー。って言っても、誰もいなけど」
父も母も忙しく、遅くまで帰ってこない。兄は大学進学と同時に一人暮らしを始めたので、家では私一人の時間が多い。
「あっ、お母さんだ」
視界の隅っこで通知が点滅する。視線で操作して、メッセージを開く。
『今日も遅くなります。晩ご飯は適当に食べてください』
作り置きがあったはずだ。冷蔵庫を確認しようとして、次のメッセージがポップアップする。
『部活もいいですが、勉強も頑張ってください。お父さんはああ言ってますが、あなたも大学に行った方がいいと思います』
「……返信。『分かりました。なるべく早く帰ってきてね』」
*
兄の影響で始めたAR対戦ゲーム。『AURA CARD MONSTERZ(オーラカードモンスターズ)』。
実用的なARグラス(現実世界にCG映像をかぶせて表示する、眼鏡型の透明なディスプレイ)が登場して間もなく、専用アプリの一つとして発表された。
その完成度とゲーム性の高さから、ゲーム情報サイトのレビューでは軒並み最高評価を獲得。一大ブームを巻き起こし、ARグラスの普及を大きく後押しすることとなった。
ゲームの公開直後から遊び始めた兄は、対戦相手を必要としていた。それで私を引き入れた。
私は最初、動物のカードを集めるゲームだと思っていた。対戦は『おまけ』。勝っても負けても楽しかった。
やがて兄はこのゲームで遊ばなくなり。私はと言うと、才能があったのだろうか、近所に並ぶ者なし。そのままやめ時を逸してしまい、高校に上がっても、eスポーツ部で、競技として続けている。
*
午前零時。母は帰宅して、今は寝ているようだ。父は、今日は帰れないと連絡があった。
なんだか寝付けなくて、近所の公園まで散歩することにした。公園には対戦用のコートがある。このゲームの面倒なところ。ARグラスだけでは遊べないのだ。
公園の片隅、街灯に照らされたその場所。テニスコートよりも少しだけ狭い。
真ん中に『対戦ステーション』が埋め込まれている。半球状の小さな機械。筐体(きょうたい)の中には、無線の親機と、モーションキャプチャのセンサーが入っている。
「接続、アバターをロード」
『接続が確立されました。りこぢゃよのアバターをロードします』
コートの端に立って、対戦の準備をする。私と対戦ステーションとの間にアバターが立ち現れる。私よりも一回り、頭一つ分くらい小さな人形。デッサン人形を思わせる、曲面と無機質さ。色は淡い黄色。
「オンライン……じゃなくて、トレーニングモード」
『トレーニングモードを開始します』
アバターの見た目は、もっと飾り付けることも可能だ。ただ、カードのエフェクトが派手なので、こちらはシンプルな方がバランス良く見える。
軽くトレーニングメニューをこなす。私の動きに合わせて、アバターも、歩いたり、走ったり、ジャンプしたり。私とアバターの動きは一対一では対応しておらず、私の動きは小さく、アバターの動きは大きくなる。
このプレイヤー側の動き。無関係な人の目には、ちょこちょこと中途半端に映る。そんなこともあって、運動部の人や、場合によっては文化部の人からも、ちょっと下に見られたり。
「……あっ」
「こんばんは」
昼間、学校のコートで私を見ていた人だ。彼女のARグラスが、街灯の光を反射して、クリスタルのようにきらめく。
「この辺りは詳しくないの。引っ越してきたから。地図を見て、家から近いコートを探してきたの」
「……そうなんだ。髪、切ったの?」
「ええ。邪魔してごめんなさい。私のことは気にしないで、どうぞ続けて」
やっぱり。私はこの人を知っている。もちろん初対面だけど。
「あのー、もし良かったら、対戦してくれませんか? 駄目ならいいけど」
そんな言葉が口をついて出た。
「駄目じゃないわ。ただこんな時間だから、一戦だけね」
*
彼女のアバターは真っ白だった。始めたばかりで何も設定していない、初心者のような。
「お待たせ。準備できたわ」
だけどその身のこなしは、一般プレイヤーとは一線を画している。もちろん、私の不格好な動きとも。
「……じゃあ、対戦開始」
「対戦開始」
『対戦を開始します』 【コートの向こう側に】(3/4)
彼女が最初に出してきたのは『スウィフト・フリーイング・ラビット』だった。同時に三連射。一発目、二発目は回避したけど、最後の一発は受けてしまう。
私のカードは『ディフューズ・ミラー・トータス』。最大で二秒に一度、受けた攻撃を無効化する。だからダメージはない。ここまでは想定通り。
今回の相手は、距離を取って小銃で狙撃してくるタイプだ。このゲームの銃は、現実の銃とは違って、射線が全員の画面に表示される。だから、ちゃんと見ていれば、よけること自体は難しくない。
私のアバターは、相手のアバターに突進する。銃撃の直後は、いわゆる技後硬直が発生するためだ。動けないところを狙う。
相手は当然対策をしている。それが最初のカードで、硬直時間を短縮する効果と、任意の方向への逃走スキルを持っている。
「どうかしら」
「えっ!」
二枚目のカード。『トゥイステッド・トラップ・スネーク』! めくるのと同時に、発動エフェクトもキャンセルして、私のアバターを足止めする。
「くっ、このっ!」
私はとにかく短剣を振るう。形だけでも反撃しておかないと、相手は硬直明けに撃ってくる。私の必死の攻撃は、銃身でガードされる。相手はまだ固まってるはずなのに。
逃走スキルは使わずに、相手は悠々と後退する。足止めも解除されるが、突進するには距離がある。
「それじゃあ三枚目」
*
相手のカードは残り一枚。こっちは残り二枚だ。ここまでよく持ったと思う。
「学校で見たときも思ったけど、あなた、なかなかやるね。プロでも通用しそう」
向こうには落ち着いて話すだけの余裕がある。こっちは、ごめん、息が切れている。呼吸を整えてから、ゆっくりと返事をする。
「……やっぱり見てたんだ。って言うか、こんな状態で褒められても、うれしくないな」
ははっ、と、息を吐き出して笑うと、相手も薄く笑みを浮かべた。
「最後。これで勝負」
黒く揺れるエフェクトの中から、ゆっくりと立ち上がる影。『ソニック・リープ・ウルフ』は、彼女の代名詞とも言えるカードだ。
「じゃあ、こっちはこれ!」
『大丈夫かい、ポン!』
『楽しそうだな、コン!』
「いいね! それっ!」
オオカミの牙が迫る。同時に相手は射撃動作に移る。飛ばしたオオカミで相手を押さえて、遠くから一方的に狙撃するつもりだ。こっちはとにかく逃げ回る! 捕まったら終わりだ。蜂の巣だ。
一発。外れ。二発。外れ。三――――
「やあああ!!」
本体に突っ込む! オオカミは残像の方に飛んでいる。分身スキルを発動して、ハンターを取り囲む。
「ふんっ!」
小銃が振るわれて、分身の一体が殴り倒される。返す刀でもう一体。オオカミが戻ってくる、その前に。
分身二体で、前後から斬り掛かる。正面はするりと、背後の方は銃床で受け止められる。駄目だ、次!
「はあああ!!」
残り四体で同時に斬り付ける。相手は銃身を振り回し――――
「…………とどめを刺して」
彼女の体が、突然、がくんと傾いた。アバターの動きが止まる。私も、反射的に動きを止める。
一年前、突然の引退を余儀なくされた、当時のトッププロプレイヤー、黒沢千浪(くろさわちなみ)。その完璧なルックスも相まって、カリスマ的な人気を誇っていた。
引退の原因は、病気とも事故とも言われた。結局それは明かされることなく、彼女は表舞台から姿を消した。
「あなたの勝ちよ。とどめを刺して」
彼女は淡々と要求する。私は動けない。
「なんで――」
「とどめを刺せ!!」
私はびくりと震えた。体が動くようになる。そして短剣を。
『対戦終了、りこぢゃよの勝利です』
なんで。
『お疲れ様でした』
なんで―――― 【コートの向こう側に】(4/4)
「なんで、あなたが泣いてるの?」
気が付くと、目の前には彼女が立っていた。ハンカチが差し出される。
「涙を拭いて。今夜はありがと。楽しかったわ。じゃあね」
*
翌朝、遅刻しそうになりながらも、教室に滑り込む。結局あの後は一睡もできなかった。
すぐに先生が入ってくる。先生が何かを言う。それから、見知らぬ女子生徒が――――
「ええっ!」
「川崎、うるさいぞ」
「……初めまして。黒沢千浪と言います。よろしくお願いします」
眼鏡を外して、二度見した。
中途半端な現実に、鮮やかな黒が加わった。 いいとこ取りしつつバトルも書きたいなぁ → 説明説明説明長文
なぜなのか >>39
やりたい事、表現したい事が溢れているからですよw >>40
そうなのかも、、とりあえずなんか一生懸命書いたよ感は伝わったかもですねw
>>21
なんか趣味性が発揮されてる感じw
『午前零時』の埠頭、『クリスタル』ガラスなど、国の『トライアル』、料金『マシマシ』、機体の『レビュー』
結果として独特と言うか、ある種の大人主人公で、世界観と雰囲気にも魅力がありますよね >>32
使用するお題→『満月』『カブ』『新生活』
【シチリアでの新しいスタート】(1/2)
レイチェルはライアンと結婚、彼と共にイタリアにあるシチリアへと旅立った。
そのシチリアでレストランを開業するのがライアンの夢である。そんな彼のためにレイチェルはとことん尽くそうと強く決意していた。
そこで始まる新生活は、レイチェルとライアンにとってまさに夢と希望に溢れているものだった。
「ねえ、ライアン。レストランはどこに建てるか決めてあるの?」
「もちろんだよ、レイチェル」
タクシーに乗り、レストランが建設される土地へと向かう。そこに着くと、既にクレーンやダンプカーなどの重機が集まって建設が始まっていた。
「わあ、もう始まってたんだ!ビックリ!」
「ちゃんと予め下見もしたからね。もう準備は整っているよ」
ライアンはこの時のためにハリウッドで立派な俳優になる修行を積む中、たくさんのバイトを兼業して貯金していたのだ。
「ここで君と一緒にレストランを営業していくと考えると、もうそれだけでワクワクして楽しくてたまらないよ」
「うん!私もライアンとずっと一緒にいられると思うと、それだけですっごく幸せ!」
「レイチェル…!」
レストラン兼マイホームが完成するまでの間、2人は近くにあるアパートを借りてそこで住むこととなった。
「お待たせレイチェル!今日はニシンのフライとカブのピクルスだよ!」
「待ってましたー!!」
ライアン手作りの美味しい料理にレイチェルはもう夢中だ。
「私、小さい時からカブが苦手なんだけど、ライアンがこうピクルスにしてくれると大丈夫なのよね」
「ありがとう、それで君の好き嫌いが直ると思うとなんだか嬉しいな」
「ライアンがちゃんと栄養のバランス考えてくれるから助かるわ。私、料理が下手で一人だった時は冷凍食品中心で栄養が偏りがちだったから」
料理を作るのが下手なレイチェルにとっては、まさにライアンは心強くて頼もしい存在である。
彼には秘密にしているが、4キロほど太ってしまって必死にダイエットしていた時期があった。
「もうライアンの料理最高!」
「でも食べ過ぎちゃダメだよ、アハハ」 【シチリアでの新しいスタート】(2/2)
夕食を食べた後は、軽く近くまでのんびりと散歩を楽しむ。今夜は大きな満月だ。
「綺麗な満月ね」
「大学生で一緒にキャンプに行った時も、確か満月の夜空で美しかったよね」
「うん!またあの時みたいに一緒にアウトドアに行こうね、ライアン」
「もちろんさ!」
アパートに住んでいる間、レイチェルは近所のスーパーマーケットでパートとして働く一方、余興でのギター演奏の練習に励んでいた。
「いいね!それにしてもレイチェルって楽器を扱うの本当に上手だよね」
「私のお爺ちゃんが若い頃ピアニストで、それで興味持ってピアノを弾き始めたのがきっかけなの」
数ヶ月後、注文していたウエイターとウエイトレスの制服が届き、ライアンとレイチェルは早速試着する。
「わあレイチェル、すっごく似合ってる!」
「そ、そう?何だか照れちゃうな…」
そして遂に念願のレストラン兼マイホームが完成した。
「遂にできたよレイチェル!これから一緒にレストランを盛り上げて楽しく過ごしていこう!」
「もっちろん!この私がいつもそばにいるから心配しないでね、ライアン」
「ありがとう、僕の可愛いガンマンちゃん。まだ夢の第一歩は始まったばかりだけど、こうやって君と過ごせる日々をずっと待ち望んでいたんだ」
そう言うとライアンはレイチェルをギュッと抱き締め、頭を優しく撫でるのだった。
念願のレストラン生活がスタートした。徐々にではあるが口コミなどで話題を集め、ライアンの美味しくてバリエーション豊富な創作料理だけでなく、
そんな彼が考案したレイチェルによる楽しい余興も好評を博し、今ではすっかり地元で人気のレストランとなった。
「大好きだよレイチェル」
「私もよライアン」
シチリアでスタートしたライアンとレイチェルの新しい生活。
そんな2人に待ち受けるワクワクドキドキのハプニングの数々を一緒に楽しんでいこうではないか。 >>42
シチリアビギニングですね
これから、あの数々の事件を経て、さらに絆が深まっていくのですね
>>41
感想ありがとうございます
ロボットは大好きです
小説を書く前に、フルスクラッチで主役機を作り始めるくらいに(本末転倒)w >>42
正に希望溢れる
シチリアでの『新生活』、『カブ』のピクルス、今夜は『満月』
楽しいなぁ・・、キャラがしっかりしてるので、こういう振り返り的な話にも違和感がないですよね >>44
>>45
感想ありがとうございます!
レイチェルがライアンと結婚してシチリアに旅立ってまだ間もない頃の小話です
ここからあの忘れられない楽しい思い出、トラブルやハプニングの数々が始まると同時に
レイチェルとライアンの絆が強く結ばれていき、最高の夫婦になっていくのです
今回も楽しんでいただけて本当に嬉しいです! >>34
少し遅れてしまいましたが、こちらも感想ありがとうございます!
あのレイチェルへのただならぬ執念が大変な事件へと繋がっていくというわけです
もしノーマンがナタリーと手を組んだら…というIFを想像したことがあるのですが、あまりに怖くて身震いしてしまいましたw
そして意地悪で傍若無人な小6女子軍団の暴走はまだまだ止まりません
姉弟とハヤトはそんな彼女らの暴虐の数々を完全に止められる日は果たして来るのか、乞うご期待!
どちらのシリーズも楽しんでいただけてすっごく嬉しいです! ところで次回ですが、先日ご提案のあった、2つ固定+1つ選択をやろうかと
固定の2つは互いに組み合わせやすいものを、選択のは固定用とは離れたものを3つ取ります
先に3つ取って、固定用2つを後に、合計5つ
特に最後の人は自由度が低いと思いますが、とりあえずやってみたい ☆お題→『恐竜』『コネクト』『満月』『カブ』『新生活』
「ダイジョーブッ!」
コーヒーメーカーのスイッチを入れる。
カーテンを開け、朝の暖かい日差しに一分間当たる。
洗濯機を回し、掃除機を手に取る。
掃除を終えると、コーヒーをカップに注ぎ、テレビのスイッチを入れる。
後は午前九時頃までテレビを眺め、コーヒーを啜る。
そんな朝木道代の朝は夫の死後も変わることはなかった。
昨年、道代の夫である寿貴が亡くなった。
車で川に転落するという単独の交通事故、即死だった。
警察からの聴取を受けた。
恐らくは自殺や他人の関与という線を考慮していたからだろうと道代は思った。
結局、疑いはなく寿貴の死は事故として処理されて今日、つまり一年後の命日に至る。
インターフォンが鳴った。
珍しいこともあるものだと、道代はインターフォン血備え付けてあるカメラをのぞいた。
「あ、おはようございます。朝早くに申し訳ありません」
そこに映し出されたのは、気弱そうにスーツを着た若い男だった。
「どなた?」
道代の問いに男は刈り上げた頭をかきながら気まずそうに笑う。
「保険調査員の木場、と言います。保険金の関係で本日はお伺いさせていただきました」
道代は短く息を吸い込んだ。 「ダイジョーブッ!」ニ
「どうぞ」
声は震えていなかったはずだ。
道代はそう思いながら、玄関のドアを開いた。
「お時間を取らせて申し訳ありません。少しだけ、お時間を頂けますか?」
「ええ」
拒否感は顔に出ていなかっただろうか。
不安が次から次へとやってくる。
椅子を勧め、木場にコーヒーを渡す。
「ブラックですが」
「ありがとうございます。頂きます」
口をつけた木場は目を見開いた。
「……おいしいですね!」
これに関しては道代に悪気はなかった。
元から濃いブラックしか飲まないのだから。
「しかし、ご立派なお宅ですねぇ。そういえば旦那様は銀行員だったとか」
どきりとした。
「お話、初めていただけますか?」
話を断ち切った道代に木場はキョトンとしたがすぐ様柔和な表情に切り替わる。
若いのか、慣れているのか。
道代には見極めきれなかった。
「そうですね。では、始めましょうか」
木場は鞄から出した書類の束をテーブルに並べると手を組んだ。
「率直に申し上げますと」
木場は指を伸ばした。
細く、骨張っていた。
「今回の保険金に関しまして少しばかり疑問がございますのでそれについて確認させていただきたく本日はお伺いした次第なのです」
「事故のはずですが」
「その割にあなたは新生活を満喫してらっしゃるようですね」
道代は強くテーブルを叩いた。
「私を疑ってらっしゃるんですか!?」
「まさか。むしろ私はその事故の点を疑っているんですよ」
木場の丸い目が細まるのを見て、道代は血が引いていくのを感じた。 「ダイジョーブッ!」三
木場は頭を下げた。
「気を悪くされた点につきましては謝罪いたします」
しかし、すぐに顔を上げる。
「話を戻しましょう。これは旦那様が生前親しくされていたご友人から聞いたお話なんですが、旦那様は博物館、それも恐竜の展示がお好きだったようですね」
「何が関係あるんですか?」
事実だった。
道代は寿貴に付き合って博物館に何度も足を運んだものだった。
「あるんですねぇ、これが。このご友人が言うには博物館にご一緒した際、旦那様は自分はティラノサウルスのようだ、と言っていたと。聞き覚えはありますか?」
「……いいえ」
嘘ではない。道代は聞いたことがなかった。
「左様ですか。ちなみにですがティラノサウルスはこれまでのイメージと違って屍肉を貪るハイエナのような生態だと言われているようです」
「何を言っているんですか?」
道代の声は震えていた。
木場は構わず話を続ける。
「貴方にその言葉を言わなかったのはきっと、これまで培っていたご自分のイメージを崩したくなかったのかもしれませんね。なんせこのご友人、消費者金融の方なんです。ご主人は多額の借金を抱えていたようですね。プライベートで株(カブ)式の運用を失敗した結果で」
借金のことは道代も知っていた。そして、寿貴はプライドが高い人間だったから、木場の言うことも正しいだろう。
「さて、この事実をコネクト、つなげて行きますと私は一つの推察に行き着いたんですね。もしかしたら、と言う話なんですけどね」
道代はポケットの中にあるスマホを握りしめた。
「奥様あなた、遺書、またはその意を記したメッセージをご主人から受け取っていませんか?」 「ダイジョーブッ!」
誰もいない公園に木場はいた。
ベンチに腰掛け、カップ酒を開ける。
ベンチの空いているところに同じカップ酒を置いた。
「心配しすぎなんですよ、あなたは」
彼は言った。
そばには誰もいない。
「大体見せるわけないでしょ。自殺と事故じゃ話が変わってくるんですから」
置いたカップ酒の表面が揺れる。
「と言っても、あんだけ分かりやすい顔しときながら最後まで抵抗してきたのは正直驚きましたけどねぇ。心配するのもわからなくはない」
木場はカップ酒を煽る。
頭上に見えた満月を散りゆく桜がなぞる。
「もう逝きますか?」
木場の前で旋風が舞う。
桜の花弁を巻き込んだそれは一瞬、人形を模したように見えた。
「ダイジョーブッ! いらん心配せずにさっさと成仏してくださいな。あの人ならあんたがいなくとも生きていけますよ。それに保険金が出れば差し押さえられたお宅も帰ってくるでしょうしね」
吹く風が穏やかになった。
木場は微笑んだ。
「嫌な性分だわ。ホント」
満月の夜、深夜二時。
彼の耳は死者の言葉を運ぶ。
「あのおっさん……」
置いていたカップ酒に手を伸ばすと、それはすでに空だった。 >>32.49.50.51.52
安価忘れておりました。
申し訳ありません。
そして挑戦したはいいけどこのネタは無理がありました
orz >>32
お題:『恐竜』『コネクト』『満月』『カブ』『新生活』
【士官学校の問題生】(1/3)
朝日が窓から差し込み、微睡んでいた意識を覚醒へと誘う。
見慣れぬ天井を眺め、ここが実家ではない事を思い出した。
「あぁ、俺、士官学校に入ったんだっけ」
新生活も始まり、既に数日が過ぎたが、それでも未だに寮生活に慣れたとは言えない。
四人一組で生活するという事で、同年代の友人が増える事を期待していた俺だったが、それは叶わぬ夢と成っていた。
たった1つの事故によって、何故か今、上級士官候補生の寮に連れ込まれていたからだ。
「何をやっているの? 早く起きなさい!! それでも、栄え有るバーケスタ公爵家の従僕なの!!」
「ハイハイ、分かりましたよ!! リンゼお嬢様!!」
朝っぱらからかしましいのが、俺、トウヤ・イチジョウジが仕えているって事に成っているリンゼ・フォン・バーケスタお嬢様だ。
なぜ、“仕えている事に成っている”なんて言い回しをしたのかと言えば、それが全くの嘘だからだ。
******
深紅の髪を靡かせながら、気の強そうな美貌をさらに不機嫌さで染め上げたリンゼお嬢様は、俺の前をカツカツと歩いて行く。
俺は従僕らしく、彼女の鞄も持ち、アクビをしながら後に続いた。
「チッ」
「……公爵家令嬢として、そう言う舌打ちとかどうなんすかね?」
「わ、わたくしは、貴方の事なんて認めてないわ!! お父様が従僕としなさいと仰らなければ、とっとと無礼打ちにしているところよ!! あ、貴方が、ああんな……」
そう言いながら、耳まで真っ赤にするお嬢様。
あぁ、あの時の事を思い出したんだな。
そう、それは俺とお嬢様が始めて出会った時の事だ。
田舎から出てきたばかりの俺は、士官学校の入学式に向かう途中、ちょっとした事故に巻き込まれて、学校への到着が遅れていたんだ。
だから、ショートカットの意味も含めて、学校の周囲に広がる大森林を昼夜を問わず突っ切っていた。
「おっし、これで大分時間短縮できたかな?」
そうやって、もう少しで学校に着くと言う時だった。 【士官学校の問題生】(2/3)
「……魔竜の死骸か?」
俺の目の前に現れたのは5mを越す魔竜の死骸。魔竜は、リュウとは付くが、古代龍とは全く別の系譜で、大昔に居た恐竜の子孫らしい。
要は大型爬虫類だな。
その魔竜の所々焦げ痕の付いた死骸を目にし、なぜ、こんな所にと言う疑問を持つのは当たり前の話だろう。
その時だった。
チャポン。
水の跳ねる音。
俺は警戒を強めながら、水音のした方に歩みを進めた。
魔竜の仲間か、それとも、あの死骸を作り出した方か……
木々の間に出来た、小さな泉。真円の月光に映し出されたそれは……
炎の様な燃える赤髪が真っ白な肢体にまとわりつき、滑らかな曲線を描く身体の表面を弾かれたかの様に水滴が滑り落ちる。
満月の下に描かれたそれは、どんな絵画よりも完成された一枚絵の様に見えた。
だからこそだろう、その絵画に一点の染みを認め、思わず飛び込んでしまったのは。
「危ない!!」
「え? キャアァ!!」
彼女の背後に見えた、魔竜の濁った黄色い目。俺は、飛びかかって来る中型の魔竜と、その少女との間に割って入ると『ワード』を叫んだ。
「コネクト!!」
それは、異次元に干渉し、その次元から力を引き出す能力。そのほとんどは『アームズ』と呼ばれる武器の形で顕現する。
コネクトし、俺は、自分の武器である刀型アームズ「虎徹」を抜き放つ。
水面の満月が割れ、魔竜が両断される。
水月華斬。俺の奥義の1つ。
バシャリと水音が鳴り、魔竜は泉に沈んだ。
「ふう、危なかった」
「コネクト……」
「え?」
既に魔竜は倒したにも関わらず、攻撃態勢をとる少女に思わず俺が振り返ると、そこには全身をアームズで包んだ彼女の姿があった。
「ウソ、だろ?」
アームズの大きさは、そのままコネクト能力の大きさに比例する。
「わ、わた、わた、わたくしの肌をぉ!! 死になさい!! 死んで懺悔をなさい!! この、不埒者ぉ!!」
そう言えば、大型犬魔竜を倒したかもしれない相手を探していたんだったと思い出したのは、彼女のメガブラスターから逃げている最中だった。 【士官学校の問題生】(3/3)
******
“夫と成るもの以外に、肌を晒しては成らず”そんなしきたりが公爵家には有ったらしい。
彼女が激昂したのも、そんな理由があるからだろう。
さて、俺がこうして五体満足でいられるのには訳がある。
彼女は公爵家令嬢で、俺は庶民だ、この、高飛車お嬢様との結婚なんてゴメンだが、そもそも身分が違いすぎる。
だからと言って、公爵様も、俺を無礼打ちにする積もりはないらしい。
そもそも、あんな所で肌を晒していたお嬢様にも非は有るのだ。
そこで公爵様が提案したのが従僕と成る事だった。
詰まりは“下僕は人間の範疇じゃないから見られてもオッケー”って事らしい。
死ぬか、従僕に成るかの二択なら、従僕に成るしかない。
そんな理由で、俺は、リンゼお嬢様仕える羽目に成ったのだ。
******
「何か文句でも?」
「いいえ、何も〜」
そんな会話をしていると、不意にサイレンが鳴り始める。
『魔竜が確認されました。警護官、準警護官は、迎撃の準備をしてください』
士官学校と言えど、軍の下部組織に過ぎない。
その為、こうして魔竜が出た場合には、俺達学生も引っ張り出されるのだ。
もっとも、本来なら入学したばかりの俺は免除されるハズなんだけどね。
まぁ、俺、従僕だし、「お嬢様が戦っているのだからお前か戦わぬとは何事だ!!」って訳。
「行きますわよ!!」
「ハイハイ、了解です、お嬢様!!」
俺の士官学校生活、最初っから問題だらけだ。 >>32
使用お題→『恐竜』『コネクト』『満月』『カブ』『新生活』
【森の向こう側の私たち】(1/4)
森の奥には空き地があって、その周囲は柵で囲まれていた。柵の材料は人骨で、柱の上からどくろが見下ろしている。
空き地の中に目をやると、大きな足、恐竜のように大きな、ニワトリの足が見えた。その足の上に、三角屋根の小屋が建っている。
「すみませーん!」
大きな声で呼び掛けるが、反応はない。恐らく聞こえていないのだろう。
空き地を横切って、小屋に近付く。するとニワトリの足が動き出し、小屋はぐるぐると回転し、こちらに背を向けるようにして止まる。
「すみませーん! アカデミーの方から、来ましたー!!」
再び大声で叫ぶが、返事はない。さてこれはどうしたことだろう。
小屋の正面に回ろうと思い、私が移動を始めると、足が直ちに反応する。私が幾ら歩いても、見えるのは小屋の背中だけ。私が止まると、足も止まり。私が走ると、足も素早く動いた。
歩いて、走って、歩いて。歩き疲れて立ち止まり。そこでようやく、私は教えられた呪文を思い出した。
「小屋よ、小屋よ! 森には背をもって、私には表(おもて)をもって立て」
すると足が動きだし、そしてなんとも都合良く、小屋がこちらを向いて止まる。それで大人しく待っていると、正面の戸が左右に開かれて、そこから老婆が顔を出した。
「誰だい! さっきからうるさいやつだ! あたしになんの用だ!」
「こんにちは、おばあさん! 私、アカデミーの方から来ました!」
老婆が身を乗り出す。
「あー!? どこから来たってー?」
「アカデミーですー!」
「あー、あんたが、そうかー! とりあえず上がってきな! だけど、うそだったら容赦しないからねー!」
正面の戸から中に入る。ごちゃごちゃと物が置かれた室内。薄暗く狭苦しい空間で、老婆の目が光る。
「身分証を出しな」
私は荷物の中から言われた物を取り出す。
「はい……これです」
「ほーう、どうやら本当のようだね。訪問販売かと思ったが。最近多いんだよ、老人を食い物にしようってやからがね」
本当なのか冗談なのか分からないが、だけど、もし本当だとしたら。
「もちろん、そいつら全員、あれさ」
老婆の鼻が、広場の周囲を指し示す。不思議と恐怖は感じない。
「ともかく、怠けず、しっかり、働いておくれ。もしちょっとでも怠けようものなら――――」
こうして私の新生活が始まった。
*
私はケシの実をすり潰す。ごりごり、ごりごり。手作業でやるには面倒な作業だ。
ごりごり。
「――世界――――」
「おい」
ごりごり。
「――――走り出した――――」
「おい」
ごりごりごり。
「――――怖く――」
「おい!」
「はい! ……なんでしょう?」
私は、作業をしながら、ぼうっとしていたようだった。振り返れば老婆が立っている。
「鼻歌をやめな。許諾契約を結んでないんだから」
「えー、平気ですよー。こんなの引用にもなりませんって。お題なんですから、勘弁してくださいよー」
私がそう言うと、老婆は苦虫をかみつぶしたような顔をしたが、それ以上は何も言わなかった。
私は作業を続ける。
「それが終わったら、次は畑に行くぞ。カブの収穫だ」 【森の向こう側の私たち】(2/4)
「……けーき、けーき、まぁるい――」
「だから! やめろと言ってるだろ」
「まぁるいしんがたこ――」
「替え歌も駄目だ!」
私は徒歩で、老婆は臼に乗って、畑まで移動する途中だ。
「シンガータコ? 何にタコ?」
「なんの話だ。タコはお前だ!」
今のところ、老婆には、私を殺したり、追い出したりするような気配はない。
言われた仕事はこなせている。ここまで問題はないはずだ。
「大体、リフレ政策が駄目なんですよー。やる前から分かってたじゃないですか。緊急事態に打つ手なし!」
「知るか」
「そう言えば、こないだスカウトされたんですよねー。JKのコスプレで稼ぐやつです」
「なんだそりゃ。うちは副業禁止だ。ちょっと顔がいいからって、調子に乗るんじゃない!」
恐ろしげな顔の――実際に恐ろしいのだが――老婆に怒られてしまった。
仕方がない。テレビもネットもスマホもない。ソシャゲアニメなど見れるはずもない。
「短期取引で――」
「やめとけやめとけ。素人がアルゴリズムにかなうもんか」
*
畑に着いた。森を切り開いたのだろう、小さな畑には、大きなカブが植わっていた。
老婆は、カブをちょっと引っ張ってから、こちらを向いて言った。
「これを抜くのは、少しばかり骨が折れそうだ。あたしがカブを引っ張るから、あんたはあたしを引っ張るんだ」
私が老婆を、老婆がカブを、引っ張って、引っ張って、カブは抜けなかった。
「誰か! 誰かいるかい。手伝う者はいるかい!」
老婆が叫ぶと、しばらくして、誰かが森の中から顔を出した。それはおじいさんだった。
「お呼びですか、おばあさん」
「ああ呼んだよ、おじいさん」
「おばあさん、こちらの方はどなたですか?」
私がそう質問すると、その時初めて、おじいさんは私に気が付いたようだった。
「なんだ君は!?」
老人の頭の中で、何かが切り替わったのだろう。猫背気味だった背筋を真っすぐ伸ばし、仁王立ちした老人が、私に向かって一喝した。
「えっと、アカデミーの方から来ました」
「アカ……なんだって? よう聞こえん! もっと大きな声で話せ!」
なるほど、私の声が小さかったのかと思い、私は腹に力を込めて言い直す。
「アカデミーです!」
「あ!? なんだって?」
そんなに聞こえないものだろうか。私は、不審に思いながらも、声を張り上げた。
「ア、カ、デ、ミー、の、者、です!!」
「あー!? 何を言ってるのか、全然聞こえん!」
そんな馬鹿な。そりゃないだろう。その時、老婆が口を開く。
「アカデミーから派遣されてきたんだよ。あたしの手伝いをしてるんだ」
老婆がそう告げると、老人の様子が再び変化した。私に気が付く前のぼんやりとした表情に戻ると、優しげな口調でこう言った。
「そうか、アカデミーか。それは、ご苦労さん」 【森の向こう側の私たち】(3/4)
「それじゃ、あたしがカブを引っ張るから、あんたはあたしを、あんたはこの娘を、それぞれ引っ張るんだ」
老人が私を――――
「変なとこ触りました?」
「触ってないよ」
――――私が老婆を、老婆がカブを、引っ張って、引っ張って、カブは抜けなかった。
「誰か! 誰かいるかい。手伝う者はいるかい!」
そう老婆が叫んだ。
「それで、このおじいさんはどなたなんでしょう?」
誰かが出てくるまで、雑談をして待つことにしよう。私はそう考えた。
「当ててみな」
「……ドロッセルマイヤーさん?」
「違う」
「結核で亡くなられた方ですか?」
「違う」
「ヒント下さい、ヒント」
すると老人が口を挟んできた。
「どうも最近、故国では、私を街中に放ったらしいよ」
「……文豪か」
「そうです、私が肺炎で死んだおじさんです」
「お呼びですか、おばあさん」
その時、また誰かが森の中から顔を出した。それはワニだった。
「ああ呼んだよ。遅かったじゃないか」
「おばあさん、こちらの方はどなたですか?」
そのワニは、二足歩行で、手にはアコーディオンのような楽器を持っていた。
「ワニさ。見りゃ分かるだろ」
「本物ですか? 死んでるんですか?」
私が畳み掛けると、ワニが返事をした。
「本物かどうかは分かりませんが、私はまだ死んでいませんよ、多分」
「そのアコーディオンはなんですか?」
「……残念だけど、命日は、年に一度だけなんですよ」 【森の向こう側の私たち】(4/4)
「それじゃ、あたしがカブを引っ張るから、あんたはあたしを、あんたはこの娘を、ワニはこの老人を、それぞれ引っ張るんだ」
ワニが老人を、老人が私を――――
「変なとこ触ってませんよね?」
「もちろん、触ってないよ」
――――私が老婆を、老婆がカブを、引っ張って、引っ張って、カブは抜けなかった。
「誰か! 誰かいるかい。手伝う者はいるかい!」
老婆が叫ぶと、またしばらくして、誰かが森の中から顔を出した。それは娘と若者だった。
「ここは……どこだ。ヘーケの隠れ家か?」
「違うと思いますが……」
「あれっ、ハクアたん……ではないな。あれー?」
「何をごちゃごちゃと言ってるんだ。こっちへ来て手伝いな」
二人は少なからず混乱した様子だったが、老婆に言われるまま、ワニの後ろに付いた。
「それじゃ、あたしがカブを引っ張るから、あんたはあたしを、あんたはこの娘を、ワニはこの老人を、あんたはワニを、あんたはそっちの若いのを、それぞれ引っ張るんだ」
娘が若者を――――
「変な所を触らないでくれ」
「触ってないでございますよ」
――――若者がワニを、ワニが老人を、老人が私を、私が老婆を、老婆がカブを、引っ張って、引っ張って、カブは抜けなかった。
「誰か! 誰かいるかい。手伝う者はいるかい!」
老婆が叫ぶと、すぐに誰かが森の中から顔を出した。その人の頭には猫耳が生え、顔は仮面で隠れ、はんてんのような上着の袖に小麦色の肌が見えた。
「お呼びですかにゃー」
「ああ呼んだよ。早いね」
「おばあさん、こちらの方はどなたですか?」
私がそう質問すると、猫耳の人が答えてくれた。
「にゃーの名前はニャンダモですにゃー。本人ですにゃー。ちなみに、この仮面は、感染症対策とは全然関係ないですにゃー」
猫耳の人が、さっきの娘の後ろに付いた。
「それじゃ、あたしがカブを引っ張るから、あんたはあたしを、あんたはこの娘を、ワニはこの老人を、あんたはワニを、あんたはそっちの若いのを、猫はその娘を、それぞれ引っ張るんだ」
猫耳の人が娘を――――
「もし変な所を触ったら、たたっ切るでございますよ」
「分かりましたにゃー。触らないですにゃー」
――――娘が若者を、若者がワニを、ワニが老人を、老人が私を、私が老婆を、老婆がカブを、引っ張って、引っ張って、カブは抜けなかった。
「これじゃ切りがない。……我がしもべよ、親愛なる友よ、カブを抜くのを手伝っておくれ!」
すると足が三本と、老婆の小屋まで、その場に現れた。
小屋の足が足の一本を、その足が別の足を、別の足が残りの足を、残りの足が猫耳の人を、猫耳の人が娘を、娘が若者を、若者がワニを、ワニが老人を、老人が私を、私が老婆を、老婆がカブを、引っ張って、引っ張って、とうとうカブが抜けた。
抜けたカブは、勢い余って飛んでいき――――
「満月ですにゃー! ムーンライズですにゃー! ……新月ですにゃー!」
――――太陽に張り付いた。
昼と、太陽と、夜が、同時に訪れた。黒い太陽が頂く黄金の冠は、より一層激しく燃え上がった。
「脱獄の物語ですにゃー! ねこのゆめですにゃー!」
こうして大きなカブはすっかり焼き上がった。私たちは全員でカブを食べた。それでみんな丸々と太ってしまい、今でも森の中で、ごろごろと転がっている。 順番待ちがあったとは言え、また完全遅刻・・・
しかも意味不明過ぎる超長文
すみません
作中では伏せてますが、老婆はバーバ・ヤガーです お題→『恐竜』『コネクト』『満月』『カブ』『新生活』締切
【参加作品一覧】
>>42【シチリアでの新しいスタート】
>>49【ダイジョーブッ!】
>>54【士官学校の問題生】
>>58【森の向こう側の私たち】 えーと、では
予告通り、2つ固定+1つ選択の企画をやります
先に3つ、通常お題
先の3つとはなるべく関係『ない』ものを固定用に1つ
固定用の1つとなるべく関係『ある』ものをもう1つ、です
いつものお題安価>>65-67
固定用の1つ目>>68
固定用の2つ目>>69 ☆お題→『絹のドレス』『白いスーツ』+『刺繍』『厳選』『プリンセス』から1つ選択
☆文字数→3レス+予備1レス以内に収めれば何字でも可。
1レス約2000字、60行が上限。
☆締め切り→4/19の22時まで。
締め切りを過ぎても作品の投稿は可。
【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】 今回は全選択できないルールです
『絹のドレス』『白いスーツ』は必ず使い、『刺繍』『厳選』『プリンセス』からは1つだけ
つまり3つ選択
企画の意図としてはアンチシナジーが欲しくて、説明にも書いたつもりだったんですが、伝わってねぇ
シナジーしかねぇ
逆に書きやすそうではあります
ともかく、お題、作品、感想、ありがとうございます
引き続きお題スレをよろしくですー >>49
男は心配し然れど女は逞しく生きるですね
読み終わって、往年の名作漫画『死○くん』を思い出しました
>>58
オールスターな『大きなかぶ』と言った所でしょうか?
スラブのトリックスターは邪悪と言われながらも、何だかんだで主人公を助けてくれる存在ですよねw >>49
これはー、お久しぶりですね(人違いだったらすみません!
奥様の『新生活』、『恐竜』の例え、『カブ』で失敗、事実を『コネクト』、『満月』と桜
やっぱりセンスある、やっぱり『コネクト』は難しかったw
無理があるって感じでもなく、読みやすく面白く仕上がってるのではないかと
>>54
なんやこの現地人主人公ラブコメw
士官学校での『新生活』、『恐竜』の子孫、『満月』の下の彼女、呪文『コネクト』、『カブ』どこwメ『ガブ』ラスター
なんか、、アンラッキースケベ、主人公悪くないのに問題だらけw
難しい『コネクト』も、『カブ』は分かんないですけどw、うまく処理した感じー
>>72
感想ありがとうございます
今回は大甘ですw >>70
使用するお題→『絹のドレス』『白いスーツ』『プリンセス』
【可愛いプリンセスは危険の香り?】(1/2)
今日もさすらいの女ガンマン・シンディは愛馬のサンセットに跨り、広大な荒野の中を颯爽と駆け抜けていた。
次の町へと向かう途中、微かにだが遠くに何かがあるのが見えてきた。
「サンセット、ちょっと止まって!」
シンディは走るサンセットを止まらせる。背中から降りて近づいてみると、白い絹のドレスを身につけた少女が倒れていた。
「こんな所でどうしたの?大丈夫なの?」
ちゃんと息をしている、生きているのは確かだ。体を少し揺すると、その少女は目を覚ました。
「お嬢ちゃん、こんな荒野のど真ん中で何やってるの?」
「私、パパとはぐれて迷子になっちゃったの。必死に探している途中で空腹になっちゃって意識を失ってたみたい…」
「迷子?それは大変ね、もしよかったらパパを探すの手伝ってあげるわよ?」
「ほ、本当!?それは嬉しいわ!」
シンディは携帯している食糧を少し少女に食べさせると、彼女をサンセットの背中に乗せて走り出す。
「自己紹介がまだだったわね。私はシンディ、それからこの子が愛馬のサンセットよ。一緒にさすらいの旅を続けているの」
「へえ、そうなんだあ。私はメアリー、ここから遠く離れた場所にお城があってね、そこに住んでいるプリンセスよ」
「プリンセス?綺麗な白いドレス着ているから貴族の出身かなとは思ったけど、まさかそうだったとはね…」
「うん、パパと楽しく散歩していたら砂嵐に巻き込まれて飛ばされちゃったの。ここ、砂漠が近くて砂嵐が発生しやすくて危険なんだ」
メアリーの言う通り、今走っている地域はサボテンでさえもほとんど生えておらず、荒野というよりは砂漠に近い場所だった。
「少しルートを変えた方がいいわね」
砂漠に入って砂嵐に巻き込まれては大変だ、と思いシンディは南東の方に向きを変えて走ることにした。
途中、休憩しながらも走り続けて4時間ほどが経過した。すると遠くに白い服を着た痩せた男の姿が見えてきた。
「シンディさん、ちょっと止まって!」
メアリーにそう言われて、シンディはサンセットを止める。メアリーは咄嗟に降りると、その男の方に向かって走り出す。
「パパなの?ねえ、パパなの!?」
「も、もしかしてメアリーなのか!?」
その白いスーツを着た、痩せて髭を生やしメガネをかけた男がどうやらパパのようだ。
無事に娘が見つかり、男は嬉しそうにギュッと抱き締める。
「会えて本当によかった!」
「あのシンディさんって人が迷子の私を見つけて助けてくれたんだ!」
「おお、ありがとうございます。私はメアリーの父のマークと申します。どうお礼をすれば良いのやら…」
「お礼なんて別にいらないわ(もしお金をくれるなら、ありがたく受け取るけど)」
その時だった。近くの岩陰から誰かが現れて銃を放ち、その銃弾がシンディの左脚に命中した。
「ウグッ!い、一体何なの!?」
「まんまと引っかかったな、マヌケな女ガンマンめ」
突然、マークが歯を剥き出しにして意地悪く笑い始める。メアリーもニヤリと不気味な笑みを浮かべている。 【可愛いプリンセスは危険の香り?】(2/2)
近くの岩陰に隠れてシンディに発砲したのは、かつて無法者集団のリーダーで腕利きの殺し屋と恐れられたゴールドタンクという男だった。
「ここでシンディを殺せる日が来るとはな!」
「あ、あんた達、私を罠に嵌めたということ?」
「ああ、その通りだ。全ては金のためだからな!」
マークとメアリーは没落貴族で住む場所を追いやられ、いつか必ず這い上がるため
ゴールドタンクと手を組んで、賞金首を片っ端から捕まえては懸賞金を荒稼ぎしていた。
「今、お前を捕まえれば大金を得ることができるのさ!」
「わ、私、賞金首じゃないんだから捕まえても賞金が出るわけないじゃない…!」
「それがさ違うんだよ、これを見な!」
マークが出したのはシンディの顔が描かれた手配書で、なんと100億ドルもの懸賞金がかけられていた。
「だ、誰よ、こんなデタラメな手配書を作ったのは!」
「まあ、それはお前を捕まえた後に教えてやる!やれゴールドタンク!」
ウッス!の返事と共にゴールドタンクは今度は右腕を撃つ。左脚と右腕を撃たれ、血をダラダラと流しながら、シンディは地面に膝をついて倒れてしまう。
メアリーはアハハと笑いながら、倒れたシンディのお腹を勢いよく蹴り上げる。
「グヘッ!!」
「情けない女ガンマンね!哀れすぎて笑っちゃうわ!」
「サ、サンセット、あなただけでもいいから、に、逃げて!」
「そうはさせるか!」
サンセットに向かってある物を放つ。麻酔銃だ。サンセットの意識は朦朧とし気絶、バタッと倒れてしまった。
「サンセット!」
「これでお前の愛馬もどうすることもできない!さあ、お前にもだ!」
シンディも同じく麻酔銃を撃たれ、そのまま気絶してしまう。
「よーし!これでシンディの捕縛は成功だ!」
「やったねパパ!これで私達はまた栄光を手に入れられるのね!」
「もちろんだメアリー!」
シンディをロープ、サンセットを鎖で全身を縛ると大きな荷馬車に乗せる。
彼女達は一体どこに連れて行かれるのだろうか、そして運命や如何に!! >>73
進行様、ご無沙汰しております
過去に十代目未だ休めず等を投稿した者です
そのように言っていただけるとありがたいです
確かにコネクトは難しかったですが、そこはこのスレの醍醐味と言いますか、楽しみがあるというものです
また一休の続編も投稿していきたいと思います >>74
絶体絶命の大ピンチですね
つまりはあの方の出番でしょうか?
>>73
感想有り難うございます
一時期、こんな感じのラノベが流行ってたよなぁと思いながら書いていましたw
かぶは、士官学校が軍の下部(かぶ)組織と言う事でw >>77
感想ありがとうございます!
シンディ、まさに絶体絶命!まさか破格の懸賞金がかけられていたとは…!
「あの方」は果たして出てくるのか?次回をどうぞお楽しみに!
今回も楽しんでいただけて本当に嬉しいです! >>74
早速wと思ったら新しい挑戦が
『絹のドレス』の『プリンセス』、『白いスーツ』の男
一体誰が懸賞金を、本当に100億ドル払う気があるのかw
続きが気になります!
>>76
良かった人違いじゃなかったw、続編も待ってますー
>>77
そこか!! なんで見落としたんでしょう・・ >>79
感想ありがとうございます!
今回は一話で決着せず次回へと続くまさかの展開でした
幼い子供までもが金のために狂気に走るというまさに世紀末です。次回をどうぞお楽しみに!
今回も楽しんでいただけてすっごく嬉しいです! >>70
使用するお題→『絹のドレス』『白いスーツ』『厳選』
【思い出は走馬灯のように駆け巡っていく】(1/2)
レイチェルはとてもワクワクしていた。今日は3ヶ月ぶりにライアンがハリウッドから帰ってくる日なのだ。
大好きなライアンに会えない日々が続き、寂しくて泣きそうになる時もあったが、
そんな時は夢のハリウッドで俳優として活躍する彼の姿を思い浮かべる。
そうすると寂しい気持ちは自然と収まっていき、ニッコリと笑顔になっていくのだ。
それに今はジュディも近くにいる。幽霊であるため姿は見えないものの、ライアンとレイチェルはそんな彼女の気配をしっかり感じ取ることができるし、声も聞こえられる。
「ねえレイチェルさん、今日は久々にライアンさんが帰ってくるんでしょ?嬉しい?」
「もちろん嬉しいに決まってるじゃない!ジュディ、大人をあまりからかっちゃダメよ」
「ごめんなさーい!」
ライアンは今夜の7時頃に帰宅する予定だ。それまでの間、レイチェルは寝室のクローゼットにある色々な衣類の整理をすることにした。
ほとんど着なくなったジャケットやコート等を、近くの小学校で行われるヤードセールに出すために箱に入れていく。
きっちりと整理していく中、レイチェルはたまたま純白の絹のドレス、そして白いスーツを
見つける。
「こ、これは…!」
「レイチェルさん、どうしたの?」
「懐かしいわ、このドレスにスーツ!ライアン、ずっと保管してくれていたのね」
そもドレスとスーツはシチリアへと旅立つ前の大切な結婚式のために、ライアンが厳選して用意してくれたものだ。
「レイチェル、そのドレスすっごく似合ってるよ!可愛い!」
「ライアンもその白いスーツとてもイカしてるわ、まるで王子様みたい!」
お互いに試着した時の会話を思い出す。それを思うと懐かしくて、気付かないうちに目からポロリと涙がこぼれてきた。
あの結婚式はとても盛大で最高のものとなった。
「う、うぅ。ライアン…!」
「ライアンさんとレイチェルさんの結婚式、私も見たかったなあ」
「確かちゃんと録画されたDVDがあるから、また後で見せてあげるわ」
「本当!?やったあ!!」
ジュディが出してくれたハンカチで涙を拭くと、レイチェルはまた荷物の整理を続ける。
するとまた懐かしい服が出てきた。
「あーっ!レイチェルさんがすごく愛用してた黒猫の衣装だー!」
「あ、愛用だなんて…!」
そう、シチリアでレストランを開いていた時に余興でよく身につけていた黒猫のコスチュームだ。
これもライアンが余興をもっと盛り上げるために、厳選して買ってきた物だ。
「ど、どう?ライアン…」
「す、すっごく似合ってるよレイチェル!その猫耳に尻尾可愛いよ!」
「そ、そう?ニャ、ニャーン!」
「レイチェル、最高だよ…!」
また試着した時の会話やその場面を思い出す。
あくまで余興オンリー、自分の本来の姿は女ガンマンだとレイチェルはずっとそう思っていた。
しかし、あるハロウィンの夜、攫われたライアンと奪われたガンマン衣装を取り戻すべく、黒猫の衣装に身を包んで、犯人である市長の女秘書と闘ったのだ。
それ以来、余興だけでなくハロウィンの季節になると着ることもあったが、いつの間にか全く着なくなり、クローゼットに放置したままだった。 【思い出は走馬灯のように駆け巡っていく】(2/2)
「すっかり忘れてたわ…。ライアン、これもちゃんと大事に保管してくれてたのね…」
「私、黒猫姿のレイチェルさん大好き!もしかしたらガンマンのよりも好きかも」
「こ、こらジュディ!あ、あんまりからかうと怒るわよ!」
「えへへ、ゴメンゴメン!でも黒猫姿のレイチェルさんもカッコいいのは本当だもん!」
「あ、ありがとう。そう言われると、何だか、て、照れちゃうわ…」
いつの間にかトマトのように顔が赤くなっているのが自分でもよく分かった。
余興の時以外着るのはあまり好きじゃなくて、身につける度に恥ずかしがっていた。
その時の自分を思い出すとますます顔が赤くなり、湯気が出てきそうな勢いだ。
するとレイチェルは今着ているガンマン衣装を脱ぐと、その黒猫の衣装に身を包んだ。
「ニャーン!私は黒猫のレイチェル、闇夜の戦士よ!」
「レイチェルさん、やっぱり似合ってるよ!」
「ジュディ、今回だけのスペシャルサービスよ!ライアンには秘密にしてね」
「もう見てるよ」
「「へっ!?」」
レイチェルとジュディが後ろを振り返ると、なんとまだお昼だというのにライアンが家に帰ってきていたのだ。
「えっ、確か7時ぐらいに帰ってくるはず…」
「予定より早く終わってさ、帰りの飛行機のチケットも早いのが取れたんだ。レイチェル、またその黒猫衣装を着るなんてビックリだよ」
「えっと、そ、その・・・・ニャ、ニャーン!!」
「アハハ、やっぱり可愛いね!ただいまレイチェル、それからジュディ!」
「おかえりライアン!」
「ライアンさん、すっごく寂しかったよ!」
「ジュディ、ライアンがいないから寂しくて泣いてたのよ」
「それはレイチェルさんでしょ?」
互いに体を強く抱き締めて笑い合う3人なのであった。
豪華なディナーを済ませた後、レイチェルとライアンは互いに結婚式の時に着たドレスとスーツを身につける。
その姿にジュディはパチパチと拍手しながら、嬉しそうにはしゃいでいる。
「2人ともすっごくお似合い!本当にラブラブカップルって感じ!」
「本当に最高の結婚式だったよね、ライアン」
「ああ。君に出会えて、そして人生のパートナーになれて本当に幸せで嬉しい」
「私も今、全く同じこと考えていたわ。ありがとうライアン!」
「アハハ、ありがとうレイチェル!」
そしてあの結婚式の時と同じように、互いにキスをするのだった。
それを見たジュディは太陽のように明るい笑顔で、そのままレイチェルとライアンに飛びついた。
「私もこの2人と同じ家族になれて本当に幸せ!ありがとうライアンさん、そしてレイチェルさん!」 >>81
品物を整理していると、それにまつわる思い出で、ついてが止まってしまう事、良く有りますよね
レイチェルさんは、特に楽しかった事も多いので、手を止める回数が多そうです >>81
本編の後日談で、衣類にまつわる思い出
ライアンが『厳選』した『絹のドレス』と『白いスーツ』・・・など
ガンマン衣装は普通に着てた、黒猫衣装も捨てるわけがなかったw
忙しくても they lived happily ever after なら、、、ですね >>83
>>84
感想ありがとうございます!
今回は懐かしの衣類を通して、これまでの楽しくて素敵な思い出を振り返るといったお話でした
黒猫のコスチュームも何だかんだでレイチェルにとっては、楽しい思い出がたくさん詰まった大切な衣装なんです
それから現在はアメリカに帰ってきた後の誕生日に、ライアンがプレゼントとして買ってくれた新しいガンマンの衣装を着ているという設定ですw
今回も楽しんでいただけて本当に嬉しいです! >>86
はいw
最終回(スレ7>>284【夢は決してあなたを裏切らない】)の最初辺りを読めば分かるのですが、
10年以上も長いこと愛用してきたガンマン衣装はすっかりボロボロになっているんですよね
レイチェルにはいつまでもガンマンの姿でいてほしいという、ライアンの彼女への強い想いです
でもたまにでも良いから黒猫になってくれたらもっと嬉しい、というのが彼の本音でもありますw >>70
お題:『絹のドレス』『白いスーツ』+『厳選』
【週末の黄昏】
家に帰ると、即座にPCを立ち上げる。
起動している間に冷蔵庫から落花生を取り出し、バターと塩で軽く炒めた。
サイドボードからはウィスキーのシングルモルトを引っ張り足すと、PCのフォルダから『厳選』とタイトルされたソレを選択する。
グラスにウィスキーを注ぐ。
常温で良い。常温が良い。
ピートのフレーバーを嗅ぎながら、ソルトピーナッツを一摘まみ口に放り込む。
画面では白いスーツのロックスターが情感たっぷりに、名曲『絹のドレス』を歌い上げていた。
ストレートをノーチェイサーで飲み干す。
少しはかりの酒気の混じった息で、フラりと立ち上がると、本格的に腹を膨らまそうと、キッチンに立った。
パスタを茹でながら鼻唄を歌う。当然曲名は『絹のドレス』だ。
高潔な女と口ずさみながらホールトマトを潰し、使い古されたフライパンで混ぜながら炒める。
PCフォルダの『厳選』を選択し、白いスーツのロックスターを再生する。
「我が青春に」
そう言いながら、パスタを肴にウィスキーを呷った。 >>70
前スレ578の続編です
使用お題→『絹のドレス』『白いスーツ』+『刺繍』
【向こうで立ち話をされているのは聖女様と神官長様ですね】
「聖女様、神官長様、いかがされたのですか?」
深刻な表情のお二人は、一瞬、虚をつかれたお顔になって、けれども、すぐに笑顔を向けてくださいます。
「明日の朝ご飯のご相談ですか? そう言えば、騎士団の新人の方は、やっぱりすご……はっ!? もしや! 新人さんのせいで朝ご飯の予算が不足しているのでは!? 私の朝ご飯!」
お二人の笑顔に安心した私は、分かっています、悪い癖なのです、つい自制心を失って、まくし立ててしまうのです。
「いえ、そうではなく……」
こんな私に対してさえ穏やかに接してくださる、神官長様。白い祭服が貧相……失礼、とてもスマートに見える、しわしわでひょろひょろのおじいちゃんです。
「……いえ、そうですね、予算の問題ではありますが」
このおじいちゃん、神殿で一番偉いお方です。信仰に関して一番偉いのは聖女様ですが、お財布を握っているのは神官長様なのです。
そのお方が、にこやかな表情で、しかし冷静に、恐ろしいことをおっしゃいます。
「予算の問題なんですか! 私の朝ご飯……」
愕然(がくぜん)とする私ですが、そんな私を安心させるように、聖女様の口からお言葉が紡がれます。
「朝ご飯の予算は大丈夫ですよー。予算は予算でもー、結婚式の予算なのでー」
「けっ、結婚式ですか!」
どなたの結婚式なのでしょう。まさか聖女様と神官長様ではないと思いますが!
今日も聖女様はお美しい……ピッカピカです、人体発光現象です!
そんな聖女様と、失礼ですが今日ぽっくりでもおかしくない神官長様です。それはいくらなんでもないなー……ないといいなー……。
「王子様とー、貴族のご令嬢ですよー」
「……へっ? 何がですか?」
「結婚式ですよー」
「そうなのですか! 良かった……」
聖女様の未来は救われました。
「それが良くないのですー。今の王家にはお金がないらしくー、結婚式を神殿で執り行うこととー、その費用を神殿持ちとするよう言われているのですー」
全然救われていませんでした。ビンチだったのは聖女様ではなく神殿でした。つまり。
「今ご説明頂いた通りですね。この費用をどうやって工面するか、二人で頭を悩ませていたところです」
それはつまり、朝ご飯の予算が削られる可能性……。
「ああ、ひょっとして、何か良いお考えがおありなのでは。あなたと聖女様、いつもお二人で、楽しそうにお話しされていますよね」
私の朝ご飯が減らされる! そうなっては大変です。
「そうですね、いい考えがないかと聞かれたら、ありますとお答えする、私はそう心に決めております!」
だから私の朝ご飯を減らさないでください!
「ですので、そうですね……。結婚式に来られた方々から、なんらかの名目で、お金、ご祝儀を徴収するというのはいかがでしょう?」
「なるほど、それはいいかも知れませんね」
「ですが、ただお金を集めるだけでは、けちんぼな神殿、金欠神殿だと、皆様に思われてしまうでしょう」
事実ではありますが。金欠なのは否定できません。
「ごもっともです」
「そこで……何か……そう、何か記念になるような品物……記念品を渡すのです」
「素晴らしい。その記念品は、どんな物を渡したら良いでしょうか」
「それは……」
私は、聖女様のお顔を見て、神官長様のお顔も見て、それから、しばし黙考します。
聖女様、結婚式、ドレス……ではなく……聖女様、予算、手作り……。
「……聖女様。聖女様は確か、刺繍(ししゅう)がお得意でいらっしゃいますね」
実は、聖女様は、さる大貴族のご令嬢なのです。……まさか王子とやらの結婚相手は聖女様なのでは。気になりますが、考えないようにします。
「ええ、得意ですよー」
そして貴族のご令嬢であるからには、刺繍の一つや二つお手の物なのです。
「神殿の皆に、刺繍のやり方をお教えください。素敵な刺繍入りの記念品を作るのです。ハンカチなんていいかも知れません」
*
「なんで俺までこんなことを……」
「聖女の前でー、ぶらぶらしてるのが悪いんですよー」
「仲間外れにしたら悪いかなと! そう思いまして!」
後日、聖女様と私と騎士団長様で、試作品を作ることになりました。絹のドレスの花嫁と白いスーツの花婿をイメージした絵柄です。ところが。
王家の金欠が相手方に伝わってしまったようなのです。
結果、婚約はうやむや、結婚式は中止。私たちの手元には、試作品の素敵なハンカチだけが残されたのでした。 お題→『絹のドレス』『白いスーツ』+『刺繍』『厳選』『プリンセス』締切
【参加作品一覧】
>>74【可愛いプリンセスは危険の香り?】
>>81【思い出は走馬灯のように駆け巡っていく】
>>89【週末の黄昏】
>>90【向こうで立ち話をされているのは聖女様と神官長様ですね】 ではでは、今回は通常お題5つです
お題安価>>93-97 ☆お題→『ハンマー』『乙女ゲーム』『ポテトチップス』『邪神』『アマビエ』から1つ以上選択
☆文字数→3レス+予備1レス以内に収めれば何字でも可。
1レス約1900字、60行が上限。
☆締め切り→4/26の22時まで。
締め切りを過ぎても作品の投稿は可。
【見逃し防止のため、作品投稿の際はこのレスに安価してください】 これはw
なかなかユニークな組み合わせでは
お題、作品、感想、ありがとうございます
まぁやっぱり過疎ですが、引き続きお題スレをよろしくー、皆様のご参加もー >>89
これはストレートw
『厳選』フォルダ、『白いスーツ』のあの人w、名曲『絹のドレス』
簡潔に、雰囲気が出てるお話でしたー >>90
相変わらずの直感行動ですね
それでも良い方向に行くのが凄い
そして巻き込まれるのがお約束の騎士団長
お疲れ様ですw >>100
感想有り難うございます
絹のドレスと言われたら、もうこれしかorz >>101
感想ありがとうございます!
勢いだけの主人公に、頼れる騎士団長ですw
・・・今見直したら誤字発見・・・誤字探しクイズを開催します>< >>98
使用するお題→『ハンマー』『ポテトチップス』『邪神』
【姉弟の仁義なきドタバタバトル】(1/3)
ある日のこと、カナミの背後にケンスケがニヤニヤしながら歩み寄ってくる。彼の手にはおもちゃのマジックハンドがあった。
姉は弟が背後にすぐ近くまで迫っているのに気付いていない。まさにその瞬間だった。
「それっ!」
ケンスケはマジックハンドでカナミのポニーテールを掴むと、少し強めにグイッと引っ張った。
「わ、ワワワワッ!!い、一体何なの!?」
「アハハ!」
「ケンスケ!また…!」
ケンスケは時々、マジックハンドを使って姉のポニーテールを掴んで引っ張ったりとイタズラをすることがあるのだ。
「それで髪を掴んで引っ張るのはやめてって、前に何回も言ったでしょ?」
「だ、だってお姉ちゃんのポニーテールって見てたら掴んで引っ張りたくなっちゃうんだ」
「どういう理由よ。まあ今度やったら許さないわよ、分かった?」
「う、うん…」
弟の返事を聞くと、カナミは自分の部屋に戻り、宿題を始める。
「ケンスケったら全くしょうがないんだから。あの頼りない返事からすると、またやるに違いないわね…」
宿題をしながらブツブツと呟いていると、突然いいことを思いついた。
「そうだ!確かあれがあったはず!」
クローゼットを開けて、ある箱を取り出す。その中には幼稚園の頃によく遊んでいたが、今はほとんど使わなくなったおもちゃや小道具が入っていた。
「あった!あった!」
カナミが手にしたのはピコピコハンマーだった。幼稚園の頃、夏祭りに行った時に輪投げの景品で貰った物だ。
「ウフフ、またケンスケが何かしたらこれで…」
ある土曜の午後、カナミはリビングのソファーに寝転んでスヤスヤと気持ち良さそうに昼寝をしていた。
そんな姉にケンスケがニヤニヤしながら音を立てずにゆっくりと近づいてくる。彼の手にはもちろんマジックハンドがあった。
「お姉ちゃんったら本当に無防備だね」
そう言ってマジックハンドで姉のポニーテールを掴もうとしたその時だった。
「引っかかったわね!」
「へっ!?」
カナミはいきなり目を覚ますや否や、背中に隠し持っていたピコピコハンマーでケンスケの頭をポコっと叩く。
突然のハプニングに弟は動揺し、一瞬怯んでしまった。
「ね、寝てたのは演技!?」
「そうよ、まんまと引っかかっちゃって笑えるわね。今度はこっちのターンよ!」
カナミはピコピコハンマーで逃げる弟の頭をポコポコ叩きながら追いかける。 【姉弟の仁義なきドタバタバトル】(2/3)
「わっやめて!やめてよー」
「アハハ、まだまだよ!」
カナミは逃げるケンスケを食卓の隅っこにまで追い詰めた。
「ケンスケ、もう逃げられないわよ。観念しなさい」
「お願いだから頭をポコポコ叩くのやめてよ」
「ううん、なんか楽しいからやめない」
「ぼ、僕の心の中に潜む小さな邪神が僕を唆したんだ。お姉ちゃんのポニーテールを引っ張れって。最初は必死にそんなことできないって拒否したんだけど、邪神が全然離れなくて…」
「要するに魔が差した、ってことでしょ?」
「うん、そういうこと。降参するからさ、もうバトルは終わりにしようよ」
するとケンスケは近くの棚に置いてあったポテトチップスの袋を手に取る。
「終戦したということで一緒にポテチでも食べよう、お姉ちゃん」
「それはいいわね」
袋を開けると、姉弟は仲良くポテチを食べ始める。
「ポテチはコンソメパンチが一番だよねー」
「うんうん、分かるわ」
袋の中のポテトチップスを全部食べ終えたその瞬間だった。
「ふー、美味しかったわね」
「スキあり!」
ケンスケは素早い動きで、マジックハンドでカナミの左足の方のハイソックスの爪先の部分をガシッと掴んだ。
「な、何!?」
「お姉ちゃんこそ、まんまと引っかかったね。僕が潔く降参したことにすっかり気が緩んじゃってさ」
マジックハンドで爪先を掴んだまま、弟は姉のハイソックスを勢いよくズルッと脱がした。
その拍子にカナミはドテッと尻餅をついて倒れてしまう。
「お姉ちゃんのハイソックス、ゲットだー!」
「まんまと私を騙すとは、良い度胸してるわね。こうなったら超本気モードでいくわよ!」
姉弟の凄まじいバトルがまた始まった。それはとても強烈なものだった。
「私を怒らせたことを後悔するがいいわ!」
「僕は怒ったお姉ちゃんにビビるほど弱くないよ!」
「生意気なこと言っていられるのも今のうちよ」
カナミのピコピコハンマーとケンスケのマジックハンドが互いにぶつかり合い、バチバチと火花が散っている。
弟がマジックハンドで、ピコピコハンマーを持つ姉の右手首をガシッと掴む。
しかし、姉は咄嗟に左手にハンマーを持ち替え、弟のお尻をポコっと叩く。
「ウ"ッ!!」
「腕はなかなかだけど詰めが甘い。あんたのことよケンスケ!」
「そ、そんなぁ!」 【姉弟の仁義なきドタバタバトル】(3/3)
ケンスケの手からマジックハンドが落ちる。これで決着か、と思いきやカナミは手からピコピコハンマーを放して床に置く。
「ケンスケ、ここまで来たら互いに武器を捨てて戦いましょ」
「望むところだよ、お姉ちゃん!」
お互いに武器を捨て、素手だけでのバトルとなった。
「行くよ、お姉ちゃん!」
「どこからでもかかってきなさい!」
その時、カナミが膝をついて倒れてしまう。彼女は思い出した。終戦の意としてポテチを食べた後、一瞬の隙を突かれて弟にハイソックスを脱がされたことを。
そう、ハイソックスを片方でも脱がされてしまうと、カナミはパワーダウンしてしまうという弱点があるのだ。
「す、すっかり忘れてたわ…」
「僕はお姉ちゃんの弱点をちゃーんと分かってたんだ」
ケンスケは姉に近づくと、コチョコチョとくすぐり攻撃を始めた。
「アハハ、くすぐったい!や、やめてワハハ!」
「ううん、楽しいからやめない!さっきポコポコ頭を叩かれた時のお返しだよー!」
しかし、さっきまで素早かったケンスケの動きが次第に鈍くなっていき、攻撃の手が弱まってきた。
そう、ケンスケは体力が少なくて実は長期戦が苦手という弱点があった。姉とのバトルは開始から既に4時間を超えており、スタミナ切れを起こしていた。
「ち、力がこれ以上出ない…」
「私はケンスケの弱点をちゃーんと分かってる」
「だ、だから、わざと長期戦に持ち込んだということだね」
「その通りよ!」
パワーダウンとスタミナ切れでは、まだ僅かにではあるがパワーダウンの方に分がある。
「ケンスケ、残念だけど私の勝ちね」
「そ、そんなぁ…!」
まさに決着の瞬間、と思ったその時だった。
「あんた達、いつまで激しくじゃれ合ってるのよ。猫じゃあるまいし…」
買い物と銀行に出かけていた母が、ちょうど家に帰ってきたところだった。
「「あ、お母さん!おかえりなさい!」」
「大雨で外で遊べないのは分かるけど、家の中で暴れるのはやめてちょうだい。分かった?」
「「ハ、ハイ!」」
母の介入?により、4時間にも渡った姉弟のバトルは互いに引き分けという形で幕を閉じた。
夕食を終えると、2人はリビングのソファーに座って今日のバトルを振り返った。
「お姉ちゃんのピコピコハンマーには、どう足掻いても勝てなかったな。強すぎるよ」
「ケンスケのマジックハンドも大したものだったわよ。でも油断しすぎなところと、詰めが甘いところは克服した方がいいわね」
「油断しすぎなのはお姉ちゃんも一緒じゃん」
顔を合わせてアハハと笑うと、互いに背中に隠し持っていたピコピコハンマーとマジックハンドを出す。
「次のバトルはいつにする、お姉ちゃん?」
「私はいつでもいいわよ」
「今度は負けないからね」 >>104
今回は平和な世界w
ピコピコ『ハンマー』、小さな『邪神』w、『ポテトチップス』で・・・
これは結構な力作だったw、形勢が二転三転して面白かったです >>107
感想ありがとうございます!
姉と弟の壮絶なバトル(というよりじゃれ合い?)でしたw
終戦としてポテトチップスを食べてからの再戦の流れが一番書いてて楽しかったです
今回も楽しんでいただけて本当に嬉しいです! >>104
姉弟のじゃれあいですね
お互いの弱点を把握しつつの攻防
仲良くケンカをして欲しいものです >>109
感想ありがとうございます!
姉弟は仲良くケンカすることでお互いに絆を深めていってほしいなあ、とよく考えていますw
今回も楽しんでいただけてすっごく嬉しいです! >>98
お題:『ハンマー』『乙女ゲーム』『ポテトチップス』『邪神』『アマビエ』
【楽しいお仕事】(1/2)
わたしの名前は天宮 洋子! どこにでも居る、ちょっとおっちょこちょいな女の子。
今日から新学期だっていうのに、わたしは寝坊して遅刻ギリギリに成っちゃった!
「あ〜ん、遅刻遅刻ぅ!!」
朝食のパンを咥えながら走るわたし! あの角を曲がれば学校だわ! よ〜しラストスパート!!
ドッシーン!!
「きゃあ!!」
「うわ!!」
尻もちをついたわたしの前には、カッコイイ男の子が。
「おい! 気を付けろよ!!」
カッチーン。
確かに急いでて確認しなかったわたしも悪いけど、そっちだって同じでしょ!!
確かにカッコイイけど、だからって、何を言ってもいいって事には成らないんだからね!
そう思っていると、ソイツが急に顔を赤らめて視線を逸らした。
え? 何?
わたしは今の自分の姿をよく見てみた。ぶつかった衝撃で尻もちをつき、その事でスカートがめくり……
******
「没」
「ええ! 何でですか栗山さん!!」
企画書を途中まで読んでた企画リーダーの栗山 環は、「なぜ」と食い下がるシナリオ担当の小山 修一に呆れた様な目を向けた。
「おい、シュウ、お前、この企画が何なのか分かってんのか?」
「え? はい、ブラウザ乙女ゲーム『らぶ☆レボリューション(仮)』ですよね?」
「分かってて、これか?」
「いや、でも、対象年齢の事を考えて、感情移入しやすい何処にでもいる女の子を主人公に……」
環が頭を押さえ、溜息を吐く。
「古い!! 古すぎるんだよお前の頭の中!! こんなもん、今時、乳児ですらソッポ向くわ!!」
「いや、乳児はそもそもブラウザゲーム何て……」
「そう言う、いらん所拾わなくていいんだよ!!」
スパーン! と、修一の書いた企画書を丸め、彼の頭を叩く。
「今の子はな、オンリーワンを求めてんだよ!! 『誰にもまねできない特別な自分』を求めてんだ!
お前は、そこが分かってない! いいか! 次、同じシナリオ書いたらシナリオライターから外すからな!!」
「いや、栗さん、さすがにまんま同じ事書く様な奴はいないんじゃ……」
「だから、そう言う、いらん所拾わなくていいんだよ!!」 【楽しいお仕事】(2/2)
******
「オンリーワンの主人公って、ったく、そんなもん簡単に思いつくなら、マンガの編集なんていらないってぇの」
修一はブツブツ言いながらもアイデアを探してネットを漁っていた。
「はやり、流行り、Hayari〜っと……へぇ、最近ってこんなの流行ってるんだな……え? マジ? これOKなの?」
「ふーん」と腕を組む修一。そのすぐ後に、何かを思い付いたらしくニンマリと笑みを浮かべると、猛然とキーボードを叩き始めたのだった。
******
わたしの名前は亜 麻美恵! どこにでも居る、ちょっとおっちょこちょいなアマビエ。
今日は浦和の方に預言を持って行かなくちゃいけないんだって言うのに、わたしは寝坊して遅刻ギリギリに成っちゃった!
「あ〜ん、遅刻遅刻ぅ!!」
朝食のポテトチップスを咥えながら走るわたし! あの角を曲がれば浦和だわ! よ〜しラストスパート!!
ドッシーン!!
「きゃあ!!」
「うわ!!」
尻もちをついたわたしの前には、カッコイイ邪神が。
「おい、大丈夫か?」
カッコイイ邪神は触手をウネウネさせながら、前足を伸ばして来る。
やだ、イケメン!
助け起こされたわたしがちょっとボーッとしていると、邪神の触腕がわたしの顔に……
ああ、ここでわたし、大人に成っちゃうのね。そう覚悟を決めたんだけど、その触腕はするりとわたしの髪に伸びる。
「こんな所にハンマーが付いてるよ?」
「え?」
きゃー恥ずかしい!! そう言えば昨日ベッドで日曜大工をしてたんだったわ!
顔を赤らめるわたしにカッコイイ邪神が……
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「どうです? 流行りを取り入れながらもオンリーワンな展開!! これならイケるでしょう?」
「……か」
「はい? 何です?」
「あ・ほ・かあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
スッパアアアアァァァァァーーーーーーーン!!!!!! 今ってアマビエブームだったのね
Nhk見てて初めて知ったわ アマビエチャレンジってハッシュタグが有るくらいですからw お題→『ハンマー』『乙女ゲーム』『ポテトチップス』『邪神』『アマビエ』締切
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