『誕生日』

真っ暗な闇だけがそこにあって、けれどそれが終わりでないことは知っていた。

外の音が、遠く聞こえた。私は身じろぐ。壁は厚く柔らかい。
温もりは手放し難く、けれど永遠ではない。

そして、わたしの朝が訪れる。わたしの夜明けが。わたしの――。
わたしは。今、世界に在ろうとしている。
「オギャア! オギャア!」

「まぁ! 元気な赤ちゃんですね。お母さん、抱いてあげてください!」