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使用するお題→『ホームビデオ』『天使ちゃん』『幼稚園児』

【あなたの帰りがいつも待ち遠しい】(1/3)
スレ7 425【あなたに出会えて本当によかった】を先に読んでおくことをオススメします

私はレイチェル、女ガンマンの人形よ。私は今、ある人の帰りを待っている。

「ただいまー、レイチェル!」

そう、ご主人で大学生であるライアンだ。
もう10年以上も前かしら。私は長いこと売れ残っていた古い女ガンマンの人形で、名前などついていなかった。
あと数日で処分されそうになったところをクリスマスの日にライアンに買われて、「レイチェル」という素敵な名前をつけてくれて、毎日のように私と遊んでくれた。
ライアンが大学生になった時、私はもう遊んでもらえることはない、彼が立派に成長したから役目を果たし、捨てられるのを覚悟していた。
しかし、ライアンは私を捨てずに引っ越し先に連れて行ってくれた。予想外だったけど、とっても嬉しかった。

「レイチェル、君は大切な家族の一員。君と離れ離れになりたくない」

ライアンのその言葉は、今も私の心の中に強く残っている。今は学業やサークル活動、アルバイト等で忙しくて帰りが多く、
寂しい気持ちになることも多かったが、休みで時間がある時はいつも私と楽しく遊んでくれた。

「今日も帰りが遅くなってごめんね、寂しかったかい?」

ライアンは私の頭をよしよしと優しく撫でる。とても温かい。
翌日は土曜日でバイトも休みのため、ライアンはのんびりと過ごしていると一通の小包みが届いた。
それは実家にいる両親からだった。

「パパとママからだ。一体何だろう?」

開封してみるとそれはビデオテープで3本も入ってあった。気になったライアンは早速、それをプレイヤーに入れて再生する。

「こ、これは!」

それはライアンがまだ小学生の頃で、私で楽しく遊んでいるところを両親が撮影したホームビデオだった。

「さすらいの女ガンマン、レイチェル参上!旅の邪魔をする者は許さないぞー!」
「まだ残っていたなんて!レイチェル、これを見てよ!」

ビデオに映る幼い時の自分の姿に、ライアンはもう無我夢中だった。
懐かしい、すごく懐かしい。それにライアンがとても可愛い。

「ライアンさん、こんにちはー!」

元気な挨拶と共に一人の幼稚園児が現れた。女の子でなんとイグアナを連れている。

「あっ、近所に住んでたアニーちゃんだ!それにペットでイグアナのトニーも!」

アニーちゃんとイグアナのトニーだ。私はふと、ある時のことを思い出した。
それはライアンが勉強をしに図書館を訪れていた時のこと。ライアンは、私をリュックの中に入れて一緒に連れて来てくれていた。
またノーマンのようないじめっ子に見つかって強奪されるようなことがあっては大変だと、あの騒動以来、リュックの中に入れるようにしたのだ。
3時間ほど勉強して図書館を出ると、買い物に出かけていたママがちょうど着いたところだった。
ライアンが車に駆け寄る時だった。リュックのファスナーが開いていたため、私は中から飛び出して地面に落ちてしまった。
彼はそれに一切気付かず、そのまま車に乗って走り出してしまった。