画面の中で、纏と私がすっ転んでわあわあと泣き出した。
 それを見て、思わず私と纏が吹き出す。

「おっ笑ったな? 知世が笑うなんて珍しいー」
「だって、ちび纏の泣き顔めっちゃ不細工なんだもん」

「はぁー? あんたの泣き顔のがブスでしょーが! ちっちゃいわたしのはかわいい!」
「はいはい。死に際の病人の顔を立ててあげる。顔だけに」
「サイテー! 知世のバーカ!」

 画面の中で、明るい未来に満ち溢れている二人の女の子は泣きじゃくっているのに、
未来なんてどこにもない病室にいる私と幼馴染の死にかけの女の子は、
どうしてか満面の笑顔で笑いあっていた。

 そのうちに、病室の窓の外で雨が止む。
 梅雨の雲の切れ間から木漏れ日が差し込み、冗談みたいに気紛れな陽光に
私は眩しくて目を細めた。
 幼馴染の女の子は、一生分の明るさを輝かせたみたいな笑いを浮かべて私に言う。

「ね、知世。わたしが死んでもさ、忘れないでよね。嫌な記憶とかじゃなくて、
 わたしを思い出す時にはぜったい笑顔でじゃないとダメだから!」
「そうだね。纏の泣き顔は不細工だもん」
「わ。ほんと、サイテー! ……でもそういうとこ、大好きだったよ。親友!」
「はいはい。じゃあね、親友」


 そうやって私と幼馴染の親友は最期の別れを告げた。
 今でも私は、時折彼女を思い出す。もちろん、誰より楽しそうな満面の笑顔で。

 そして思わず、笑ってしまうのだ。
 そんな時はいつも。サイテー! と笑う幼馴染の声が、聴こえる気がした。