>>531
スレ6→227の続き(?)です

使用お題→『エクレア』『100人の彼女』『タニシ』『編隊』『ペーパー』

【夢で会える】(1/2)

 夢を見た。
「ねえ、タニシ」
「なんだよ、メダカ」
 メダカは長老の孫で、俺の妹分だ。そいつが皿に乗せた何かを持って、俺の前に立っている。
「あのね、あのね、エクレアを作ったの。食べて」
 なぜ夢だと分かったか。服装だ。
 俺たちの普段着は、ほぼ男女の別なく、色も地味なものが多い。その上からコートを羽織る。
 だが、今のこいつは、レインメーカーの夢の中と同じ、白と紺の制服姿だ。
「エクレア……? 分かった」
 馬子にも衣装か。
 『エクレア』というのがなんなのか、俺にはよく分からなかった。だが断っても仕方がないし、悪い気もしなかったので、俺は大人しく皿を受け取った。
「うん……うまい。メダカは料理が上手だな」
 柄にもなく、そんなことまで言ってしまう。どうせ夢の中だ。
「えへへ、ありがと、タニシ」
 その時、誰かがバタバタと走ってくる音がした。誰だろうと思う間もなく、その人物は俺の視界に飛び込んできた。
「あっ、タニシ! それに僕も、なにやってんの?」
「えっ? おまっ……えっ? ……メダカ?」
 メダカがもう一人現れた。顔も服装も、完全に同一人物だ。
「タニシにエクレアを食べてもらったの! おいしいって!」
「そっか。いいなー」
「いいでしょー」
 二人は違和感なく会話を始めた。どうなってるんだ……。
「うん。あっ、それでねタニシ。書籍化したの。褒めて。それと、良かったら買って」
 話が見えない。
「書籍化? なんの話だ?」
 俺がそう質問すると、二人目の方が何かを取り出す。
「メダカ姫シリーズの新作だよ。『百人のメダカ姫と愛の奴隷タニシ』」

 *

「どうだった? 面白かった?」
「よく分からなかった……。だけど書籍化するくらいなんだから、面白いんだろうな」
 その『新作』とやらを当然のように読まされた俺は、なぜか精一杯丁寧に感想を述べていた。俺にしては、だが。
「そっか。読んでくれてありがと!」
 微妙な評価だったと思うが、メダカはうれしそうだった。まあ、どうせ夢の中だしな。
「良かったね!」
「うん!」
 その時、誰かの歩いてくる気配を感じた。一体誰だろう。ここは夢の中だ。
「タニシ。それに僕たちも。何かいいことあった?」