0662この名無しがすごい!
2020/08/02(日) 21:45:25.98ID:NmBZTedWお題:『ナメクジ』『寄生』『デカ』『モネの池』『始祖』
【ファーストファンタジー】(1/2)
遠野 正志はソレを呆然と見上げていた。
彼の隣では真鍋 九朗が興奮の面持ちで何かを述べている。
「ね、始祖鳥だよ始祖鳥!! と、アレはレプトケファルス……いや、ナメクジウオかな?」
「……どっちでも良いよ」
「良くないよ! レプトケファルスはあれでも脊椎動物だし、ナメクジウオは頭索動物なんだ! 全然違うんだよ!!」
そう、熱弁を振るう友人の喧しさに、かなり本気で首を絞めたくなった。
彼らの眼前で行われているのは、端的に言えば『怪獣大決戦』である。つまり……
「何でも良いだろうが!! てか、デカすぎじゃあ!!」
軽く10mは有る巨大生物の弱肉強食の戦いであった。
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異世界転生と聞いて、まず思い浮かべるのは、剣と魔法のファンタジーであろう。だが、正志と九朗の遭遇したソレは、一味違っていた。
「……どこだよここ」
「白亜紀の森! 白亜紀の森だ!! ジュラ紀から続く、最後の時期! 正志!! 恐竜だ!! 恐竜に合えるかもしれないよ!!」
そう、下手をすればタイムスリップしたのかと思われる様な、原初の密林の中にいたのである。
運動部に所属し、勉強よりも体を動かす方が得意な正志は、昔から生き物オタクである友人が、なぜこんなに興奮しているのか理解できなかった。
だが、九朗の方にしてみれば、絶滅したかもしれない生物に出会えるチャンスなのだ。興奮せずにはいられないだろう。
「あ!!」
「え? おい! 勝手に行くなよ九朗!! 何だってんだよ!!」
「見て見て!! でっかいダニ!! でもこの大きさじゃ、流石に寄生とか出来無さそうだよね!」
嬉々として九朗の持って来たソレを見て正志は鳥肌が立った。拳大は有る様なデカいダニが節足をわしゃわしゃさせているのだ。彼で無かろうと気色悪く感じるだろう。
「やめろ! それをオレに近付けるな!!」
「えー、現代じゃお目に掛かれないんだよ?」
「で、も、だ!!」
正志の剣幕に、九朗は面白く無さそうに巨大ダニを放り投げた。と、それを横から掻っ攫うかの様に飛翔するモノが居た。
「メガネウラだ!!」
九朗の目が、再び輝き出す。ダニを捕食した古代トンボは、そのまま悠然と飛び去って行く。だが、九朗にとってはお宝に等しい、現代では見る事の出来ない古代生物なのである。
そんな彼の行動など、既に分かり切っていた。
「ちょー! 九朗!! だから勝手に飛び出すな!!」
メガネウラを追って辿り着いたのは、巨大な蓮の葉の浮く、そこそこの大きさの湖だった。
(ちょっと、モネの池に似てるな)地元にある参道の池を思い出し、正志が溜息を吐く。
九朗はメガネウラしか目に入っていないらしく、「うわーうわー」と感嘆の声を上げながらも、飛んでいる古代トンボを目で追って居た。
その時である。
「え?」
「は?」
水面が持ち上がり、飛び出したソレに、メガネウラが一飲みにされ、その直後に、ナメクジウオを捕食する為に始祖鳥が飛来したのは。