0949この名無しがすごい!
2020/10/01(木) 20:10:36.70ID:Yr3dMCL8使用するお題→『笹』『パーカー』
【ズルはダメだよ】(1/2)
「じゃあねー!また明日ー!」
「バイバーイ!」
下校時間、仲の良いクラスメート達と別れ、カナミは家路についていた。
すると、少し目の前を青いパーカーを着た男の子が歩いているのが見える。
カナミはそれが誰だか知っていた。そう弟のケンスケだ。
「(あっ、ケンスケだ!ちょっとイタズラしてやろっと!)」
カナミはニヤニヤしながらゆっくりと気付かれないよう、弟の背後のすぐ近くまで接近する。
そして首元のフードを掴むと、思いきりケンスケの顔に被せてきた。
「だーれだッ!?」
「ワワワッ!な、何だ!?って、その声もしかして・・・」
顔に覆い被さったフードを脱ぐと、そこにはアハハとおかしそうに笑う姉の姿があった。
「お姉ちゃーん!いきなり何するんだよー!もうビックリしたじゃないかー!」
「ご、ごめんごめん。そのパーカーのフード見たら、何だか急に被せたくなっちゃうんだもん」
「もう心臓止まりそうになるからやめてよ」
「ケンスケだって、後ろから私のポニーテールいきなり引っ張る時あるでしょ?お互い様じゃないの」
「む、むゥ・・・」
ケンスケは一瞬口ごもった。確かにカナミの言う通りだ。
ケンスケもよく彼女のポニーテールをいきなり引っ張ったり、ハイソックスを脱がそうとしている。
「こ、今度やったら、ゆ、許さないからね!覚悟しておいてよ!」
「それはどうかしらねー?」
土曜日、せっかくの休みだというのに生憎の豪雨で外は土砂降りだ。
「あーあ、今日はハヤト兄のとこに遊びに行きたかったんだけどなあ・・・」
「残念だけどこの雨じゃ無理ね。一緒にゲームでもやりましょ」
「うん、そうだね」
雨で外に出られないため、カナミとケンスケはテレビゲームをすることに。
親戚からお土産で貰った美味しい笹団子を食べながら、レーシングゲームでの勝負にもう無我夢中だ。
7個あった笹団子は互いに3個ずつ食べ、残り1個になった。
「笹団子はあと1個・・・お姉ちゃん、僕が何を考えてるか分かる?」
「もちろんよ。絶対に負けないんだから」
1個の笹団子を賭けた姉弟の大勝負がスタートした。最長距離にして最高難易度のコースを5周だ。
互いに一歩も退かない、熾烈な攻防が繰り広げられた。
「だいぶ腕を上げたわね、ケンスケ!それでも弱点の詰めの甘さを克服するまでに至ったかしら?」
「口ばかり動かしてると集中力が途切れちゃうよ、お姉ちゃん」
残り1周、それは起こった。